アスピリンの抗がん作用ー仮説から初期の研究までー

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アスピリンは、炎症や発熱を引き起こすプロスタグランジン(PG)の生成を阻害することで腫れや痛みを和らげる。これはPGの生成を媒介するシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きを阻害することによるが、こうした作用をもつ薬のグループを総称してNSAIDsという。アスピリンは低用量で、血栓予防にも使われる。

長年使われてきて、歴史のある薬だが、近年抗がん作用があるのではないかと話題になっている。これは、1990年代初め頃鎮痛剤として日常的にアスピリンを服薬している人の大腸ガン発生頻度が低いことが疫学研究で示されたことに端を発する。

COXにはCOX-1とCOX-2の2種類がある(COX-3もあるという説もある)。うち、COX-2から合成されるプロスタグランジンE2は癌の発育や転移を促進するのではと言われている。血管新生やがん細胞の増殖を促進しがん細胞を攻撃する免疫細胞の働きを弱めることが知られている。よってCOX-2活性を阻害するとがん転移や再発予防が期待できるというのが仮説である。

現時点で大腸がんのアスピリン予防的投薬は保険適用外。消化器出血や脳出血などの重大な副作用を起こす可能性が予測されるため予防内服は進められないとされている。

米国ジョージア州アトランタのアメリカがん協会による研究では、1982-1988年まで約66万人の成人を追跡調査を行いアスピリン服薬と大腸癌による死亡の関係を検討。1ヶ月に16回以上のアスピリン服薬を1年以上継続している人は服薬してない人に比べ大腸癌になるリスク約60%減少することが分かっている。

これがきっかけになり多くの疫学研究が行われNSAIDsの癌予防効果が報告されている。

2011年英国Lancetの論文(アスピリンとがん死亡率の関連について検討した8つのランダム化比較試験のシステマティックレビュー)では、動脈硬化性疾患の予防におけるアスピリン服薬群とコントロール群の比較でアスピリンを5年以上服薬している人は、服薬してない人に比べ全がんによる死亡リスクが0.66倍、消化器がんの死亡リスクが0.46倍であった。(計25,570例、うちがん死亡674例)。レビューに含まれた全ての試験は元々、アスピリンとそれ以外の薬剤による心血管イベントの予防を主解析(又はセカンダリーエンドポイント)としてデザインされたもの。なお、用量間(75mg-300mg)で結果に有意な差はなかった。
Lancet 2011 Jan 1;377(9759):31

日本では平成19年から国立がん研究センターや、京都府立医大など19施設にて調査。大腸ポリープ(腺腫)を内視鏡的切除した患者311名に対し低用量アスピリン腸溶錠100mgまたはプラセボを2年間投与して大腸腺腫の再発抑制可能か二重盲検試験を行っている。アスピリン群がプラセボ群に対し大腸ポリープ再発リスク40%程度減少(Lancetの結果とほぼ同等)しかし喫煙者ではアスピリン服薬で大腸ポリープが増加することが分かった。

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