終末期患者が言われたくない言葉。余命宣告はあたるのか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

終末期医療のコミュニケーションについて考えさせられる機会があったので、記録しておこうと思う。

手をつけられなくなってから来院するがん患者

同じ勉強会に所属しているがん専門の薬剤師をやっている先輩に聞いた話だが、最近ある傾向をもった患者さんが増えているのだという。それが、「治療によって治せる癌と治せない癌の区別もつかない人間に無治療を勧められたが、それではやはり不安で、あらゆる代替療法を試した結果どうにもならなくなった状態で病院にようやく来る人」だという。

例えば、免疫細胞療法というものがある。これは、保険がきかず1回の治療で200万円もするそうであるが「それで良くなった人を見たことがないので標準治療を」という話をしても、そう簡単に受け入れられないということで多額の治療費を払って試す。免疫細胞療法に関しては、僕もまだ深く調べてはいないので迂闊にコメントはできないが十分なエビデンスがない分野のようではある(LAK療法に関してはあるらしい)。逆に十分な治療実績やエビデンスがあれば、どこかの段階で標準治療の一環に組み入れられうるはずなのだ。

聞くところによれば、そうした治療を選択する意思は尊重するが、化学療法や放射線療法が恐くてそちらを選んだ結果、改善することなく更に進行した状態で病院に戻ってきていよいよ手がつけられなくなった人を沢山みていて忸怩たる思いをするそうである。

先日、「がん患者の8割が抗がん剤などの副作用死!!『90%以上のがんは数週間のうちに完治』手術も放射線治療も化学療法も必要ない」という記事がSNSでシェアされていて、読んだら確かなソースがほぼない個人の意見でありかつ内容もほとんど誤りであることが証明されていることばかりであるにも関わらず、受け取り手のリテラシーの問題もあるのだろうが何十万もシェアされていた。唯一あった引用元も何十年も前の情報であった。率直に恐ろしいと思った。死人を増やしてもおかしくない内容の記事で、罪深いものである。治療手段を選択する人の自己責任と言う側面はあるにしても。リンクを貼ろうと思ったが、その記事は既に削除されていた。アカデミックな記事ならそう簡単に削除はされないのだが、削除のされ方もそれ相応であった。

ワラにもすがる思いの人を搾取するビジネスー「奇跡の演出」がポイントー

ワラにもすがる思いの人を搾取するビジネスは、色々なところにある。自閉症の子供を持つ親、アトピー患者、癌患者、不妊症など。「改善のためなら何でもする」そういう思いは、悪く捉えればつけ込みやすい。それで治りさえすれば良いのかもしれないが、子供の為なら何でもするという愛情深い親が悩むさまをみるのは心が痛む。そういう商法のポイントは「奇跡の演出」である。因果関係は不明でも「奇跡的に治った症例を目の前で見せる」。ネット起業家が札束をバラまき、フェラーリを乗り回しているさまを見せるのも「奇跡の演出」である。どんな頭の良い人でも、眼前で人があぐらをかいたまま宙に浮かぶなどという奇跡を見せられては、って何の話だ。とかく世で売れている商材はこのポイントを抑えている。

下手すると、がんになる人は◯◯をしていないから/摂取していないからのようなことを平気で書く人がいる。別の例では以前、Facebookでアトピー患者にはオメガ3系脂肪酸が圧倒的に足りないという主旨のことを書いている人がいた。もちろん摂取が悪いということではなく、むしろアレルギーを軽減するという説は確かにある。ただ、大量に抗酸化物をとってもがんになる人はなるし、大量にオメガ3系脂肪酸を摂ってもアトピーが根治しない人はいる。そこへの配慮ー。そんな言葉をいちいち気にしても仕方ないが、因果関係はそう簡単に導けるものではない中で、そこまで断定的な言い回しができるのは相当な勇気がおありになるのだろう。

終末期のがん患者さんが医師に言われて最も傷つく言葉

さて、終末期医療のコミュニケーションに関することであるが、
Communication about the ending of anticancer treatment and transition to palliative care.Ann Oncol. 2004 Oct;15(10):1551-7.
終末期のがん患者さんが医師に言われて最も傷つく言葉は次の3つだそうである。
「もう出来ることはありません」
「感情への配慮がない言い回し」
「可能性や範囲を言わない断定的な余命告知」

逆に安心できるコミュニケーションとは何だろうか。例えば
•プライバシーが守られた静かな空間で告知を受ける
•一緒にいたい家族の同伴のもと説明を受ける
•質問をしやすい雰囲気 •自分を良く知る医師から説明を受ける
•理解できる言葉による説明 •治療期間や目標を具体的に説明する
などといったことが書かれている。

先日、悪性神経膠腫(悪性グリオーマ)の抗がん剤治療を受けている患者さんと話していた時のことだが、「どれだけ治療を続ければ良いのか。6ヶ月~2年くらいとも言うが、同じ薬を飲んでいる人のブログをみたら短期間で終了していた」とか色々と錯綜した情報を質問されていかれた。そう簡単に具体的に期間を提示はいえないのだが、確かに具体的治療期間目安の提示がないのは不安というのは納得である。

先の傷つく言葉はどれも残念ながら良く言われる言葉だそうである。もう出来ることがないというのは、ある意味おかしくて、治療はできなくても緩和ケアは可能であり緩和ケアで延命も可能とされている。気持ちに配慮したコミュニケーションが大切なのはその通りだろうと思う。

余命告知はあたらない

では、余命告知はというと、そもそも余命告知はそうそうあたらないとされている。
Can oncologists predict survival for patients with progressive disease after standard chemotherapies?Curr Oncol. 2014 Apr;21(2):84-90

国立がんセンターで、標準治療が終了した75名のがん患者について腫瘍内科医の余命告知があたるかとうかを調べた研究であるが、腫瘍内科医が、余命をある程度正確に言い当てられたのが36%。しかし、これは前後3分の1までの範囲を許容しての数値。そしてそれ以上に長く見積もりすぎたのが36%で短く見積もりすぎたのが28%。これは、研究内では腫瘍内科医の経験年数によっても層別で解析されており、経験豊富な腫瘍内科でも見積もりを誤ることが分かっている。余命宣告をされる方はどんな気持ちなのだろうかと考えてしまう。

自分の死ぬ日が分かったら。死刑囚ですら、死刑執行日は当日まで言われない。でも悪いことをしたわけではないのに死ぬ日を断定されてはどんな気持ちなのだろうか。余命を知りたいというのは不安から来る気持ちなのかもしれない。かといって余命は良く分からないとはぐらかされても、具体的な指針がないのでは心配だったりする。あるいは、孫が運動会に出るのでそれまでは。とか個人的目標があれば、それまで前向きに頑張りましょうという話は出来るのかもしれないし、受取り手も幅をもって捉える必要があるということか。

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