「全体として」果物を摂取をすることで血糖値は下がり、心血管疾患が減る

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

果物には果糖が多く血糖値を上昇させてしまうので摂取を控えて下さい、と説明を受けたことはないだろうか。僕はそう説明している医療従事者やそう説明されたという患者さんを何人も見たことがある。糖質制限の一貫とかで、果物を控える人もいる。

果物の摂取が血圧、血糖値を下げ心血管イベントや死亡率を下げる

実際にはどうなのだろうか。果物の摂取が心血管疾患を減らすことを示している試験はいくつかあるが、2016年4月にNew England of Journal Medicineに掲載された心血管疾患や高血圧治療歴のない451,665名を組入れた疫学研究において、果物を日常的に摂取している群としていない群とでは、前者の心血管関連死が40%少なく、その他心血管イベントも30%前後減ることが示されている。また、血圧及び血糖値も果物摂取群の方が下がる傾向にあり、摂取量が多いほど総死亡及び心血管イベントが減る傾向が出ている(参考文献1)。

なぜ、果物の摂取により血糖値があがらないのか

なぜ、このような結果になるのだろうか。血糖値が下がると言うのは意外と思われるかもしれないが、果糖とブドウ糖は代謝経路が全く異なる。果糖は一部がブドウ糖に変換されるものの、図1に示すようにそのほとんどは肝臓で代謝される。果糖の代謝は未だに不明な部分も多いが、肝臓以外はかなりマイナーな経路といってよいだろう(図1)。
fructose_pathway
図1:果糖の代謝経路  出典: Nutr Metab (Lond). 2012; 9: 89.

従って、代謝にインスリンを必要としないのでインスリンを枯渇させることもなく、また膵臓に負荷をかけるわけではない。

糖尿病の病態はインスリンの作用低下によるものだが、インスリンは血中からブドウ糖を細胞に押し込んでエネルギーに変換させるのを補助するから、その作用が低下すれば、取り入れられた栄養が利用されずに血中にブドウ糖があふれかえってしまう。しかし、上記の理由から果糖はインスリンの作用を低下させるわけではなく糖尿病の病態を悪化させにくいものと考えられる。

肝臓で代謝されれば、TCAサイクルを経てATPというエネルギーになり余分なものはグリコーゲンや中性脂肪となる(図1)。それが過剰になれば体重が増えて病態が悪化し、脂肪肝を招くのではという意見もあるかもしれないが、直接の因果ではない。これは果物の食べ方が間違っているか、肝臓が正しく機能していないためであろう。

果物と砂糖など精製穀物とでなにが違うのか

そもそも、果物は水分や食物繊維を豊富に含むので、すぐにお腹が満たされるため不必要に食べ過ぎることはまずない。また、さまざまなアミノ酸、ファイトケミカル(Phyto chemical)、ビタミン、ミネラルなど栄養が与えられるため糖代謝が助けられるし、満腹中枢も刺激されやすいので過剰摂取にはまずならない。これは、精製された砂糖などがビタミンB群、クロミウム、カルシウムなど糖代謝に必要な栄養素を失っているのとは対照的である。精製穀物などは果物と異なり体内の蓄積からそうした栄養素を奪って代謝せざるを得ないわけだ。

なお、メイヨークリニックのホームページににあった換算によれば、100gの炭水化物を摂取しようとすると、果物換算では次のいずれかの量を食べることになる。

•バナナ3.5本
•マンゴー550g
•スイカ1270g
•いちご1200g
•パイナップル830g

普通に供される量などこの7,8分の1くらいではないだろうか。炭水化物100gなどうどんやパスタ1〜2人前ほどの量で簡単に摂取できるが、果物ではそうはいかない。食べたいだけ食べても果物のみで糖尿になるのは難しいだろう。

また、果物=果糖を摂取する と捉えている人がいるが、これは同義ではない。確かに果物には果糖が多く入っている。割合が少ないものの、ブドウ糖やショ糖(ブドウ糖と果糖から構成される)も入っている。果物に果糖は入っているが、果糖そのものではない。もちろん果糖とグルコースが全く異なるのは先に述べた通りだ。

砂糖ではない食べ物を角砂糖換算するのは妥当な評価軸ではない

果物中の糖類は、白砂糖や米粉、小麦粉などのそれより複雑な構造であり、血中へゆっくり吸収されるため血液中に糖が溢れ変えるような事態は招きにくい。従って、果物とお菓子やパスタなどと同列で語る事自体が誤りである。

砂糖ではない食べ物をカロリーベースで角砂糖に換算して「こんなに入っている」と主張する情報源があまりにも多いがそれは妥当な評価のしかたではない。そもそも、1つの果物や野菜に入っている栄養素が完全に分析しきれるかといえば不可能である。

食材を全体として摂取することが大切

ハーバード大学公衆衛生学部Isao Muraki氏らの検討によれば、果物そのものを全体として食べることが糖尿病発症を減らすとされている。なお、果物の種類によってその程度は異なる。また、ジュースで摂取し続けるとかえって糖尿病リスクをあげる可能性があるので、食材そのものを摂取するというのが大切となる。

同研究における、果物の種類における糖尿病リスク低減度合いを図2に示す。
糖尿病_果物_フルーツ
図2:果物の種類毎による糖尿病発症の調整ハザード比

図2から糖尿病リスク低減率の1位はブルーベリー 2位 ぶどうやプルーン 3位 リンゴ である。

血糖値が高い人は、果物を制限するよりも精製穀物(白米、パン、砂糖など)の摂取を減らす方が有効である。果物を制限して良くなるわけではない。できれば野菜を増やす。果物を摂る時に、レタス、セロリ、白菜などを添えると果糖が血中に吸収される速度をより遅くすることができる。

脂肪をとりすぎないことも大切だ。体に余計な脂肪が多いほど、インスリンの働きが妨げられるので糖が細胞に吸収されにくくなり血糖値が上がってしまう。喫煙や飲酒も肝臓の組織を傷つけ、糖代謝機能を損なうことにつながる。こうした心がけで糖尿病の病態は大きく改善する。まずは、果物や野菜などの食材を「全体として」摂取するところからはじめてみてはいかがだろうか。

【参考文献】
1、Fresh Fruit Consumption and Major Cardiovascular Disease in China
N Engl J Med 2016; 374:1332-1343 April 7, 2016
2、Fructose metabolism in humans – what isotopic tracer studies tell us
Nutr Metab (Lond). 2012; 9: 89.
3、I’ve heard that you shouldn’t eat sweet fruits such as chikoo or mangoes if you have diabetes. Is this true? Answers from M. Regina Castro, M.D.
4、Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three  prospective longitudinal cohort studies
BMJ 2013;347:f5001

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