衆方の祖「桂枝湯」とそれに関連する漢方処方

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以前桂皮について漢方のツムラに問合せした経緯を書いたが、桂皮を含む漢方で代表的な桂枝湯を中心に桂枝湯に関連した良く使われる方剤をいくつか紹介する。

桂枝湯

桂皮含有漢方の代表的かつ最も基礎的な方剤。桂枝湯は「衆方の祖」とも呼ばれ、様々な漢方処方の基本骨格を形成する。従って、桂枝湯を理解することで多くの漢方処方の理解が深まる。

主な用途は、風邪や急性の熱、発汗、寒気を伴う場合。処方の由来は、およそ西暦200年頃に張仲景という名医が書いたとされる『傷寒論』が出典。君薬(配合薬の薬能を代表する生薬)である桂枝から名前を取って桂枝湯と名付けられた。

構成生薬は次の通り
•桂皮
クスノキ科の常緑高木のケイ、Cinnamomum cassiaの若い枝のことを指すが、日本の実臨床では精油成分含有量の多い樹皮(即ち桂皮)を使う。咳嗽、咽のつまり、嘔吐、関節病を治す生薬。気を発散させて末梢に巡らす作用。生体の上の方向や外方向に働く
※なぜ、桂枝湯という名前なのに桂皮なの?という疑問をもたれる方へ。回答はこちら

•芍薬
芍薬の根を乾燥したもの。腹痛を治し、 痛みを止め、小便を利し、気を益すと神農本草経に記載されている。生体の下方や内方に向ける働きがある。

桂枝が陽の働き、芍薬は陰の働きをする。いわばアクセルとブレーキのようになり多種多様な病態において多面的な薬能を発揮する原動力となる。甘草・大棗・生姜はいわば胃薬で、桂枝と芍薬がうまく働くのを補助する。

感染症初期、頭痛、大人の慢性疾患、体質改善などに用いられる。子供が風邪をひいたときなどに有効で、特に食欲不振が主体の感冒初期にこの薬を使うと比較的早く症状が改善する。

下表に桂枝湯証を構成する症状を含む病態に用いられる漢方薬の例を示す。
桂枝湯含有漢方
※ツムラの漢方薬添付文書より配合生薬量、味を抜粋した
「衆方の祖」と呼ばれるだけあり、非常に多くの漢方薬の基礎となっていることが分かる。

桂枝茯苓丸=桂枝湯+茯苓+牡丹皮+桃仁

桂枝茯苓丸のおもな効能は、子宮並びにその付属器の炎症、子宮内膜症、月経不順、月経困難、頭痛・めまい・のぼせ・肩こりなどの更年期障害、冷え症、腹膜炎、打撲傷、痔疾患、睾丸炎など。産婦人科領域やその他の内臓疾患、筋骨格系疾患、皮膚疾患、精神疾患など非常に幅広い領域において使用される。

桃仁は強力な活血化瘀作用と潤腸通便作用。牡丹皮は活血化瘀作用と清熱涼血作用。芍薬は鎮痛止痙作用。茯苓は水滞を改善。処方全体をみると、瘀血(おけつ)の改善を中心として、気逆や水毒にも対応するといった働きが あり、瘀血証に対する標準的な治療薬。

牡丹皮や桃仁には子宮収縮作用があり、妊娠中の患者には投与しないことが望ましい。実際、早産の途中で胎児死亡により母体が重篤な状態に陥ったときや分娩の遅れている妊婦に対して、分娩促進目的で用いられることがある。

桂枝茯苓丸加薏苡仁=桂枝茯苓丸+薏苡仁

月経不順、血の道症、にきび、しみ、手足のあれなどに用いられる。原典には色々書かれているが、基本的に腹腔内腫瘤からくる不整出血や月経不順を治すための方剤。薏苡仁(ヨクイニン)は、利水作用、排膿作用があり特に日本ではイボの薬として使用されている。桂枝茯苓丸加薏苡仁は桂枝茯苓丸に肌荒れやイボ、また水腫が加わった状態に使用される。

桂枝加朮附湯=桂枝湯+蒼朮+附子

原典の傷寒論には、水毒体質で関節炎、半身不随、顔面神経痛、頭重、身体麻痺、激しい頭痛などを伴う場合に使われるといった主旨のことが書かれている。桂枝湯に附子を加えた桂枝加附子湯は、「神経痛、脳出血の後遺症に古人が疝と冷え症で冷えると腹痛を起こし、または腹痛がひどくなり、疼痛があちこち に移動する病態」に適するとされる。 附子と朮は、桂枝加朮附湯の鍵となる生薬。

附子は毒性を有するため、加熱処理や高圧蒸気処理により、 減毒して使用される。新陳代謝を活性化し、強心、利水、 鎮痛、抗炎症などの作用がある。熱がなくても悪寒のするもの、四肢関節の疼痛や麻痺に用いるとされる。蒼朮には利水、鎮痛、抗炎症、健胃などの作用があり、温性利尿剤、鎮痛剤として、腎機能低下による尿量減少、身体疼痛、胃内停水、胃腸炎、 浮腫に用いられる。

「胃腸虚弱で体力の乏しい冷え症、やせ型で内臓下垂があり、胃内停水を認める者」がよい適応とされる。寒さによって悪化する四肢関節の痛みや腫れ、筋肉痛、神経痛、しびれ感などに用いられる

特に上記の症状で、慢性化した病態に用いることが多く、慢性関節リウマチなどの関節炎、腰痛症、変形性膝関節症、脳卒中後遺症、麻痺などに対する代表的な漢方処方の1つとなっている。

鎮痛効果は西洋薬の鎮痛剤よりも弱いので症状が激しい時には不十分ではあるが、組み合せて使えば補助効果は期待できる。長期服用により、鎮痛剤の使用頻度を減らせることがある。

帯状疱疹後の神経痛にも有効。因みに1ヶ月後よりも2ヶ月後の方が疼痛改善が顕著であり、長期投与で効果がより期待できるようである。また、骨量維持効果があるとする研究もある。

芍薬甘草湯=桂枝湯−(桂皮+大棗+生姜)

桂枝湯の構成生薬から桂皮、大棗、生姜を抜いた形。桂枝湯系の方剤ではないが構成生薬(芍薬、甘草)が共通する。筋肉のつりに良く用いられる即効性があり、スポーツの前後に使う人も多い。因みに似たもので、桂枝附子湯(桂枝、大棗、生姜、甘草、附子)は痛みで寝返りもうてないレベルの人に使われる。芍薬、甘草、朮、桂枝、附子という組み合わせに鎮痛効果があると考えられている。

桂枝加芍薬湯=桂枝湯+芍薬

桂枝湯の効能・効果は、「体力が衰えたときの風邪の初期」であるが、これに芍薬を少し上乗せした桂枝加芍薬湯は、「腹部膨満のある次の諸症:しぶり腹、腹痛」が適応となる。胃腸疾患、特に、急性胃腸炎や過敏性腸症候群(下痢型)に使用されることが多い処方。

【参考】
•各漢方の添付文書
•ツムラ漢方スクエア
•漢方ポケット図鑑 など

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