【糖尿病】SGLT2阻害薬の使用条件/発疹リスクの比較/合併症予防効果

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

とある糖尿病患者さんより「新作用機序のSGLT2阻害薬を使ってみたい、何を選択すべきか、またかゆみや発疹が少ないものはどれか」という質問をうけた。既にスーグラとフォシーガで発疹が出ており使えないという。そこで何をもってSGLT2阻害薬を選択すべきか調べてみた。

SGLT2阻害薬の作用機序

まず、SGLT2阻害薬の基本的な作用機序は、腎臓でのブドウ糖吸収を抑制して尿糖を増量することで血糖を降下させるもので、生体内で処理することが困難となったブドウ糖の利用状況にはなんら作用せずただただ血糖値を下げるだけというものだ。要は血中にある処理しきれない糖を尿に出す。極言すればそれだけだ。

僕は、この作用機序からして本当に病態を良くするのか?と不思議に思ってしまった。糖尿病治療の選択肢として優先順位は決して高くないだろうと思う。しかし、新しもの好きな方(?)や今までの治療がうまくいっていない患者さんから使ってみたいと聞かれる。なんとなくの興味で無用なリスクに足を踏み入れて欲しくはないのだが。

SGLT2阻害薬が使用できる条件とは

これは知人の糖尿病専門医に聞いた話だが、彼は以下の条件をSGLT2阻害薬が使用できる概ねの目安にしていると言っていた。もちろん各自の事情があるので、以下の条件に合わずとも処方される場合もあるだろう。

・BMI25以上
・腎機能正常
・65歳以下
・罹病歴10年以内
・脳梗塞、心筋梗塞の既往無し
・利尿剤を服用していない
・他に服用している糖尿病薬は2剤まで
・飲水量を増やせる
・食事療法も守れる
・極端な糖質制限食はしていない

これを満たせるのは全体の5%いるかどうかといったところだろうか。副作用として体重減少、血圧低下作用、尿路•性器感染症や脱水、皮疹・紅斑のリスクがあることが知られている。また、利尿作用があるので脱水防止については十分に対策を講じることが重要で、利尿薬との併用は推奨されない。また 原則としてSGLT2阻害薬は他に経口血糖降下剤は2剤程度までの併用までしか推奨されない。副作用報告としては重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹などの重篤な副作用が積み重なっており、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状がある場合は、すぐに服用中止して受診することとされる。また、動物実験レベルまで遡ると発がん性が指摘されているものもある。

SGLT2阻害薬による薬疹の発症頻度と機序について

薬疹の発症頻度は、市販後直後調査において1%の発現率で実はかなり多い。薬疹が多い薬の代表例として、テグレトールの3.5%、バクタの1.2%、ザイロリックの1.0%とされているが、それに比肩するレベルである。とくにスーグラにおいて多い。

•SGLT2阻害薬による薬疹発症の特徴
同剤による薬疹の特徴は次の通り
1、「スティーブンスジョンソン症候群:SJS」が生じうる。最悪の薬疹。粘膜疹。目の結膜、口唇、外陰部等に発症。
2、交叉感作がある
3、固定疹(同一部位に生じる発疹)が数例、蕁麻疹タイプが50例以上でている
4、服用初日から発症する可能性がある(因みに質問をされた患者さんは服用2,3日で発症していた)
なおスーグラでは、早く発症する患者に重篤例が多いそうだ。

なぜ発疹がでるのかは、未だはっきりしていないが考えられるうる要因としては、脱水による皮膚の乾燥、ケトアシドーシス、肝機能への影響や、薬剤が抗原受容体に結合して、免疫細胞を活性化することで発生するのではという説まである。後者の説の方がより説得力がありそうではある。

SGLT2阻害薬の各薬剤間において発疹や痒みの頻度に差はあるのか

まず、SGLT2阻害薬で現在上市されているものは次の通り。
スーグラ(イプラグリフロジン)
フォシーガ(ダパグリフロジン)
ルセフィ(ルセオグリフロジン)
デベルザ/アプルウェイ(トホグリフロジン)
カナグル(カナグリフロジン)
ジャディアンス(エンパグリフロジン)

いずれも肝代謝メインで腎排泄はわずか。発疹はスーグラにおいて多いが、他はさほど大きな差はなさそうである。まず医薬品医療機器総合機構の下記ページより、副作用が疑われる症例報告を検索できるが、
http://www.info.pmda.go.jp/fsearchnew/jsp/menu_fukusayou_base.jsp
いずれの薬剤も一定数かゆみが出た方がいるが、さほど多いというわけでもなさそうである。

各薬剤の市販後調査比較の資料においても、発疹やかゆみの報告が一定数あるものの、薬剤間で決定的といえる差はなさそうである。すでにスーグラ、フォシーガ、ルセフィ、カナグルなど市販後調査の情報は大分集積しているが、副作用報告数はいずれもなかなかの数である。

副作用の側面から、どう差別化あるいは使い分けをするのかやや微妙で今後の情報集積にもよるだろう。では、効果の側面ではどうだろうか。

SGLT2阻害薬に糖尿病合併症の予防効果はあるのか

通常、糖尿病に対する薬の効果は合併症(末梢血管障害及び大血管障害)を予防して、生活の質を保ちながら寿命を延ばせるかという点(真のエンドポイント)において検討されるが、ほぼ全てのSGLT2阻害薬が臨床試験において単純に血糖値やHbA1cの低下作用(代理エンドポイント)のみの検討によって承認審査試験を通過している。従って、真のエンドポイントが服用によって達成できるかは現時点では不明だ。

唯一、死亡リスクと大血管障害の合併症を減らせることが示されているのがジャディアンス(エンパグリフロジン)であるが、これは作用機序に伴う利尿作用が関係して心不全が減ったのではないかという指摘もあり血糖降下作用により合併症である大血管症が減ったのかは良く分からない。ただ結果として総死亡を減らしているのは事実ではある。

ジャディアンスの論文をみる限りは
10mg、25mg各群では有意に総死亡を減らしているというわけでもないが、両者をプールすると減っている(臨床ではプールして使うことはありえないのだけど)。論文より用量間でアウトカムに差がないのでもし使うなら安い10mg錠の方が良い。問題なのは、この論文は本論文だけではなく付録まで読まないとちゃんと解釈ができない。重要なことを付録に隠されてしまっている。

とにかく、現時点では、SGLT2阻害薬で特段優れた糖尿病の合併症予防効果が証明された試験はなさそうだ。empa-reg outcome試験がそうだという向きもあるかもしれないが厳密に読めばそうとは言いがたい。

因みにSGLT2阻害薬に関するコクランのシステマティックレビュー(Cochrane Database Syst Rev. 2016 Apr 21;4:CD012106)ではデータ不足によりSGLT2阻害薬に糖尿病の合併症予防効果があるかは不明であるとしている。

色々と踏まえていくと、敢えて使う必然性がある人はあまりいないように思われて仕方がない。

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