アリセプト(ドネペジル塩酸塩)

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認知症の薬は大きく、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(アリセプト、レミニール、リバスタッチ)とNMDA阻害薬という2パターンに分かれる。

前者は、記憶に関係するアセチルコリンという物質を分解しにくくする薬。シナプスとシナプスの間にあるアセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害して、シナプスの間でのアセチルコリン濃度を高める。これによって認知機能障害を遅らせるというもの。一時的に見かけ上効いたように見えても長期的な改善効果はない。

この薬が開発された経緯は1976年にさかのぼる。アルツハイマー型認知症患者の死後脳の大脳皮質において、記憶に関係するアセチルコリンの合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼの活性が低下しているとの報告があった。そこから、脳内のアセチルコリン濃度を高めれば記憶を改善できるのではという仮説(コリン仮説)が生まれ、その考えを基礎として薬が作られた。

このこと、処方せん医薬品にフォーカスすると多くの薬は単体の分子だ。そして

単体分子→単体酵素 

この矢印の間の設計図を作るのが多くの製薬であり、薬が作用するまでの間を埋めるものが薬物動態学などの分野にあたる(もちろん酵素とは異なる作用点の薬も沢山ある)。

アリセプト(ドネペジル)は、アセチルコリンという脳内の神経伝達物質を分解する酵素(=アセチルコリンエステラーゼ)の働きを邪魔する分子種であるということだ。結果としてアセチルコリンという脳内神経伝達物質の濃度を高めて記憶の衰えを遅らそうと。

ドネペジル塩酸塩という「分子」がアセチルコリンエステラーゼという「酵素」に働くという設計を完成させ、エーザイという企業はこの1つの薬で何千億円という売上げを叩き出し、それがきっかけかはわからないが、大きなビルをたてた。このお薬によって、正常な生活を送れる時間が長くなる可能性がある。記憶の衰えを一時的にでも遅らせることができるとされる。

何となくイメージとして疑問なのは、

病気=酵素 の問題なのだろうか、ということ。

何となく違和感がある。病気を1つの酵素に還元して考えられるものだろうか。これらの薬が立脚している仮説、周辺理論が不明瞭な印象はある(根拠のない、ただの印象だが)。

アセチルコリン受容体の適度な刺激は、脳の正常な働き、心臓や胃腸、免疫、筋肉の働きに必須だが、過剰に働くと嘔吐や下痢、筋肉の痙攣を生じたり、血圧を下げ、心伝導を抑制して脈がゆっくりになり、心停止から死亡に至ることがある。脳内で過剰に作用すると、興奮しすぎ、パーキンソン症状が出現/悪化する。

実際にアリセプトの副作用として、嘔吐、下痢などの消化器症状は高頻度に発生し、1%ない程度ではあるが徐脈性不整脈など危ない症状も存在する

現時点で、抗認知症薬は、神経細胞の変性や細胞死を阻止できることは示されていない。ドネペジルは、進行を遅らせることで、施設入所が必要となる時期を平均2年遅らせることができるとメーカーはうたうが最終的な予後はプラセボと変わらない。この2年という数値の根拠も僕には良く分からない。

むしろ、実際には患者自身が気づく程の改善が得られる事は多くなく、興奮や気持ち悪さが出て問題になることが多い。また、施設入所や身体機能障害の進行に要する時間を短くすることもできないことも示されている(Lancet 2004 Jun 26;363(9427):2105)半年くらいのタームであれば、わずかな認知機能改善と日常生活と行動の改善を認めるが、臨床的有用性は疑問視されている(Cochrane Database Syst Rev 2006 Jan 25;(1):CD001190)。患者背景によっては、その半年が重要なのだと言えなくもないのかもしれないが

僕が学生の頃、祖母がこの薬を使っていたのを覚えているがかえって攻撃的になっていた時期は確かにあった。正直家族としては良い物なのかどうか当時分からなかった。ただ、知識がないと医師に従って続けざるを得ないし認知症の高齢者は一旦飲みはじめると、中止時に強い抵抗をすることがあるので結局は続けていたようだ。

アリセプトの1錠あたりの薬価は、3mg錠で225.8円、5mg錠で334.7円、10mg錠で598.7円(2016/3/5現在)。毎日飲む薬としては高すぎる。

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