胃酸分泌を抑える薬ー強い薬から弱い薬へ切替え減らしていくのは正しいかー

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

胃酸分泌抑制薬を継続している方の不安というのは本当によく聞く。
それで、どうやめていけば良いのかという議論がある。誰が言い始めたか分からないが

「症状が強くてPPIのような強い胃薬を使っているなら、それより弱めのH2ブロッカーにランクダウンして(漸減またはtaperingという)、それでも問題なければ減らしてやめよう」という説がある。

確かに、ステロイド、コレステロール降下剤や抗精神病薬のように漸減するか、ランクダウンしながら減らしていく薬剤は存在するし、それは自然な考え方なように思える。

しかし、消化不良においてPPI(強い胃酸分泌抑制薬)からH2ブロッカー(弱めの胃酸分泌抑制薬)にtapering(漸減)という進め方をする必然性はないようである。また強い薬→弱い薬の手順で行うと費用も高くなりがちだ。

ということを実際に示したオランダで行われた試験がある。
そして、その研究は以下の書籍でも紹介されており、そのくらいインパクトのあった結果を示してくれた研究だ。
50 Studies Every Doctor Should Know: The Key Studies That Form the Foundation of Evidence Based Medicine
邦題「医師として知らなければ恥ずかしい50の臨床研究」
因みに、その50の研究は50studies.comに掲載されている。

この研究では、
強い薬→弱い薬でステップダウンしていく方式と
弱い薬→強い薬でステップアップしていく方式で
効果とコスパ(cost-effectiveness)においてどちらが良いかを比較している。

具体的には、
18歳以上で新規に消化不良症を訴える患者 に
粘膜保護薬→H2ブロッカー→PPIの順に4週ごとにStep Upしていくのは
PPI→H2ブロッカー→粘膜保護薬の順に4週ごとにStep Downしていくのと比べて
症状の改善とかかる費用にどの程度の差があるか を調べたもの。

4週服用した時点で症状改善していれば治癒と判断し、
服用終了とし再発があった場合には次のステップへ移行することとした。

結果は6ヶ月経過した時点での治癒率で
Step up群は72%
Step down群は70% (オッズ比0.92,95%信頼区間0.7-1.3)であり有意差はなかった。

また、費用については,
Step Up群は228ユーロ(約28,500円)
Step Down群は245ユーロ(約30,625円) (ρ=0.0008)
※1ユーロ=125円として計算した
Step up群が安いという結果。この試験で使用された薬剤はパントプラゾール(PPIの1種)、ラニチジン (ザンタック/H2ブロッカーの1種),酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム(胃粘膜保護薬)。

日本における代表的な薬剤の薬価と1日あたりの費用は次のとおり(後発品や規格違いを入れるとかなりの種類になるので割愛する).
胃薬_薬価20160316
日本の場合も粘膜保護薬からStep Upしていく方が安いと言える。

まとめ
•消化不良症に対して、PPIから徐々にStep Downしても、粘膜保護薬から徐々にStep Upしても効果は変わらない
•コストで考えるとStep Upの方がお得

【参考文献】
Lancet. 2009 Jan 17;373(9659):215-25.
Effect and cost-effectiveness of step-up versus step-down treatment with antacids, H2-receptor antagonists, and proton pump inhibitors in patients with new onset dyspepsia (DIAMOND study): a primary-care-based randomised controlled trial.
van Marrewijk CJ1, Mujakovic S, Fransen GA, et al

 

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