痛み止め(NSAIDs)はどのくらい胃腸障害を起こすか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

 

先日、従姉妹と話していた際
「風邪引いた時に熱と頭痛があって受診したらロキソニンを処方されて、
服用した後にメチャクチャお腹が痛くなって何で胃薬を一緒に処方してくれなかったんだ。
って思ったよ。あれはヤブ医者なんじゃないか」
と言われた。

※ロキソニンはNSAIDsと呼ばれる痛み止め薬の1つ。市販薬でも売られている。

短期的な頭痛とか生理痛とかくらいだったら、
胃薬とセットで処方しない医師は少なくない。勿論セットで出す医師も多い。

この手の痛み止めは、
ピロリ菌と並んで消化性潰瘍を引き起こす2大要因の1つである。

普段薬を扱っている感想だが、
発熱や痛みなどでNSAIDsを1週間弱服用しても、ほとんどの人は胃腸障害を起こさないように思う。

短期間でムコスタとかセルベックスと言うような、
胃粘膜を保護する薬を併用して意味があるというデータが
あるわけでもない(私の知る限りは)。

どちらかというと
胃酸の分泌を抑えるタイプの薬の方が消炎鎮痛薬による潰瘍の予防効果は高い。
(参照元BMJ 2004;329:948)

総じて、従姉妹に処方した医師の判断は別に間違っているともいえない。
短期間の服用で胃腸障害を起こすかなど予測できないのだから。
まあ自然治癒推奨でも良いと思うけど。

文献検索してみたが、どの位の期間服用したら胃腸障害を起こすのか
具体的な根拠は見つけられなかった。
胃腸障害を起こすまでの平均的期間は84日とする文献もあったけど、
その情報を目にしたところで飲む側としてはあまり参考にならない。

こういう場合は経験則で考えて良いと思う。
後は、自分が元々胃腸障害を起こしやすいのかどうかを他の要素から判断して必要なら胃薬を飲めばよいと思う。

どんな人が胃腸障害を起こしやすいか。

UpToDateという世界中の医療関係者(主に医師)が利用している電子教科書でみてみると
痛み止め服用時に胃腸障害を起こすリスクが高いグループは次の通りだ。

・胃腸障害(潰瘍、出血)の既往がある 4~5倍
・60歳以上の人 5~6倍
・通常より多量のNSAIDsを飲んでいる(2倍以上) 10倍
・ステロイドを服用している 4~5倍
・抗凝固薬(いわゆる血液サラサラの薬)を使用している 10~15倍
・ピロリ菌に感染している

※UpToDate NSAIDs: Primary prevention of gastroduodenal toxicity の項目より抜粋

もちろん、これらの要素が組み合わればリスクはさらに増す。

一口にNSAIDsという消炎鎮痛剤を飲むと言っても、
薬の選び方によってリスクは下げられないのかという疑問はあると思う。
一昔前にBritish Medical Journalという医学雑誌に載っていた論文に依れば、

NSAIDsでの胃腸障害の相対危険度は次の通りだった。
・インドメタシン(インテバン) 2.25
・ナプロキセン(ナイキサン) 1.83
・メロキシカム(モービック) 1.24
・イブプロフェン(ブルフェン) 1.43

一般にこのグループの痛み止めはCOX-1とCOX-2という酵素を主に邪魔して
発痛物質が出るのを抑えるのだが、COX-1を邪魔すると胃にも障害が出やすいので
COX-2に選択的に働く薬ほど、胃障害の危険度が低い。統計的な結果もそうなっている
(メロキシカムはCOX-2選択性が高い)。

後はNSAIDsではなく、アセトアミノフェンが入った痛み止めを使えば消化器障害のリスクは下がる。

以上のように色々統計はあるけど、
短期的に消炎鎮痛薬を飲むときに胃薬を飲むかと言われたら結局人って感情的に飲む気はするなぁ。
まあ飲んでもさほど害はないし。

以上のような背景を頭に巡らせつつ冒頭の従姉妹の話に対してこういった。

「痛み止め数日飲んでもお腹壊す人は多くないし、医者によって胃薬出さないこともあるね。
今回は予測できなかったのかも。判断出来ることの限界だってあるよ。次回は胃薬出してもらったら?」

 

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