【狭心症】ニコランジル(商品名:シグマート)による頭痛が強い場合中止して良いか&潰瘍の問題

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30台前半の女性で特発性冠動脈乖離という疾患をもつ方から、夜間に緊急電話を受けた。「今朝シグマートの服用を開始後に両方のこめかみに強度の頭痛がある。あまりにも痛すぎて仕事にならない。ロキソニンを飲んだが全く効かず、ボルタレンを使おうか検討している。どうしたら良いのか。今晩は飲んでよいのか?」という。

これは一例だが、実はこうしたシチュエーションは珍しくない。主に狭心症予防に使われるニコランジルは頭痛が高頻度にでる。しかも、その頭痛にロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)が効かなかったりする。

このような状況で、どう対応すべきか。疾患のリスクからして、(責任逃れ的に)是が非でも医師の指示通り飲むように説明されるだろうか?

僕はといえば、本来医師の指示を仰ぐことが望ましいとは思いつつ、医師が不在の時間帯であったため理由を説明してその日は中止にしてもらい、翌日医師へ処方変更の提案をした。そもそも、ニコランジルが発作を予防する確率は高くなく、その日だけ中止して突如問題になる可能性は低いとの判断からだ。

ニコランジル(シグマート)に総死亡率を減らすという根拠はない

その判断の背景となった部分について触れておこう。僕はニコランジルが、総死亡率を改善させたというエビデンスを寡聞にして知らない。知る限り、ニコランジルを用いた長期のランダム化比較試験(RCT)は5126名(ニコランジル群2565名、プラセボ群2561名)を組入れたIONA試験が唯一だと思う。

このRCTでは主解析として非致死性心筋梗塞や胸痛による入院などの複合エンドポイントが減少するかが検討され、副次的な解析で総死亡などが検討された。

主解析項目についてはプラセボ群398名(15.5%)、ニコランジル群337名(13.1%)で(若干ギリギリだが)有意に発生が減っている(ハザード比 0.83, 95% 信頼区間 0.72-0.97)が、総死亡は減る傾向にあったものの統計上有意には減らさなかった(ハザード比0.85:95%信頼区間0.66-1.10)。

この試験で注目すべきは頭痛の副作用の多さだ。頭痛による脱落のオッズ比はなんと5.1(95%信頼区間:4.0-6.5、p<0.0001、NNTH=9)と極めて高頻度。9人に1人というかなりの高確率。冒頭の例のようにニコランジルで頭痛を起こす人に会うのは珍しくないのも納得だ。このような高頻度で副作用がニコランジル群に出てしまっては、プラセボ対照盲検化試験といえど、盲検化されていないようなものだ。

ニコランジル(シグマート)による潰瘍

また、ニコランジルには頭痛以外に特徴的な副作用がある。それが、その作用機序(カリウムチャネル開口作用)に関連した抗炎症作用やキズの治癒を阻害する作用である。

結果として、粘膜や皮膚に潰瘍を高頻度に生じるため添付文書にも頻度不明の副作用として記載されている。重篤化の恐れがある副作用なので、発症した場合はもちろん即中止が必要で、口内炎などが悪化するようなら要注意である。

潰瘍の頻度に関しては添付文書などのメーカー資料に具体的な記載はないが、各種コホート研究及びIONA試験の著者から収集した未公表データをまとめて頻度を分析した論文が2016年3月にでている。

それによれば、口内潰瘍は0.2%〜5%(500名〜20名に1人)、肛門潰瘍は0.07〜0.37%(1400〜270名に1人)の割合で発生するとされており、用量をあげるほど率が高まる傾向があり1日30mgを越えると著しく高頻度かつ短期間で発症する傾向が示されている。

結局どうしたか

長期的に総死亡を減少するという証拠がまだなく、急性期に使われる注射剤では話が別かもしれないが、経口剤はメリットに対してデメリットの方が大きい印象がある。ハイリスクの患者は検討の余地があるかもしれないが第一選択として積極的に使用する薬剤とまではいかないだろう。

冒頭に触れた処方変更の提案であるが、結局医師と相談の上、カルシウムチャネル拮抗系の血管拡張剤に属するベニジピン(商品名:コニール)へと変更となった。その後、目立った発作や頭痛もなく経過しているようだ。

【参考文献】
1、Effect of nicorandil on coronary events in patients with stable angina: the Impact Of Nicorandil in Angina (IONA) randomised trial.
Lancet. 2002 Apr 13;359(9314):1269-75.
2、Nicorandil, Gastrointestinal Adverse Drug Reactions and Ulcerations: A Systematic Review.
Adv Ther. 2016 Mar;33(3):320-44.

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