Q、正常眼圧緑内障なのに、眼圧を下げる治療を行う意味があるのですか?

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日本人には、緑内障をお持ちのかたは多い。正常眼圧緑内障はなんとその過半数を占める。緑内障は一般に、高眼圧によって視神経が障害された結果視野が狭まる疾患と考えられがちだが、眼圧が正常でもなることがある。それを正常眼圧緑内障という。視野障害がゆっくり進行するため自覚症状が乏しく、早期発見が難しい緑内障としても知られる。

それで、質問への回答だが「意味はある」ということになる。実は、眼圧が正常範囲でも、さらに低くすることで視野の狭まりを遅らせることができることが示されている。それで、薬物治療の第一選択はプロスタグランジン関連薬またはβ遮断薬の点眼剤が使われる。その場合、定期的に眼圧および視野の測定と経過観察を行う。眼圧降下作用が十分得られないとか、視野障害が進む場合は薬剤の変更や追加もありうる。多剤併用でもなお視野障害が進行する場合は手術を行う場合もある。というのが一般的な手順。

ここで終わりにしても良いのだが、以下に解説と根拠を記しておく。

正常眼圧緑内障の発症機序について

主に、次の要因が正常眼圧緑内障の発生に関わるとされている。
•眼圧による機械的な視神経障害以外
•視神経乳頭部およびその周囲の循環障害
•自己免疫異常
•遺伝子の変異

他にも色々要因はあるが、ポイントは他のタイプの緑内障同様に、視神経障害に眼圧が強く関与していることだ。正常な眼圧でも視神経が障害される原因としては、視神経乳頭の脆弱性が指摘されている。アメリカのガイドラインではリスク因子として、正常眼圧緑内障の家族歴あり、日本人の祖先あり、不整脈など心疾患の既往ありといったことがあげられており、日本人の有病率が高いことを物語っている。

治療について

主に選択肢は3つ。
•眼圧降下
•視神経乳頭の血流改善
•神経保護

このうち、有効性が証明されているのは眼圧下降治療のみで、眼圧を十分に低く維持できていれば、多くの症例で視野障害進行を抑えられることも明らかになっている。

眼科学会の緑内障治療ガイドラインの「正常眼圧緑内障の治療」の項目には次の記載がある。

「治療の目標眼圧に関して、米国での多施設共同研究の結果では無治療時眼圧から30%以上の眼圧下降を得られた群と無治療群では視野障害進行に有意の差があり、 眼圧下降が有効であることが報告されている.しかし, 眼圧下降が必ず30% 以上である必要があるか否かは不明である.また、報告では30% 以上の眼圧下降を得る ために半数以上で濾過手術が適応されており、術後の白内障進行が視機能を低下させることも報告されている. また、無治療時の眼圧が正常平均(15mmHg)以下の例に対する眼圧下降の有効性については十分な検討がされていない。」この根拠となっているのが参考文献2にあたる。

眼圧を下げる以外の治療について

手術、視神経乳頭の血流改善、神経保護といった選択肢はあるが薬剤やサプリメントで効果が検討されているものを紹介しておく。ただし、これらの方法が眼圧を下げる治療より有効というわけではない。

コレステロール降下剤のシンバスタチンが、正常眼圧緑内障患者の視野維持に役立つ可能性を示唆した研究はある。視野欠損進行の相対リスクは 0.36, 95% 信頼区間0.14-0.91 と下げることを示したコホート研究であるが研究デザインの質が高くない。結果をそのまま信じて良い程のエビデンスではなさそうである。
Ophthalmology 2010 Mar;117(3):471

血流改善ということで、イチョウ葉抽出物が正常眼圧緑内障において視野を改善したとの報告もある。小規模のクロスオーバーランダム化比較試験だが、これもさほど研究の質が高いわけではなく、どこまで使えるか分からない。
Ophthalmology 2003 Feb;110(2):359

また、眼圧下降療法以外に視神経血流改善療法や神経保護治療が注目され、血管を拡げるカルシウム拮抗薬内服の有効性を推定する報告もあるが、臨床試験におい明確な治療効果の証明はなされていない。血流改善や神経保護治療に関しては、大規模な臨床試験の報告がなく有効性は不明だ。したがって、正常眼圧緑内障の治療においても、最初に行うべきは十分な眼圧下降であり、それ以外の因子に対する治療は補助的なものであるとされている。

【参考文献】
1,日本眼科学会 緑内障治療ガイドライン
2,Am J Ophthalmol. 1998 Oct;126(4):487-97.
Comparison of glaucomatous progression between untreated patients with normal-tension glaucoma and patients with therapeutically reduced intraocular pressures. Collaborative Normal-Tension Glaucoma Study Group.
3,American Academy of Ophthalmology “Diagnosis and Treatment of Normal-Tension Glaucoma”

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