DPP-4阻害薬は合併症を減らさず、心不全や膵炎を増やす〜オングリザ、ネシーナ、ジャヌビア•グラクティブ〜

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DPP-4阻害薬は2型糖尿病における期待の新薬として、ここ何年かの間に次々と上市されてきた。作用機序から低血糖のリスクがなく、血糖値やHbA1cの数値を下げることが出来るとしてトレンドアイテムよろしく飛ぶように売れた。

そして、発売から年月がたった今ようやくそのデータが蓄積しつつある。そうした蓄積を以下でいくつか紹介するが、それで分かったことは、これらの薬はHbA1cなどの数値をやや下げるものの、本来の目的である糖尿病の合併症予防については効果がなく、逆に心不全や膵炎が増え、他剤と併用時にはやはり低血糖が増えるということだった。各薬剤ともに同様の傾向がみられる(クラスエフェクト)。

 

サキサグリプチン(オングリザ)

 

〈要点〉合併症予防効果はない(腎機能に依らず効果がない)、HbA1cをやや下げるが心不全と低血糖が増える

2型糖尿病の心血管イベントリスクは減らさず、むしろ心不全による入院が増える(少なくとも服用2年時点では)ことを示した試験がSAVOR-TIMI53trialというもので、ここでは心不全による入院はプラセボの2.8%に対してサキサグリプチンが3.5%(NNH=142)と増えている。HbA1cの平均値は7.5%vs7.8%(p<0.001)であり、数値を下げることは下げる。低血糖発症率はサキサグリプチン15.3%vsプラセボ13.4%(p<0.001,NNH=52)で増えている (N Engl J Med 2013 Oct 3;369(14):1317)。

同じ試験を年齢別に分けて解析したものがある。ここでは、サキサグリプチンは心不全による入院を
65歳以上の患者で25%(ハザード比1.25, 95% CI 1.01-1.56)
75歳以上の患者で47%(ハザード比1.47, 95% CI 1.05-2.08)
65歳未満の患者で15%(ハザード比1.15, 95% CI 0.96-1.37)
増やしている(Diabetes Care 2015 Jun;38(6):1145)。

また、腎機能の程度に依らず、心血管イベントを減らせないことが先のSAVOR-TIMI 53 trialのサブグループ解析で示されている(Diabetes Care 2015 Apr;38(4):696)。

 

アログリプチン(ネシーナ)

 

〈要点〉心血管系の合併症リスクは減らさず、心不全による入院が相当数増える

アログリプチンも心血管イベントリスクを減らさないことがプラセボに対する非劣性試験で示されている。プラセボに対して劣らないということを示そうとする試験であるが、つまるところ、効果は期待していないからせめて副作用が増えないことは示してくれという試験デザインである。

•アログリプチンでHbA1cは平均-0.36%(p<0.001) •総死亡、低血糖、癌、膵炎、透析、心不全、心筋梗塞などの項目において有意な差なし EXAMINE trial (N Engl J Med 2013 Oct 3;369(14):1327)

これで、めでたく心不全による入院は増やさないことを証明できたかと言えばそうではない。アログリプチンは心不全の既往のある患者における心不全による入院を増やさないかもしれないが、心不全既往がない患者においては僅かにリスクを増やすことが、EXAMINE試験の患者を心不全既往の有無で分けた解析で分かっている。心不全による入院はアログリプチン2.2%vsプラセボ1.3%(p=0.026,NNH111)で心血管死は差がなかった(Lancet 2015 May 23;385(9982):2067)。

サキサグリプチンとアログリプチンが立て続けに心血管系に対して有効性がないばかりか、心不全を増やすことが示唆された。これはFDAにとっても悩みの種であったが、このリスクは当初入念に検討されるに至らなかった。しかし、後にこれらの試験結果を添付文書に追加するようにFDAが勧告を出すこととなった。

 

シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)

 

〈要点〉心血管イベント抑制効果は不明であり、むしろ心不全が増える。膵炎リスクも大幅に増える。

DPP-4阻害薬やGLP-1作動薬によるインクレチン治療は膵炎リスクをあげるわけではないという説もあるが、エキセナチドとシタグリプチンを含む症例対照研究において、膵炎がふえることがわかっている(BMJ 2014 Apr 15;348:g2366)。

急性膵炎による入院リスクが高まるとして、入院歴のない患者群1269名(年齢18-64歳)においてエキセナチドとシタグリプチンにおいて検討した研究があり、使用者は非使用者に比べて、大幅に(およそ2倍)膵炎リスクが高かった。これは事前に薬を中止していても、服用歴があれば発症することもあるようだ。
JAMA Intern Med 2013 Apr 8;173(7):534

インクレチン関連薬は膵炎や膵管化生を増やすリスクはFDAからも警告が出ていたところ。FDA Drug Safety Communication 2013 Mar 14。エキセナチドとシタグリプチンが急性膵炎による入院を増やす可能性があるとした記載がある。

また、7620名(平均年齢54歳)の患者を組み入れた後ろ向きcohort研究によって、シタグリプチンが2型糖尿病患者及び心不全の既往がある患者の心不全関連の入院リスクを増やすことが示唆されている。心不全による入院は、シタグリプチン12.5% vs.プラセボ 9% (p < 0.05, NNH 28)。JACC Heart Fail 2014 Dec;2(6):573

DPP-4阻害薬を服用していて、特に問題はないがなんとなく心臓に違和感があるとか、なんか心臓がヤバいというコメントをされる方にたまに出くわすことは確かにある。ところが、これだけの情報が蓄積していながら、ジャヌビアのメーカーであるMSDは黙ってはいなかった。心不全は増やさないという無罪を主張したのである。

>>次のページ ジャヌビア(シタグリプチン)の無罪証明が示したこと 

 

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