ワーファリン

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

あまりにも有名な「抗凝固薬」。血管内で血液が固まるのをおさえる「血液サラサラ」の薬。特に不整脈により生じる、脳卒中や心筋梗塞の予防に良く用いられる。深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症、末梢動脈疾患、さらには腎炎など、血栓や塞栓に起因するいろいろな病気に広く使われる。様々な抗凝固薬が次々と発売される中、未だに圧倒的に使われ続けている。納豆やクロレラ等ビタミンK含有食品によって効き目が落ちる弱点(ある意味それで効き目が調節できるのは長所?)はあるが、他の抗凝固薬は効き目をモニタリングする術が十分に確立されていなかったり、拮抗剤が開発されていない(プラザキサ:成分名ダビガトラン を除く)というのも大きいと思う(拮抗剤がないと出血過多になった時に対処できないリスクがある)。正直、その状態で臨床試験を行うこと自体恐いのだけど。

ワーファリンは発見までのストーリーがユニークなので紹介しよう。

ワーファリンの成分が発見されるまで

この成分の発見ストーリーがなかなか面白い。元々は、1920年代カナダにおいて、痩せた土地でも栽培できるスイートクローバーを牛の餌として与えたところ、牛の出血が止まらなくなり次々と死亡した。当時、この病気はスイートクローバー病と名付けられた。後に腐ったスイートクローバーからジクマロールが精製・単離され、この物質がスイートクローバー病の原因であることが突き止められた。ワーファリンはジクマロールの構造を元にして合成された化学物質である。

当初、ワーファリンは殺鼠剤として使用されていた

普段生活上意識することはないと思うが、内出血はいたるところで起きている。人もそう。ネズミもそう。それで、ネズミにワーファリンを与えると出血が止まらなくなり、内出血のために死に至った。それでは、危ないというので臨床応用が試みられなかった時期があったが、自殺を試みようとしてワーファリンを大量服用しようとした人が死ぬことなく生還したのをきっかけに様々な試験が行われるようになった。その結果、現在の薬効が判明した経緯がある。

ワーファリンコントロールの指標 PT-INR

ワーファリンを服用中の方はコントロール指標として、PT-INRという検査値を毎回確認されると思う。平たくいうと「血液の凝固速度」を表す数値で、出血時の血の固まりやすさを示す指標と捉えれば良い。標準値は1で、これより大きい値だと「血が止まりにくい」という見方になる。「血が止まりにくい」人は内出血、鼻血、歯茎からの出血が見られたりする。「血が止まりやすい」人は、条件次第で血栓が出来やすいが、血栓の予防のため、この値を上げる治療が必要になる。特に不整脈持ちとかだと脈が乱れて、血栓が脳、心臓、肺などに飛ぶと致命的になりうるので治療が大切になる。

PT-INRの最適値

PT-INRという指標があるはいいが、どの程度の数値を目指して治療すべきなのか。静脈血栓塞栓症予防におけるINRコントロールの最適値を検討した研究がある。それによれば、
血栓症予防率は PT-INR 2-3>1-2>3-4で、出血リスクはこの範囲のいずれの数値を目標にしても有意な差はなかった。PT-INRを2〜3の間を目標として治療する方に明らかな優位性が認められたため、試験は2.1年で打ち切られている(2〜3の方が1〜2でコントロールするよりも3倍程予防効果がある)
従って、一般的にはPT-INR 2-3を目標としてワーファリンの用量が決定される。
N Engl J Med 2003 Apr 10;348(15):1425

参考までに、PT-INRが1.5-2のコントロール群と2-3コントロール群で比較した試験の結果も記しておく。上記の結果と一貫性がある。
再発静脈血栓塞栓症 4.3%(1.5-2の群) vs. 1.6%(2-3の群) (p = 0.03, NNT 37)
大出血又は総出血に有位差なし2.4% vs. 2.2%, 1.1 vs. 0.9/100人/年
N Engl J Med 2003 Aug 14;349(7):631

血栓症既往があるか抗リン脂質抗体症候群の患者群においてもPT-INR2-3が血栓症予防に最適であることが示されている。2.7年の追跡期間でINR 2-3 vs 3.1-4でのランダム化比較試験の結果を参考までに記しておく。
血栓症再発率 3.4% vs. 10.7% (or 1.3 vs. 4.1/100人/年) (p = 0.15)
大出血 6.9% vs. 5.4% ( 3 vs. 2.7/100人/年) (有位差なし)
N Engl J Med 2003 Sep 18;349(12):1133

モニタリングの頻度

ワーファリンを飲まれているかたは定期的に血液検査で上記の検査数値をみて用量を決めていくのだが、どのくらい定期的に見れば良いのかという疑問もあるかと思う。6-8週間毎対4週間毎で比較した試験はあるがいずれも出血リスクに有意な差はなかった。初回で維持用量を決めるのに要する日数は年齢や患者背景にもよるが、4、5日とされる。安定していれば、モニタリング頻度をのばしてよい可能性はある。ワーファリン飲まれている方は、大雑把には4〜8週間毎くらいで血液検査でPT-INRをチェックしている人が多い印象がある(例外はもちろんある)。

71-97歳の高齢者(平均84.6歳)を対象とした試験で導きだされたワーファリンの予想維持量

PT-INRの数値から予測される維持量は大体次の通りだった。
INR < 1.3 ー 5 mg, INR 1.3 < 1.5 ー 4 mg, INR 1.5 < 1.7 ー 3 mg, INR 1.7 < 1.9 ー 2 mg, INR 1.9 < 2.5 ー 1 mg, INR 2.5 以上ー 1 mg/day, but INR performed daily until INR < 2.5 予測用量=実用量 77% 予測用量±1mg以内=実用量 95% 治療域にするまでの平均期間6~7日間 維持用量にするまでの平均期間9.2日 あくまでご参考まで。 Am J Med 2005 Feb;118(2):137

薬剤師の出血モニタリング介入に意義があるのか

ワーファリンの服用マネジメントにおける薬剤師の介入は出血リスクを減らすとする研究はある。良く、血栓予防薬を飲まれている方は内出血、鼻血、髭剃り時の出血、歯茎から出血、便潜血など色々と出血傾向の程度や歯医者での処置や手術予定など聞かれることと思う。これは出血リスクへの注意喚起である。特に内臓系の出血は恐い。薬剤師がこんなことを良く説明するのだが、それに意義があるのかどうか、検討した研究がある。

5つのランダム化比較試験と19の観察研究からなるシステマティックレビュー
薬剤師介入により
大出血リスク(RR0.49, 95% CI 0.26-0.93)
総出血リスク (RR0.51, 95% CI 0.28-0.94)
血栓塞栓症のリスク(RR 0.37, 95% CI 0.26-0.53)
とそれぞれ減る可能性が示された。
総死亡、ワーファリン関連死亡率に関しては有意差はなかった。
J Thromb Haemost 2010 Nov;8(11):2418
出血モニタリングにそれなりの意義があるといったところだろうか。ちゃんと考えられうるリスクと対処方法は知っておいてもらうことが大切。

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