抗ヒスタミン剤によるインペアードパフォーマンス(Impaired Performance)

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

アンハサウェイが演じるアンディ•サックスがパリの街でクリスティアンと歩いている。2人ともワインをしこたま飲んでいる。

Andy: “I never understood why everyone was so crazy about Paris. But…it is so beautiful
アンディ「私、どうして皆がそんなにパリに夢中になるかわからなかったの。でも、すごくキレイ
クリスティアンがアンディにキスをする)  
I…can’t.I’m sorry.You know, Nate and I just split up a couple of days ago, and I can’t
あ、だめ。できない。私ネイト(彼氏)とちょっと前に別れたばかりで
2人はまたキスをする)
Oh… I’ve had too much wine and my hearing vision… judgement is impaired.. I’m out of excuses
ああ、ワインを飲み過ぎて、耳も、目も、判断力もおかしくなってる。もう、言い訳が出てこない
(映画 The Devil Wears Prada 邦題:プラダを着た悪魔 より)

そう、今日はImpaired Performance(インペアードパフォーマンス)の話。Impairedというのは基本的に、機能が損なわれたり弱まっている状態。パフォーマンスは能力のことで、この場合は注意力、認知力などをさす。

インペアードパフォーマンスは通常、薬が注意力•認知に与える能力障害のことをさす。眠気など本人の主観とは関係ないというのがポイントだ。お酒を飲んで「俺は、酔ってねえぞぉ」とか言いながら、実は大分キテるなっていう状態をイメージしてもらえれば良いかと思う。ワインをしこたま飲んだアンディ状態。かゆみや鼻水などを抑える抗ヒスタミン薬やそれを含む総合感冒薬で問題になる。

インペアードパフォーマンスはなぜ起こるか

ヒスタミンはかゆみ以外に神経伝達物質としての側面がある。その遮断により、様々な能力障害が起こる。下図に各抗ヒスタミン剤の脳内H1受容体占拠率を示す。
インペアードパフォーマンス
出典:Pharmacol Ther. 2007 Jan;113(1):1-15.
占拠率20%以下ではインペアードパフォーマンスは起こりにくいとされる(非鎮静性)

注意すべきは脳内への移行性が高いと言われる第一世代抗ヒスタミン薬だ。通常用量で本人は眠気を感じていなくても、クロルフェニラミン2mgはウイスキー水割り3杯と同様のインペアードパフォーマンスを起こすとの報告がある。因みに、眠気やインペアードパフォーマンスが強いと薬の効果が強いと誤解している方がたまにいるが、眠気と効果に相関はない。眠気が出にくくても良く効く薬はある。

インペアードパフォーマンスは具体的になにが問題なのか

さまざまな弊害が考えられうるが、いくつか列挙する。
•運転や危険な業務での事故
飲酒運転同様に危険。抗ヒスタミン薬使用者は抗うつ剤や精神病薬内服者より労災事故が多いとの報告あり。そのため抗ヒスタミン剤の添付文書に記載がある(下表)
表:添付文書における抗ヒスタミン薬に関する運転等危険な業務への注意
抗ヒスタミン剤_注意

•労働生産性低下:特に鎮静性のものでは明らかに低下するとされている
•学習能力低下:かゆみや鼻炎でも学習能力は低下するが、鎮静性抗ヒスタミン薬服用はそれ以上に低下する。試験前日や当日は服用を控えるか非鎮静性のものを検討するなどすると良い
•老人の転倒:鎮静性に分類されるもので、夜間の転倒事故増加の報告がある。転倒しても周囲に危険物がないようにしたり、用便への道筋は明るくしたりするなどすると良い

注意すべきポイント

メーカーの添付文書には「眠くなることがあるので、運転等に注意」とか記載されているがインペアードパフォーマンスは眠くなくても起こる。むしろ眠くないので自身が注意しないことが問題になる。海外では裁判事例もあるそうで、医療者側もしっかり説明をすることが望ましいし、受療者側も理解しておくと良い概念だ。医療者の間ではこの概念は、比較的知られていると思うが、身近にある問題にも関わらず一般の認知度はまだ低い印象があるので啓発も大切になってくるだろう。

【参考文献】
•違いがわかる!同種•同効薬 黒山 政一 (編集), 大谷 道輝 (編集)
Pharmacol Ther. 2007 Jan;113(1):1-15.
•各薬剤の添付文書

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