フッ素付加薬剤とキノロン〜幅広い菌に対応する薬剤の問題〜

Pocket
LINEで送る

始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

フルオロキノロンあるいは単にキノロンと呼ぶ抗菌薬は、あまりにも使い勝手が良いためか様々なシーンで使われる。

経口薬なのに、バイオアベイラビリティが90~95%ほどと極めてよく、点滴薬に近い効果が期待できる。理論上そうなだけではなく、実地での経口薬と点滴での効果比較でも同等の効果が示されている(Clin Infect Dis. 2016 Jul 1;63(1):1-9.)

カバーしている菌の範囲がとても広く、各臓器への移行性も優れている。中枢神経症状や軟部組織障害をはじめとする副作用報告はあるにせよ、さほど副作用が多いわけでもない。そのためか、安易に何にでも使われているきらいはある。医療現場にいれば、フルオロキノロン系の抗菌薬を見かけない日はないほどだ。幅広く使われているものこそ特性を把握して、正しく使わないと思わぬしっぺ返しをくらう。

最近のキノロンはその化学構造にフッ素がついているものが主流だ。フッ素は英語でFluorine。故Fluoroquinolone(フルオロキノロン)という。主流たるにはそれなりの理由がある。

高校の化学の話になるが、フッ素の特徴から次のような薬の特性が得られるのが大きい。

•電気陰性度が最強→受容体や酵素と強く結合する。従って抗菌効果が高まる
•大きさは水素原子(H)についで非常に小さい→薬剤の大きさへの影響が少ない
•フッ素原子と炭素原子(C)の結合は分解されにくい→薬剤の安定性が高い

余談だが、すでにある薬剤に化学構造上フッ素を付加しただけの薬は数多く、例えば次のような例がある。

•抗不安薬
ジアゼパム+フッ素→フルジアゼパム(エリスパン)
ニメタゼパム(エリミン)+フッ素→フルニトラゼパム(サイレース)

•緑内障治療用の眼圧を下げる薬
ラタノプロスト(キサラタン)+フッ素→タフルプロスト(タプロス)

•糖尿病用で血糖を下げる薬
アログリプチン(ネシーナ)+フッ素→トレラグリプチン(ザファテック)
※ザファテックは週1回の服用で済む製剤

といった具合に様々な薬剤に応用されている。薬の添付文書を見る時に化学構造式を見る人はあまりいないのかもしれないが、実は見る人が見ると薬の特性を示す情報が豊富に含まれている。フッ素は分かりやすい一例だ。

さて、先のキノロンだが細菌のDNAを機能させるために必要なトポイソメラーゼという酵素を阻害する。DNAは細菌の分裂などに必要な遺伝子情報なので、ここを阻害すれば細菌を殺せるという仕組みだ。

キノロンはとても幅広い菌に対応する。グラム陽性菌、グラム陰性菌、(一部の)嫌気性菌、マイコプラズマなど細胞壁をもたない肺炎原因菌、結核菌など抗酸菌、(一部の)MRSAなど、なんでもこいといった勢い。便利だが、この幅広さが逆に問題を招くこともある。なお、特に肺炎球菌に効きがよいものをレスピラトリー・キノロン(respiratory quinolone:呼吸器用キノロン)と呼ぶこともある。

素人目には抗生物質は広域、つまり多くの菌を殺す方がより優れていると思われがちなのだが、実際には狙った菌をピンポイントで殺せる方が良い。小さな虫を殺すのにバズーカ砲を使っても無駄に他の被害が大きくなる。菌の場合は中途半端に他を攻撃するとそこの菌が耐性を持ちより強力になって帰ってくる。サイヤ人を瀕死の状態にすると逆にメチャ強くなって復活するようなものだ(ドラゴンボールを知らない方はすみません)。因みに抗生物質は人以上に家畜に乱用されて、そこで菌が耐性を獲得してから人へ感染するのが大きな問題とされている。

特に広域抗菌薬や特殊な耐性菌に対して切り札として用いられる薬剤は、その薬剤への耐性菌が出現した場合、次に選択できる抗菌薬が限られるので、できる限り使用を制限するのが大切になる。

第3世代セフェム系、第4世代セフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系、バンコマイシンやテイコプラニンなどの抗MRSA薬などは使用制限が望ましい代表例。もちろん必要な時は躊躇なく使うのが重要なシーンもあるだろう。このあたりは地域毎の取組みがとても大切。

では狙った菌をピンポイントで殺すには?そこが、狙った菌が何かを特定できる医師の力量が問われるところ。力量が低いほど「とりあえず広域」になる率が高まる。「なぜその薬を使うのか?」をある程度説明できる方に処方をしてもらいたいもの。

【参考文献】
Clin Infect Dis. 2016 Jul 1;63(1):1-9.)
•くすりのかたち-もし薬剤師が薬の化学構造式をもう一度勉強したら 南山堂

↓ ↓ ↓この記事に共感した、面白かったらこちらをクリック!
dqranking  dqmura

 ご案内

講演、取材についてご相談、お申込み

薬についてのご相談

薬局のお悩みについてご相談

↑トップページに戻る

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Translate:

アーカイブ

ar

おすすめメディア集

hymkbanner

セールスが苦手だからこそ、出来る!作れる!売り込まないセールス設計とは、お客様から選んでいただける体制を作れればいい。その体制は、あなたのビジネスの「強さ」と「違い」を作り出し、活かすことで構築できる。その構築方法をお伝えしています。

ファーマシストフロンティア

私も連載している人気マガジン。広告によって編集内容が左右される従来の雑誌とは一線を画し、実相を探求したウェブマガジン。必要とされる薬剤師になるための必読書、それが『ファーマシストフロンティア』です。

お問い合わせ

インバウンド003

facebookページ(いいねを押していただけると励みになります!)

PAGE TOP
Translate »