医薬品の期限ー期限が切れた後、どこまで使えるのかー

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

デンマークに賞味期限切れ食品専門のスーパーというのがあるそうだ。とても盛況のようだ。日本も食品廃棄大国であり、年間1900万トン、可食部分だけでも500〜800万トンは食品が廃棄されているという推計がでている。これは7000万人を1年間食べさせていける量であり、海外からの輸入量の半分近くを捨てている計算になり金額にすれば111兆円にものぼるという。

薬においても、使用で余ってしまった残薬や期限切れで廃棄せざるを得なくなったもの、あるいは、抗がん剤など無菌調整が必要で患者の状態に応じて量を厳密に使い分けがあったりで、少しでもミスや状態が変わると再使用が基本的にできないものなど廃棄せざるを得なくなった薬の市場規模は驚くほど大きい。病院における抗がん剤残薬は年間400〜500億円程とも言われる。調製の現場をみると、ちょっとしたミスや治療プランの変更で何万円もする薬があっさりと捨てられていたりする。

飲み残しで余った薬の規模も何百億という世界だ。飲み残したものを薬局にもってきて、再利用できないかと聞く人がいるが、一度人の手に渡ったものは持ってこられても例外なく廃棄する他ない。これを再利用する薬局があったら完全にアウト。

他にも色々な病院や薬局に行けば、その月に期限切れになる薬がドサッと箱に沢山入っていたりする。それで、もったいないという話になる。国の方針として削減したい部分でもあり、対策が考えられている。近年医療機関で余っている薬がないか聞くのもその一環だ。中には、期限切れ間近の廃棄薬を資源と捉え期限間近の品を買取り薬局間で再流通させる業者もある。

期限切れの薬を飲んでも大丈夫か

高い薬はたくさんあり、無駄にしたくない。受診にいくのも面倒だ。このような理由で期限切れの薬を飲まれる方はたくさんいる。むしろ、医療従事者の方が期限切れの薬を平気で飲んでいたりする。もちろん医師や製薬会社は法的規制や信頼の問題から、そんな飲み方を勧めはしないし、期限切れ薬品の安全性や効果について言及することはない。基本的にメーカーのサイトでは、古いものが見つかっても飲まずに、必要なら再受診して処方してもらいなさいと書いてある。

では、この期限が実際意味するところは何なのだろうか。

医薬品における期限は、その医薬品の有効性と安全性が最大限保証できる期日とされる。具体的には記載期限の日には(適切な保管状態の元という前提で)少なくとも元の状態と比して90%の効力を維持していなければならない。

つまり、期限日を過ぎたからといって薬が全く効力を失い、有害にしかならなくなるということではない。

一般的に医薬品の期限は製造日から2-5年の幅がある。因みに、メーカーは指定した期限日以降については、正確な有効性と安定性を導きだすことまでは求められていない。

有効性と効果

薬の効力は製造されたその時からゆっくりと落ちていく(本当にゆっくりと)。なにも、期限切れ日から落ち始めるわけではない。期限は単純にラベル表示されている有効性が少なくともその時までは続くという目安に過ぎない。

適切な保管状態であれば、薬の期限日から少なくとも5年か場合によってはそれ以上の期間が過ぎていても多くの医薬品が90%の効力を維持していたとする研究もある。10年後ですら、元の効力と比して大きく落ちるわけではないようだ(Arch Intern Med. 2012;172(21):1685-1687.)。

錠剤やカプセルなどの固形剤は安定性が高いが、溶液や複数のものを混合した製剤などは期限が切れたら本当に効力が落ちるものもあるので注意が必要だ。

上記の研究内で、28年〜40年前に期限が切れたいくつかの有効成分サンプルを調査されている。対象となった成分はアスピリン、アンフェタミン、コデイン、カフェイン、フェノバルビタール、ペントバルビタール、クロルフェニラミン、アセトアミノフェンなどを含む15成分。うち、11の薬はラベル表示の90%の含量を維持していた。90%とは期限設定で最低限求められる効力だ。

安全性と毒性

一般に信じられていることと裏腹に、期限切れの薬品に毒性がでるという科学的根拠はほとんどない。実質ないといっても良いレベルだと思われる(そういう研究が本当になかなか見当たらない)。期限切れ薬品の毒性に関しては突き詰めて研究されることがあまりないだけかもしれないが。

期限切れ後に使わない方が良い薬

液剤は固形剤(錠剤、カプセル、散剤)ほど安定ではないものが多いし、点眼剤は雑菌が入る可能性を踏まえるとやはり開封後1ヶ月の使用期限を守った方がよい。注射剤も、濁りや変色があったらもう使うべきではない。

そして、何よりも注意が必要なのは治療域が狭い薬で少しのずれが治療上大きな影響を与えかねないものや効力の低下が早いものである。例えば、抗けいれん薬、ジゴキシンや血栓予防不整脈予防のワーファリンなどは治療域が狭いものの代表例であるし、フェノバルビタール、ニトログリセリン、テオフィリン、エピネフリン、インスリンなど力価低下が早いものもある。こうしたものは期限切れ薬剤の服用は勧められない。甲状腺関連の製剤、低用量ピルも期限切れ後は避けた方が良い。また、抗生剤など治療失敗が耐性菌の発現に繋がるものもあまり期限を超過したものは使うべきではない。

結局のところ期限切れ薬品を飲んでも大丈夫なのか

お勧めはしないし、責任もとれない。だが、(仮に相当の長期間たっていても)ほとんどの場合問題ない。ただし上に紹介した薬剤などでは止めておいた方が無難だ。因みに言うまでもないが、調剤する側が期限切れ品など渡したら完全に黒だ。

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コメント

    • ryosuke
    • 2016年 7月 31日

    期限切れの薬を他国で、他国の人に使う事は出来るのでしょうか。
    日本の期限は厳しいと聞いているので、他国では使用可能なのかと疑問を持ったためです。

      • zakiyama
      • 2016年 7月 31日

      「期限切れの日本の医薬品を海外に輸出して、その国で使えるか」というご質問について回答申し上げます。自己使用なら自己責任の範疇で可と思います。単純に製品の品質そのものは本文に記載した通りほとんどの場合使用に耐えうると思われます。

      しかし、「売る」など、業として扱う場合については法的な問題が絡むので、(恐らく)難しいと思います。

      回答は以上ですが、余計とは思いつつも念のため以下に補足情報を少し書いておきます。

      もし上記の法の抜け道があるのであれば、途上国に日本で無駄になっている良い薬を分配するなどビジネスが成立し得そうですね。そもそも、日本で承認されている薬が海外で使えるのかが疑問です。承認されている薬は各国で異なりますし。仮にそれでも使えても有害作用が出た時に誰が責任を取るのかという問題もあります。

      業として輸出を行うのであれば、申請次第で可能であるのかもしれませんが個人レベルでは困難と思われます。因みに、日本における法律ですが、刑法第211条より使用期限不遵守による医薬品劣化により、患者に傷害や死亡の結果が生じ、この使用期限不遵守の態様が過失によるとみられれば、業務上過失致死傷罪として責任と問われる可能性もあります。期限が切れた以上はメーカーが責任を負う範囲は越えているので、期限切れの医薬品を渡すこと事態は違法ではないものの最悪のケースでは責任を追及される可能性は否定できなさそうです。

      他国の例として米国を取り上げますと(当方が日本語英語以外の言語を読みこなせないため米国を例にとりました。他の国では事情が異なるかもしれません)。米国では期限切れ医薬品を渡すこと自体は必ずしも違法ではないとされております。しかしながら、アメリカの大手チェーンドラッグストアであるCVSが期限切れ薬品を誤って販売して訴えられ875,000ドルの賠償金を支払うことになった判例もある(http://consumer-law.lawyers.com/warranty-law/check-that-date-expired-goods-on-stores-shelves.html)ため意図的に行うことは余りにもリスキーですね。

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