【麻酔薬】医師が麻酔下の女性にわいせつ行為をしたとする報道について

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普段、ニュースに触れることはないのだが少しコメントしておこうと思う。40歳の医師が麻酔下の女性にわいせつな行為をしたとして、話題になっている(例:http://togetter.com/li/1016694)。様々なニュースで取り上げられ、医師の名前まで公表されているが、これで冤罪だったらどうなるのか。病院サイドは逮捕の不当性を主張している。これは相当なことである(病院側の主張:http://yanagihara.kenwa.or.jp/statement.html)。

Facebookをみたら、好き勝手書いている人がいた。いわく、「そんな医師は最低だ」「そんな人は極刑か島流しにすべき」「そんな人がいたら怖くて外歩けないわ」「島流し賛成〜」「人間失格だ」などなど。まったく、不確かな情報でよく平気でそんなコメントをできるな。自分が良い人だと声高に主張しながら、無責任に人の人生を左右しても良いようなコメントする下卑たマインドを露呈している。

もちろん、そうした行為が本当に行われたのであればそれは良くない。しかし、普通手術後など忙しくてそんなことしている暇はなさそうにも思えるが。また、麻酔は現実と誤認するレベルの鮮明な性的幻覚をしばしば引き起こすことが知られている。古い報告だと1849年にはクロロホルム使用下の女性がわいせつな発言をしたという記録がある。例えば、麻酔下の性的な幻覚について、以下の論文でさまざまな症例が紹介されている。

Anaesthesia. 2003 Jun;58(6):549-53.
Sexual hallucinations during and after sedation and anaesthesia.
Balasubramaniam B1, Park GR.

ここでは、性的な幻覚はプロポフォールやベンゾジアゼピン系の薬剤であるミダゾラムなど様々な麻酔薬でよく観察され、この幻覚によって治療者が被害や訴訟を被った事例も少なくないと書かれている。論文に記載されている例を表にしたので以下に示す。
麻酔_症状
麻酔_クレーム
こうした幻覚例が良くあるからといって、女性の発言に信憑性がないと言い切るつもりはないが(そんなことを言ったら、麻酔下の女性なら何でもして良いことになってしまいかねない)、その可能性は考慮して然るべきであろう。従って、医師や歯科医師も治療に当たる時はこれをふまえ、看護師を同席させるなどリスクマネジメントが大切となるし、それが規則となっている施設も多い。

もう1つ文献を紹介しよう。
Anaesthesist. 2012 Mar;61(3):234-41.
Sexual hallucinations and dreams under anesthesia and sedation : medicolegal aspects.

こちらでも、麻酔下で性的な幻覚を見ることはよくあることで、時にそれはとても鮮明で現実と誤認することもよくあると書かれている。こうしたことを踏まえると、麻酔後の女性の証言をもとに判断するのは極めて恐ろしいことである。これらの文献は一例に過ぎず医学文献のデータベースを検索すれば山ほど出てくる。

唾液が検出されたなどと書くメディアがあるが、本当に検出できているのだろうか。どう検出したのだろうか。不明なことだらけだ。事実関係を知らないのでなんとも言いがたいが、この逮捕がまかり通り有罪となる判例ができてしまえば、あらゆる麻酔下手術への影響は免れないだろう。より厳密なリスクマネジメントマニュアルやガイドラインが要求されるかもしれない。気持ちとしては冤罪であって欲しいが、果たしてどうなるのだろうか。

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