【癌】ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の概論

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ニボルマブ(商品名:オプジーボ)はその高額薬価設定から、大変な注目を浴びている。適切な効果が期待できない低用量で使う悪徳自由診療クリニックが横行している現状もあり、ある意味問題視もされている。今回より同薬剤について、数回に渡り紹介する。

このように高額な薬剤がでると、お金と命の価値について様々な議論が出る。高額療養費を利用すれば、患者は自己負担額上限までの支払いで済み、残りは国から補助が出るから自己負担額は全体の額からすれば微々たるものになる。

C型肝炎の治療薬ハーボニー(これに関してはいずれ調べて記事にする予定)の時もそうであったが、薬剤があまりにも高額だと使用を遠慮する人がいる。「私の命のために、そんな高いものを使わなくて良い。他の価値ある人に譲って下さい」と勇気あることをおっしゃる方もいる。一方で、「自己負担上限が定まっているから、使えるならどんどん使って欲しい」という人がいる。どちらの人に使って欲しいだろうか。そもそも、こんな議論をする事自体どうなのかという気もするが。

果たして、ニボルマブは夢の新薬なのだろうか。確かに作用機序は画期的だと思う。しかしながら、奏功する人もおおい一方、あるタイプの人は逆に寿命を短縮する可能性を孕んでいることは心に留めておかなければならない。その理由は次回の記事にて紹介する。

なぜ、これほどまでに薬価が高いのか

現状の薬価は、20mg1瓶は15万200円、100mg1瓶は72万9849円であるが、これらがそれぞれ7万5100円と36万4925円に引き下げられる予定とのこと。この価格は高額薬剤の多い抗がん剤の中でも、更に突出して高い。現状の薬価では平均的成人男性の体重換算でいうと、月300万円、年間3500万円ほどの薬剤費がかかる。薬剤費のみでそれだが、検査や治療の周辺費用もばかにならないだろう。細かくは薬価の算定方式を参照する必要があるが、ここでは価格を押し上げた大きな理由とされている点を2つ紹介する。

1、新作用機序「免疫チェックポイント阻害剤」
免疫抑制点を阻害して、免疫を高めがん細胞を攻撃するためという機序であることから、当初安全で効果的なのではないかと考えられた。また、日本で最初に発売されたというのも大きかった。

なお、免疫チェックポイントの代表的なものとして、CTLA-4,PD-1がある。CTLA-4阻害剤であるイプリムマブ(商品名:ヤーボイ)と今回取りあげるPD-1阻害剤ニボルマブは既に発売されており、その他にTIM-3,LAG-3,B7-H3,B7-H4,BTLA,VISTAなどの免疫チェックポイントがある。今後、これらの阻害剤も開発される可能性がある(Front Immunol. 2015; 6: 418.)。因みにヤーボイの薬価は50mg、10mlを1瓶で485342円とこれもかなりのインパクトだ。

2、先に適応を取得した悪性黒色腫(メラノーマ)の対象人数が1000人未満と少なかった
売れる母数が少なければ単価を高くしなければならない。希少疾病に対する薬は一般に薬価が高くなる。しかし、後に非小細胞肺がん、転移性の腎細胞がん、難治性のホジキンリンパ腫へと適応症を拡大している。これは恐らく製薬会社が意図した通りの後だしジャンケンではという疑いはある。しかしながら、後に薬価を引き下げられることが決定した。

ニボルマブの「マブ」とはなにか

薬の性質を説明するにあたり、「マブ」とは何かを書いておこう。そもそも、人体の免疫とは、体外や体内の異物やがん細胞を排除するものであるが、これが異常を起こすと自己免疫疾患や腫瘍に繋がる。

では、その異常の元になる分子に結合する抗体を使えば、その反応が阻害され症状が起きないのではないか。という発想で生まれたのが、語尾にマブ(mab)のつく薬だ。Mabは英語のMonoclonal antibody(モノクローナル抗体)の頭文字であり、「単一」を意味する「Mono」と「同じ遺伝子をもつ細胞や個体」を意味する「クローン」を組み合せた用語である。つまり、ただ1種類の遺伝子を持つB細胞から作らせた抗体のコピー (=クローン)を意味する。

現在マブ剤は40種ほど販売されており、そのほとんどは2013年以降に上市している。日本では、2001年に発売されたリツキシマブが先駆けで、それ以降マブ剤は抗がん剤、抗リウマチ薬、家族性高コレステロール血症治療薬などで応用されておりいずれも高薬価が設定されている。

説明だけすると、疾病の原因となる反応を止めるイメージから良いことばかりに聞こえるが、実際には異物監視機能を弱めるために感染症の悪化や癌の増加を助長するケースもある。メリットは大きいが、使い方を良く知っておくことが大切である。

ニボルマブの作用機序

ニボルマブはというと、がん細胞を攻撃するTリンパ球(キラーT細胞)の重要なタンパク(PD-1)のモノクローナル抗体である。これが、PD-1に結合するとキラーT細胞の働きが保護されるため、がん細胞を攻撃する力を失ったキラーT細胞の攻撃能力が復活するという。まさに夢のような作用機序である。(https://www.opdivo.jp/contents/action/)

しかしながら、PD-1に結合してキラーT細胞の活動を抑えるPD-L1は免疫細胞にも発現しているため、癌の抑制にとどまらず、正常の免疫細胞の機能を損なう可能性も孕んでいる。結果、逆に癌の進行、感染症や自己免疫疾患の悪化を招くケースもある。そこで、デメリットよりもメリットが大きい人を見極めて使う必要が出てくる。

次回以降は具体的な臨床試験データについて触れていく。

【参考文献】
1、Front Immunol. 2015; 6: 418.
2、小野薬品工業ホームページ オプジーボ
3、Answers News 1ヶ月300万円超えも―高額化していると言われる抗がん剤、実際どれだけ高くなっている?
4、ニボルマブ 審査報告書申請資料概要

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