【抗生物質】マクロライド系抗生物質の長期投与について

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通常、抗生物質は必要な時に短期間使い飲みきるというのが原則だが、例外もある。その例外の代表的なものが、マクロライド系薬剤で、同薬剤には抗炎症作用があるのではということから、汎細気管支炎(DPB)や慢性副鼻腔炎などの治療によく用いられている。僕は薬剤師になりたての頃、初めてクラリスロマイシンやエリスロマイシンが90日分とか長期処方されているのをみた時に「こんな使い方があるのですか?」と思わず上司に聞きにいったことがある。といっても「慢性副鼻腔炎や慢性気管支炎にそういう使い方をするものだから」と言われ、 それ以上の回答が得られたわけでもなく結局自分で調べることになったのだが。

例えば、びまん性汎細気管支炎(DPB)にエリスロマイシンの少量長期療法が行われているが、これは日本発の治療法で、1980年代に効果が判明している。それまで、DPBは非常に予後が悪い疾患だった。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対しても長期投与が行われることがある。ライノウイルス感染で増加したムチン分泌を減少させ、RSウイルスやインフルエンザウイルスの感染抑制効果、さらに気道炎症抑制作用などがあるためにCOPDの増悪予防に効果があるのではないかと考えられているためである。

そして、海外においても慢性呼吸器疾患に使えるのではないかという、臨床試験の知見が積み重なってきている。

耳鼻科領域での使用ー慢性副鼻腔炎に対する効果

急性中耳炎や急性の副鼻腔炎に対しては、起因菌が耐性となっているため通常は使用されないが、慢性副鼻腔炎には用いられる。起因菌の中でもセラチアや緑膿菌には抗菌力を示さないものの、バイオフィルムや炎症性サイトカインの抑制作用があるために増殖は抑えられるのではないかと言われている。鼻粘膜の腫れよりも鼻漏に効果を示す。

 少量長期投与といって、常用量の半量で3ヶ月を目安に長期使用されることがある。この場合、アジスロマイシンは使われない。小児の滲出性中耳炎においては必要最低限の2ヶ月程度を目安とし、耐性菌を発現させないよう長くても3カ月までの使用にとどめるべきとされている(Jpn J Antibiot 2003;56(Suppl A):167-70.)。

呼吸器科領域での使用ーCOPD、非嚢胞性線維症性の気管支拡張への効果

呼吸器科領域においてもマクロライドの長期投与が良く行われている。例えば、聴覚障害・安静時頻脈は認めず、補正 QT 間隔延長の明確なリスクを有しない COPD 患者を対象にしたプラセボ対照試験では、1年間の服用継続で、アジスロマイシンによって急性増悪の頻度が一患者あたり、年間1.83回から1.48回へ減ることが示されている。ただし、聴力低下の副作用がプラセボ20%に対して、アジスロマイシン群25%と増えている(NEJM 2011:365(8):689 698)。

また、非嚢胞性線維症性の気管支拡張症患者117名(平均62.3歳)において、エリスロマイシン200mg1日2回継続の効果を検討した二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験もある。ここでは、エリスロマイシン群59人、プラセボ群58人にランダム化され、12ヶ月治療が行われたが、結果として、患者一人当たりの年間平均肺増悪は

•エリスロマイシン群:1.29 回[95%信頼区間 0.93-1.65]
•プラセボ群:1.97回 [95%信頼区間 1.45-2.48]

で年間で患者1人当たり0.7回ほどの増悪減少であった。しかし、マクロライドの耐性菌は当然ながら増加した(BLESS試験 JAMA. 2013 Mar 27;309(12):1260-7)。

このようにランダム化比較試験のデータが出そろってきているので、それらの研究を網羅的に集めてメタ分析したシステマティックレビューが発表されている(PLoS One. 2014 Mar 6;9(3):e90047)。

その研究では、小児及び成人の非嚢胞性線維症性の気管支拡張症に対するマクロライド長期投与の効果が検討され、確かにマクロライドは増悪リスクを有意に減らすことが示されている。なお、成人における相対危険度は 0.59[95%信頼区間0.40~0.86]、小児においては 相対危険度0.86[95%信頼区間0.75~0.99]であり、患者QOLも改善したと結論されている。

しかしながら、増悪による入院リスクが減ったわけではなく、下痢の有害事象が多いのも難点ではある。一般に抗菌薬は腸内細菌叢のバランスを崩すので下痢を起こしやすいが、それに加えてマクロライドにはモチリン様作用というものがある。モチリンは消化管の蠕動運動を活発にするホルモンであるが、マクロライドも同様に消化管運動を活発にすることが報告されている(Br J Pharmacol. 2013 Apr; 168(8): 1859–1867)。従って下痢や腹痛がでることが多く、特に服用当日など早期にでる下痢はこの作用による可能性が高い。この副作用を逆手にとって、ICU(集中治療室)患者の便秘予防に使うこともあるようだが、多くの場合好ましい作用ではないだろう。

色々と研究はあるものの、使いすぎと耐性菌の増加はトレードオフの関係にありその問題が解決されたわけでもない。リスクが減ると言っても、いかほどのものかというのは上記の通りであり、この長期投与の扱いについては世界的にも一定のコンセンサスがないというのが現状である。

【参考文献】
1,N Engl J Med. 2011 Aug 25;365(8):689-98.
Azithromycin for prevention of exacerbations of COPD.
Albert RK, Connett J, Bailey WC, Casaburi R et al.
2、JAMA. 2013 Mar 27;309(12):1260-7.
Effect of long-term, low-dose erythromycin on pulmonary exacerbations among patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis: the BLESS randomized controlled trial.
Serisier DJ1, Martin ML, McGuckin MA, et al
3、PLoS One. 2014 Mar 6;9(3):e90047.
Macrolide therapy in adults and children with non-cystic fibrosis bronchiectasis: a systematic review and meta-analysis.
Gao YH, Guan WJ, Xu G,et al
4、Br J Pharmacol. 2013 Apr; 168(8): 1859–1867.
The antibiotic azithromycin is a motilin receptor agonist in human stomach: comparison with erythromycin
John Broad and Gareth J Sanger

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