【糖尿病薬】アクトス(ピオグリタゾン):有効性、免疫系への影響、発がん性、膀胱癌リスクの検討

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アクトス(ピオグリタゾン)はPPAR-γ作動薬にあたる。PPARは細胞の核内にある受容体の1種で、脂肪酸の酸化などに関係する酵素を調整している。そのうちの1つで、脂肪細胞の分化を調整しているPPAR-γにアクトスは作用する。

結果として、血液中のアディポネクチンと呼ばれる脂肪細胞から分泌されるホルモンを増やし、筋肉や脂肪の燃焼を促す、糖新生を防ぐなどの効果があるとされている。発売された当初はこの新しい機序に期待大きな期待が寄せられた。

一方で、あらゆる細胞の核内にある受容体にPPAR-γに作動する薬剤は細胞機能を低下しやすいとする説がある。炎症に関わる免疫細胞の活性や、炎症に関わる様々な物質を抑制するために免疫機能全体が抑制される可能性があると考えられており、中でもアクトス(ピオグリタゾン)は同系統の中でこの作用が強い。それが、膀胱がん、前立腺癌、膵臓がんなどの増加に繋がっている可能性が指摘されている。

市販後に、アクトスの長期使用の効果を確認したプラセボ対照のランダム化比較試験 (PROactive試験)がある。これはアクトスがプラセボと比較して、死亡、非致死性心筋梗塞、脳卒中などを減らすことができるかを検討した試験であるが、3年間追跡した結果合併症の発生率はプラセボ群で21.7%、ピオグリタゾン群で19.7%、相対危険度0.90(95%信頼区間0.8〜1.02)であり有意な差はなかった。むしろ、心不全(プラセボ群 7.5%対アクトス群10.8%)を加えると、アクトス群に不都合なことが多く、膀胱癌がプラセボ群5人に対してアクトス群14名と2.8倍(有意差あり)という結果であった。

ドイツにおいては、2010年に骨折と心不全の増加を理由にアクトスが保険給付の対象から外され、2011年にはドイツとフランスで新規患者の使用が禁止されている。実際に大規模疫学調査で膀胱がんの増加が明らかになったことも問題であった。日本では未だにしょっちゅう処方されている。

膀胱癌の増加に関しては、差があるとする主張とないとする主張が混在しているが、ないと主張する根拠となっている試験2つは全額メーカーである武田薬品の出資により行われている。これらの試験では、癌が増える傾向にはあるが有意差はなくこれを根拠に関連はないとメーカーは主張しており、その結果をそのまま記載している専門家が書いたネット上の記事も散見される。なお、同試験の中では大きな差とまでは言わないが服用期間が伸びるほど、また用量が上がるほどがんの発生は増えている

しかも、解析をみると途中で服用を中止している群も使用群に組入れられておりアクトスの血中濃度半減期が約5時間、代謝物を含めても1日であり中止すれば1週間もあればほぼ消失することを考えると中止群をアクトス使用群に組入れるのはリーズナブルとは言いがたく、なにか恣意的なものを感じる試験ではある。

なお、近年BMJで発表された疫学調査によれば他の血糖降下剤に比べて、アクトス(ピオグリタゾン)が膀胱癌を63%増加させることが示されており(100000人あたり、アクトス群121名vs他の血糖降下剤群88.9名、ハザード比1.63, 95%信頼区間1.22−2.19)、やはり膀胱癌との関連が持ち上がってきている。

武田は膀胱癌における一連の訴訟において、信じられないほど巨額な和解金を支払い赤字を出し、自演の研究をもってして反論してきた経緯もあるがそれを覆すことは難しいのかもしれない。訴訟で何千億円も払うことになるとは製薬も恐ろしい世界である。

なお、アクトス15mg錠は1錠68.6円、アクトス30mg錠は1錠127.8円。毎日服用するわけだからなかなかの金額だ。糖尿病の合併症を有意差を出すほどに減らすこともなく、これだけの害報告が蓄積している薬を使う必然性があるのだろうか。

【参考文献】
1、PPAR and immune system—what do we know?
2、Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89(PROactive試験)
3、Actos recall information
4、JAMA. 2015;314(3):265-277
5、Diabetes Care 2011 Apr; 34(4): 916-922
5、BMJ 2016;352:i1541
6、Breaking News: Takeda Settles Actos Lawsuits for $2.37 Billion

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