【血栓予防薬】新規抗血小板薬チカグレロル(商品名:ブリリンタ錠)

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H28年9月28日をもって新規抗血小板薬のチカグレロルの製造販売の承認がおりたようだ。これは、クロピドグレル(プラビックス)やプラスグレル(エフィエント)と同様に血小板のP2Y12受容体を阻害し、抗血小板作用を示すいわゆる血液サラサラの薬だ。主に急性冠症候群の抑制、経皮的冠動脈形成術(PCI)実施時の抗血小板療法に用いられる。クロピドグレルは某週刊誌でも売上げ上位だが飲まない方が良いと叩かれていたが、チカグレロルはその同効薬。全く、クロピドグレルを糾弾している暇があったらシロスタゾールに矛先を向けてはどうかと思う(独り言)。さて、チカグレロルの情報をまとめていこう。

チカグレロル(ブリリンタ)の特徴

代表的な特徴について2つ触れる。
1,プロドラッグではない
つまり、作用発現に肝臓での代謝を必要としないため、効果に個人差が少なく効果発現も早い。添付文書によれば、最高血中濃度到達時間は2時間とあり、早期から血栓予防効果を得ることができるとされる。

2、P2Y12受容体との結合が可逆的
血中濃度半減期(T1/2)が8.7時間であることもあり、抗血小板効果の消失が早い。従って1日2回服用となっている。1日2回というのは不便だが、ポジティブに捉えれば出血リスクの高い検査や手術などの前に設ける休薬期間が短くて済むのがメリットである。

欧米におけるチカグレロルの扱い

チカグレロルは米国や欧州において標準薬となりつつある。米国のAHA/ACCによる非ST上昇急性冠症候群のガイドラインでは、抗血小板剤としてチカグレロルを優先する旨の記載がある。

イギリスのNICEガイドラインにおいてもアスピリンとの2剤併用療法の記載がある。NICEという世界最高峰の質をほこるガイドラインに載るというのは、大きな意味をもつことだと思う。

2016年の米ガイドラインアップデートにおいて、DAPT(Dual Antiplatelet therapy:抗血小板剤2剤併用療法)の期間延長も踏まえ、チカグレロルも長期使用を推奨する形となっている。

チカグレロル(ブリリンタ)をめぐるさまざまな臨床試験

上記推奨の大きな契機となったのが、チカグレロルとクロピドグレルを比較した「PLATO試験」であり、同試験ではチカグレロル群で心血管死/心筋梗塞/脳卒中の複合エンドポイントが有意に減少し、総死亡率も有意に低下した(N Engl J Med 2009; 361:1045-1057)。一方で大出血リスクに差がなく安全性も高いとされた。しかし、チカグレロルの製造販売元であるアストラゼネカ社員が評価した群が、CRO(Clinical Research Organization:臨床試験を受託する企業)が評価した群より有利に判定されたのではないかとして、査察が入っている。その結果どうなったかはともかくとして、論文の主要結果は以下の通り。
plato試験結果
この文献は少しトリッキーで、重要なサブグループにおいて、その結果が相反している
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低用量アスピリンと併用時の複合アウトカムはチカグレロル優位であるが,アスピリン高用量ではクロピドグレルが優れるという結果。これは原著論文を読んでいないと、実際に患者に適用する時に間違いかねない。恐い恐い。

一方で、主に日本人を対象として 行われたPHILO試験では、有意差こそ出なかったが心血管死/心筋梗塞/脳卒中の複合エンドポイントの発生がチカグレロル群においてクロピドグレル群よりも多く、大出血も同様だった(Circ J. 2015;79(11):2452-60. )。同試験の主要な結果を下表に示す。
philo試験結果PHILO試験は海外と同じく180mg/日で行われているが、これが過量なのではないかという指摘もある。プラスグレルや抗凝固薬のリバーロキサバン(イグザレルト)などは、海外より低用量で臨床試験が行われているのでその指摘も尤もだ。

なお、PLATO試験の後付け解析でアジア人と非アジア人で大出血や効果の面において差がないか検討されているが、人種間での有意差はなかったことから、人種差とも言い切れないようである(Am Heart J. 2015 Jun;169(6):899-905.e1. )。

アスピリンでいいのではないか?

加えて、心筋梗塞発症後1年以上経過した慢性期の患者21162人を対象に行われたPEGASUS試験(N Engl J Med 2015; 372:1791-1800)
では、抗血小板薬の2剤併用(DAPT)の効果検証が行われ、アスピリン+チカグレロル60mg or 90mg 1日2回 vs アスピリン単独(+プラセボ)の長期服用をした際、心血管死/心筋梗塞/脳卒中の複合エンドポイントが減るかが検討された。

結果は、90mg群7.85%,60mg群7.77%,プラセボ群9.04%で、確かにの両用量ともプラセボに比べて僅かに改善した(90mg:HR 0.85;95%CI 0.75-0.96,p=0.008/60mg:HR 0.84;0.74-0.95,p=0.004)。

安全性の主要評価項目で大出血を検討したが90mg群2.60%,60mg群2.30%,プラセボ群1.06%で,チカグレロルの両用量ともプラセボにくらべ多かった(90mg:HR 2.69;1.96-3.70,p<0.001/60mg:HR 2.32;1.68-3.21,p<0.001)。

また、ATPに構造が類似したチカグレロルでは,徐脈,呼吸困難感などの自覚的副作用の発現リスクが高いことが知られており、実際に呼吸困難は90mg群18.93%,60mg群15.84%,プラセボ群6.38%と高い頻度で発現している(いずれもp<0.001)。試験薬中止に至った呼吸困難は90mg群6.50%,60mg群4.55%,プラセボ群0.79%である。服用初期にしばしば出る呼吸困難が中止を招いているのは問題である。

数値がずらっと並んでイメージしづらいかもしれないが、これは10000人あたり年間40-42件 心血管死or心筋梗塞or脳卒中を予防できる一方で、大出血は10000人あたり、年間31-41件発生しているという計算になる。230人強が年単位で服用してようやく1人のイベントを防げる程度というベネフィットと出血及び呼吸困難リスクのバランスを考えるとメリットが小さすぎないだろうか。また、この試験の除外基準から類推すると出血リスクが低い症例が組み込まれているので、実臨床ではさらに出血リスク増加する可能性もある。有名なDAPT trial(N Engl J Med. 2014; 371: 2155-66.)を踏まえても、長期DAPTの有用性は低いと言わざるを得ないだろう。

2016年7月にはチカグレロルとアスピリンを比較した試験も出ている(N Engl J Med. 2016 Jul 7;375(1):35-43.)。脳卒中もしくはTIAリスクの高い患者がチカグレロルを服用すると、アスピリン服用時に比べて脳卒中/心筋梗塞/総死亡が減少するか検討した二重盲検ランダム化比較試験であるが、各種主要評価項目において群間に有意差がなく、出血イベントなどの安全性評価項目にも有意差がなかった。細かい数値は省くが死亡、脳卒中、心血管死などいずれも有意差がなかった。もはやアスピリンでいいのではないかという話である。執筆時点で薬価基準未収載だが、同効薬のクロピドグレルやプラスグレルに近い薬価になるのだとすれば、アスピリンの10倍はくだらなそうだ。それほど価値があるんだろうか。遺伝子タイプによって効く人がいるなら話が違ってくるかもしれないが。

※2017/3/8追記;バイアスピリン5.6円/錠 ブリリンタ60mg100.70円/錠 同90mg141.40円/錠 

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