【サプリメント】「ブロリコ」というサプリメントについて

Pocket
LINEで送る

始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

サプリメントを評価してみようシリーズ(仮)。がん専門の薬剤師をしている友人が、最近病院で「ブロリコ」なるサプリメントを摂取している患者さんがいると言う。実は、その名前を聞いたのは僕もはじめてではなく、悪性リンパ腫の患者さんで飲んでいる方にお会いしたことがある。良いのかどうか聞かれたので、僕の解釈を以下に記す。

販売会社の説明

当該製品のうたうところは「NK(Natural Killer)」細胞の活性化作用がある」という点だ。プラスして東京大学教授の特許が絡んでいることを強調している。なお、僕があった方は東大教授の特許が関わるという理由だけで服用されていた。

販売ページに書かれているポイントを抜粋すると次の通り。
•ブロリコはブロッコリーの希少成分であり、大きなパワーを持つがブロッコリーをそのまま食べるだけでは排泄されてしまうため吸収できない
•国際特許を取得しているため、ブロリコのサプリを提供できるのは、世界で我々のみ
•東京大学との5年の共同研究により発見された栄養成分である
•イマジン・小方生命研究所の調査によると、β-グルカンの約50倍、メカブフコダインの約60倍、DHAの70倍以上、アサイーの約240倍、プロポリスの1000倍の活性がある

特許文書は公表されているのでみたところ、この「活性」の測定方法がそれにあたるらしい。「1活性=カイコガの幼虫の筋肉が15%縮む量」と定義されている。この指標が果たして有用なのか僕には皆目見当がつかない。厳選したブロッコリーからしか抽出できないため先着100名WEB限定半額ということである。

臨床試験の論文は?

カイコガ幼虫の筋肉が何%縮んでもどう捉えて良いか分からないが、人における試験ではどうなのだろうか。なんと、この手の健康食品では珍しく臨床論文が公表されている。

ブロリコなる成分については具体的な組成に関する記載はない。販売会社によれば、臨床論文は「ブロッコリー抽出加工食品(ブロリコ)の継続摂取によるヒトの自然免疫賦活作用に関する試験」のみである(薬理と治療 Volume 40, Issue 6, 489 – 494 (2012))。

この商品には英語版ページがあり、そこで臨床の論文も公開されている。多くの健康食品メーカーは臨床論文を公表すらしていない(のか臨床試験すらしていない?)のだからそういう意味では親切だ。当該文献を読んでみると、被験者は20名。論文そのものでも、これだけでは結論づけられず多人数での無作為化臨床試験の必要性を指摘している。

試験は健康な成人男女合わせて20名にブロッコリー抽出物(ブロリコ)を4週間毎日服用してもらい、血液検査によりNK細胞をはじめとする免疫系パラメータの数値をみるというもの。結果の測定前に東日本大震災被災による心理的影響を被験者が受けている旨の記載があるなどバイアスはかなりあるが、結果は次の通り。
%e3%83%96%e3%83%ad%e3%83%aa%e3%82%b3%e7%b5%90%e6%9e%9c
副作用報告は16症例中、頭痛6、めまい1、口渇1便秘2と記載があるが、交絡因子の影響もありあてにはならない。様々な良い感想も寄せられているようなので、そちらは販売ページをご参照頂ければ。

臨床試験の結果を効果に結びつける3段論法

本当に東京大学が関わっているのか調べてみたところ、微生物薬品化学教室の関水和久教授が関与しているようだ。氏が主導する産学協同研究のための機関としてゲノム創薬研究所が設立され、ご本人自ら顧問に就任。同氏の研究はカイコガの幼虫を使用した細菌感染症モデルに関するものであり、販売社がうたう自然免疫力アップの検証手段としての有効性は不明であり、カイコガ幼虫の筋収縮の強度比をそのまま他の物質との免疫活性能力の比と転用する根拠もまた不明である。

同教授が提供しているのはあくまで試験方法のみであり、成分の抽出・開発の過程には東京大学の関与はないようである。これは特許の資料を読めば書かれている。一見した広告のイメージとは相反している。

更に、Lancetに掲載された埼玉県立がんセンターによる研究をNK細胞の数値があがったことと関連づけて論じている。同時にLancetが世界的にも権威ある医学誌であることを強調しているが、それは確かにその通りだ(だからと言って優れた文献ばかり掲載しているとは言えないのだが)。しかし、同社の研究はその情報を引用しているのみで関わりはない。

Lancetの論文では、NK細胞の活性を、
男性:42%以下を低活性群、43~58%を中活性群、58%超を高活性群
女性:34%以下を低活性群、35~51%を中活性群、51%超を高活性群
と分けて各群を追跡調査した前向きコホート研究であるが、大まかな結果として、確かにNK細胞活性の低い群は、高活性や中等度活性群の人に比べてがんを発症する相対リスクがやや高かった。細かく論じる気もないが、それなりにバイアスの入る余地の試験デザインではある。

この結果をもってして、「ブロリコの臨床試験で示されたNK細胞の10%上昇という結果は意味のあるものと考えられます」と書かれているのだが論文上は7%程度の上昇で、使用前後はいずれも中活性群に入ることからLancetの研究と関連づけて効果ありということはできない。なお、糖尿病の改善が一部でうたわれているがこの20名の文献ですら血糖値とHbA1cの平均はむしろ上昇しているので論理破綻だ(といっても有意な結果とは言えないが)。

患者さんにどう説明する?

お値段は ¥5962/月 約¥200/日

使用されている方で効果の実感があるのであればあえて否定することはしない。もし飲まれていない方に聞かれたら、あえて勧めることもしない。犬に対するブロッコリーの大量投与は含有されるグルコシノレートによる甲状腺疾患の報告があるが、通常量であれば問題ないとされる。濃縮抽出がうたわれているが、組成及び毒素除去プロセスは不明であるため濃縮が安全かは不明である。なおGMP基準に則っているのはエキスを錠剤化する過程のみであり他はどうか分からない。他で頑健とまでは言わないまでも、これより良いエビデンスのあるサプリメントだってそれなりにあるのだから、あえてこれを選ぶ必然性もない。

【参考文献】
•薬理と治療 Volume 40, Issue 6, 489 – 494 (2012)
•Lancet. 2000 Nov 25;356(9244):1795-9.
Natural cytotoxic activity of peripheral-blood lymphocytes and cancer incidence: an 11-year follow-up study of a general population.
Imai K1, Matsuyama S, Miyake S, Suga K, Nakachi K.

↓ ↓ ↓この記事に共感した、面白かったらこちらをクリック!
dqranking  dqmura

 ご案内

講演、取材についてご相談、お申込み

薬についてのご相談

薬局のお悩みについてご相談

↑トップページに戻る

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

Translate:

アーカイブ

ar

おすすめメディア集

hymkbanner

セールスが苦手だからこそ、出来る!作れる!売り込まないセールス設計とは、お客様から選んでいただける体制を作れればいい。その体制は、あなたのビジネスの「強さ」と「違い」を作り出し、活かすことで構築できる。その構築方法をお伝えしています。

ファーマシストフロンティア

私も連載している人気マガジン。広告によって編集内容が左右される従来の雑誌とは一線を画し、実相を探求したウェブマガジン。必要とされる薬剤師になるための必読書、それが『ファーマシストフロンティア』です。

お問い合わせ

インバウンド003

facebookページ(いいねを押していただけると励みになります!)

PAGE TOP
Translate »