【抗生物質】マクロライド系抗生物質の概論ー構造、食事の影響、耐性菌の問題などー

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マクロライド系の抗生物質はとてもポピュラーだ。クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド等)、エリスロマイシン(エリスロシン)、アジスロマイシン(ジスロマック) etc。世界的にも、日本においても本当に沢山使われている。副作用の発生が少ないようにみえるし、カバーする菌もそれなりに多いからだろうか。

なぜ、「マクロライド」と呼ばれるのか〜開発されている代表的な薬剤

マクロライド系抗菌薬は、化学構造によっていくつかの系に分類されるが、系により細菌への作用の仕方や対応する細菌の種類が異なる場合がある。マクロライド系抗生物質は基本構造としてはラクトン環が連なった、大環状(マクロ)ラクトンを作っていて、これが「マクロライド」と呼ばれる所以となっている。分子量もとても大きい。

最も古いマクロライドであるエリスロマイシンは1952年にフィリピンの土から発見されている。エリスロマイシンは、抗菌作用は強いのが胃酸に弱いという弱点があり、感染症に対しては1日に4~6回と頻回に投与する必要がある。

続いて、酸抵抗性が高められた肝代謝胆汁排泄型のロキシスロマイシン(ルリッド)が開発され、その後、組織移行性の高いクラリスロマイシンが発売されている。

さらに半減期の長い薬剤として発売されたのがアジスロマイシンで、これはラクトン環の数が15個と多いため胃酸に対する安定性、血中半減期が優れた製剤となっている。1日1回で服用が済むのもそのためだ。肺炎球菌はマクロライド系薬に耐性を示すが、アジスロマイシンが効果を示すこともある。また、徐放化された1日1回服用製剤も発売されている。

日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドラインにおいては、耐性菌防止対策として「抗菌薬は十分量を使用し、短期間使用の実行を遂行する」ことを推奨しているがアジスロマイシンのドライシロップ(ジスロマックSR成人用ドライシロップ 2g)はそれを可能とする製剤と言えるだろう。

マクロライド系抗生物質クラリスロマイシンの消化管吸収と食事の影響

基本的にマクロライド系の消化管吸収はさほど良くない。そのため空腹時服用が良いと書いている書籍もある。例えば、経口のクラリスロマイシンのバイオアベイラビリティは50%。食後摂取により効果の発現が遅れ(ピークタイムが2時間→2.5時間ほどになる)、最高血中濃度が約24%上昇するとの報告がある(J Clin Pharmacol. 1992 Jan;32(1):32-6.)。しかしながら、食事による活性代謝物への影響は微々たるものでAUCにもほとんど大きな差がないことも分かっている。従って、クラリスロマイシンは食前食後どちらの摂取でも大きな差はないと思われる。

バイオアベイラビリティが低いのであれば静脈注射はどうなのか

バイオアベイラビリティが低く中途半端になってしまうのであれば、静脈注射にしてはどうかという発想もあるかと思う。例えば、アジスロマイシンの経口剤のバイオアベイラビリティはおよそ37パーセントとインタビューフォームに記載があり、あまり吸収が良いとは言えない。しかし、静脈注射ではこれが100%になるわけなのでより効果がある。実際にマクロライド耐性の肺炎球菌に対してすらも静注では効果を示したという研究もある(Intern Med. 2009;48(7):527-35.)。もはや、ここまでカバー範囲が広いとなるとかなりの広域抗菌薬といっても良いレベルで、SR製剤や経口薬とは違う次元で捉えた方が良いのかもしれない。

マクロライド系抗生物質はとにかく耐性菌が問題。交差耐性もあり

マクロライド系の抗菌薬は、呼吸器感染症の原因になるマイコプラズマ、レジオネラ、性感染症の原因になるクラミジアあるいは肺などの呼吸器系感染症によく使用されるが、経口薬は効果がものすごく高いわけではなく重症感染症にはあまり向いていないというのが率直なところ。

肺炎球菌や溶血性レンサ球菌などのグラム陽性菌にも効果があるとされているが、実際にはこれらの菌においてマクロライドの効かない耐性菌が増えてとても増えている。家畜領域で安易に使われすぎたことも耐性菌が蔓延するのに大きく寄与していると言われている。

厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の資料によれば、
肺炎球菌の86%はエリスロマイシン耐性(2012年)
A群溶連菌の52.9%もエリスロマイシン耐性(同年)
となっていて、効果があると言ってもこれでは実質使えないだろうと思う。マクロライドには交差耐性があるので、エリスロマイシン耐性であれば通常クラリスロマイシンやアジスロマイシンも耐性だ。それ以外にも、呼吸器疾患の原因となるマイコプラズマや胃がんや胃潰瘍の原因として有名なピロリ菌においてもマクロライドの耐性菌が増えていると言われており、とにかくマクロライドは耐性菌の問題だらけである。

【参考文献】
1、J Clin Pharmacol. 1992 Jan;32(1):32-6.
Drug-food interaction potential of clarithromycin, a new macrolide antimicrobial.
Chu S1, Park Y, Locke C, Wilson DS, Cavanaugh JC.
2、Intern Med. 2009;48(7):527-35. Epub 2009 Apr 1.
Efficacy of azithromycin in the treatment of community-acquired pneumonia, including patients with macrolide-resistant Streptococcus pneumoniae infection.
Yanagihara K1, Izumikawa K, Higa F, Tateyama M, Tokimatsu I, Hiramatsu K, Fujita J, Kadota J, Kohno S.
3、サンフォード感染症治療ガイド
4、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)

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