早期発見早期治療は善かー前立腺癌スクリーニングー

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先日、集団健康診断をうけた。毎回、検診というのは面倒だなと思う。特別な既往も自覚症状もない人は5年に1回とかにしてはどうだろうかと勝手に思っている(笑)一度、偽陽性で後日再検査受けさせられてやっぱり何もなかったです、という時もあったり、余計なストレスである。

過剰診断という問題がある。

ない病気を「ある」と診断してしまい、そのまま検査を進めたり、治療をしたりでかえって合併症や副作用を招き害になるといった問題だ。(逆にある病気を「ない」と診断して、治療すれば助かったものを、となることもあるのだが)。世の中にはそうした側面には目もくれず安易に「早期発見、早期治療」のメリットばかりを強調して、啓発をする人、そして安易にそれに賛同する人が多いような気がする。

負の側面も知った上での意見なら納得もいくのだけど、本当にそうだろうか。我が国のように病歴も自覚的問題もない人を対象に高頻度で検診を行うことを支持する根拠がどこにあると言うのだろう。100%完璧な検査やスクリーニングは基本的にはなく、MRI、CTといった検査も高性能ではあるが例外ではない。メリットもあればデメリットもある。その上やるとなったらお金もかかる。当たり前だが、そうしたバランスを考えての判断が大切だ。

ここで、ある程度年のいった男性なら行われることがある、前立腺癌のスクリーニングに用いられるPSA(前立腺癌特異抗原)の検査を例にあげてみよう。実はこの検査を行わない方が良い、とする説がある。

ここで、無条件に次のように考える人がいる。
「スクリーニングして早期発見することにデメリットなどない」
「早期発見早期治療がベスト」
「怪しきはひっかけてキッチリ更なるを検査した方が良い」
それは一面的すぎる見方だ。物事には常に二面性がある。色々な国で、PSA検査に対して一定の方針を示したガイドラインと呼ばれるものがあるが「実はそうとも言えないよ」と言っているのがカナダの予防医療対策委員会である。

カナダ予防医療対策委員会による前立腺がんスクリーニングに関するガイドラインでは、PSA検診に伴う害(合併症,偽陽性所見,過剰診断など)を示す多くのエビデンスがある一方で,死亡率の低下を示す明確な根拠がないと指摘している。

その上で「前立腺がんの既往歴がない全年齢層の男性にPSA検診を推奨しない」と明記している。

この是非をめぐっては,日本を含めた各国ガイドラインで見解が一致していないが、カナダのガイドラインでは米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)と足並みを揃えている

カナダのガイドラインに関して、ビジュアル的に分かりやすい資料がホームページに充実しているのだが、ガイドラインの内容を凄く簡略化して説明すると次のような内容となる。

「PSA検査で1000人スクリーニングしたとすると、その内720人は陰性と出る。102人は前立腺癌と診断されるが、その内33人は合併症や死亡を招くことをなく寿命を全うできる良性前立腺癌である。それにも関わらず癌進行への懸念から多くの男性は治療を選択して副作用が出る。178人はPSAテスト陽性と出るが、その後追加検査(生検)によって前立腺癌ではないと判定される。178名のうち4名は生検(患部の一部をメスや針でとって検査する)によって、入院レベルの重度感染症や出血を起こす。1000名のうち5人はPSAテストの有無に関わらず死亡する。1名がPSAテストにより死を免れる。」
これが図示されたものが、公開されている。
canadian_prostate
平たくいうと1000人検査してPSA検査のおかげで救われるのが1人、重度の害を被るのが4人。デメリット>メリット じゃない?ということになる。

前立腺癌というのは「癌」と名がつくものの予後が良いので、無治療という選択肢が成立しうる。

スクリーニングのメリットは
「スクリーニング受けなかった場合よりも前立腺癌による死亡率が0.1%下がる」

デメリットは
「生検で感染症、血尿、最悪の場合死亡する可能性があること、結果として前立腺摘出処置などの治療を行うことになれば、尿失禁や勃起不全の可能性が大きく高まること。他の術後合併症としては感染症、追加手術、輸血及び死 がありうること」である。

現実には何かの機会で既にPSA検査を受けていたいう例もあるだろう。他にそれなりの理由をもって検査を推奨するという論文もある。だから見解が各国で一致しない。とはいえ、こういう確率的なものはある程度データが出ている。そうした情報が提供された上で検査を受ける当人の価値観、背景を踏まえて判断することが大切だろう。

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