経口の第三世代セフェム系抗生物質における5つの問題

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妻が検査を受けた時の話。まあ検査って言ってもどこか悪いわけじゃないんだけど。検査後は、それが当たり前の挨拶かのように抗生物質が処方されることがままある。例に漏れず何か組織を採取したとかで、多少なりとも傷つけた時にバイ菌によって感染症や化膿を起こさないようにという配慮のもと抗生物質が処方されたそうだ。

僕はLINEで連絡を受けた。「トミロンっていうの処方されたけどどう?」。トミロンは第三世代のセフェム系というグループに属する抗生物質だ。あーあ、という思い。このグループの薬は、一部の医師や薬剤師の間で誤用が最も多い薬として、とても問題視されている。以下に第三世代セフェム系抗生物質における5つの問題を紹介する。

バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が低い

バイオアベイラビリティは、投与された薬が全身の血中にどれだけ到達・作用するかの指標でありこれが低いことは、消化管吸収が悪く、体中に行き渡りづらい。即ち、感染症に効果があまりないことを意味する。しかしながら、使わなくても良いケースで山ほど誤用される。なにせ、世界一売れている経口セフェムはフロモックス、2位がメイアクトで、いずれもほぼ日本で使用されている。下表に第3世代経口セフェムのバイオアベイラビリティを示す。第三世代セフェム

出典:抗菌薬サークル図データブック第2版 じほう
経口服用なら、体の中でほとんど利用されずウンコになるのがオチだ。妻が貰ったトミロンに至っては「不明」である。とうていちゃんと効くとは思えない。

殺す菌が中途半端

セフェム系抗生物質は世代分類されているが、詳細は省くが一般に次の特徴がある
・グラム陽性菌に対する作用:第一世代>第二世代>第三世代
・グラム陰性菌に対する作用:第三世代>第二世代>第一世代
第三世代はグラム陽性菌に対する有効性が低く、グラム陰性菌には良い適応。しかし、殺す菌が中途半端だ。

各分野における使用について検討する。

•歯科
歯医者では抜歯処置の後に決まってフロモックスかメイアクトを処方されることが多い。しかしながら、口の中にある菌の多くは、グラム陽性菌や嫌気性菌だ。この2つは全くもって良い適応ではない。むしろ、口内の菌にはペニシリンやクリンダマイシンの方が有効だ。

•皮膚科&形成外科
皮膚科や形成外科においても、良く使われる。ちょっとした切開処置後の化膿止めとか検査で組織採取したとかで。しかし、皮膚軟部組織感染症などはこれまたグラム陽性菌が原因の場合が多い。従って、第1世代のセファレキシン(ケフレックス)などが、グラム陽性菌に強く有効である。ケフレックスのバイオアベイラビリティ90%。良い適応だ。とある病院の形成外科では、処置後の抗生物質として決まってケフレックスが処方されている。

•内科系
上気道感染症、下気道感染症(急性気管支炎)などのいわゆる「風邪」
風邪に対して処方する医師が後を絶たない。そもそも、風邪の大半はウイルス性であり抗生物質は無効である。抗生物質は菌に対するものであって、ウイルスに無効という事実を知らないとでも言うのだろうか。ウイルス性の風邪から体調を崩して、二次的な感染症を起こすのを予防するためであるともっともらしい理由を述べるひともいるが、二次感染予防に有効だという根拠がどこにあるのだろう(多分ない)。軽度の風邪なら、たとえ細菌性でも自然治癒するため、どちらにせよほとんどのケースで抗菌薬はそもそも不要だ。

•耳鼻咽喉科(急性中耳炎、急性副鼻腔炎、細菌性急性咽頭炎)
良く処方されるが、抗菌薬なしで治るものが大多数だ。先日紹介した、「解剖学的に感染部位が体の外側に近いほど抗生剤なしでも自然軽快する可能性が高い」の原則がそのままあてはまる。仮に必要でもアモキシシリンなどで対応できる。

細菌性急性咽頭炎は溶連菌が原因になることが多いが、ペニシリンに100%感受性なので原則ペニシリン(サワシリンなど)で治療する(参考文献3)。

効果を示しにくい薬があらゆる分野で誤用されている現状がなぜ許容されているのか。それは、「抗菌薬がなくても直る状態」に対して良く使われるためであろう。飲んでも飲まなくても治ったものを、飲んだから治ったと勘違いする。

偽膜性腸炎を起こしやすい

第3世代セフェムは余計なグラム陰性菌、たとえば腸管内の腸内細菌を無駄に殺す。そうすると、腸内の菌交代が起き、病原性のある菌が増える。もっとも有名で問題となっているのが、Clostridium difficile菌による感染症(いわゆる偽膜性腸炎)。第3世代セフェムはクリンダマイシン、ニューキノロンと並ぶ偽膜性腸炎の最大要因とされる。

小児では重篤な低カルニチン血症、低血糖のリスクがある

小児においてはピボキシルの入っている抗菌薬では低カルニチン血症に伴って低血糖、痙攣、脳症等を起こし後遺症に至る症例報告がある。ピボキシル基はフロモックス、メイアクト、トミロン、そしてオラペネム(経口カルバペネム)などに入っており、PMDAから警告が出ている(参考文献4)。

耐性菌が増え、本当に必要な時の効果が減じてしまう

第一世代や第二世代では髄液への移行性がないが、第三世代では髄液への移行性が良い。そのため、第三世代セフェムでは髄膜炎の治療に活用される。特に点滴薬の第三世代セフェムは細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎といった命にかかわる感染症に使われる。それを経口服用で無駄に使い耐性菌を増やし、いざというときの効果を減じてしまっているのが問題となっている。

 

【参考文献】
1、絵でわかる感染症 岩田健太郎著(←同氏の感染症や抗生物質関連の本はお勧め)
2、抗菌薬サークル図データブック第2版 じほう
3、IDSA Strept pharyngitisガイドライン 
4、医薬品医療機器総合機構(PMDA) ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について

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