【心不全/心房細動の薬】ジゴキシンは使用するに足るエビデンスがないのか

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最近ジゴキシンという薬は使用するに足るエビデンスがないということが、一部メディアで記事になっていたと話を聞いた。どのメディアかは知らないのだが、医師が書いた記事だそうだ。それで、処方削除になる例が増えているのだとか。実地経験からしても確かに減っているかも、と思った。

ジゴキシン自体はとても古くからあり、心房細動や心不全の患者によく使われている有名な強心薬だ。そんなにベネフィットのない薬だったのだろうか。現在ではβブロッカーなど心不全に対する選択肢があり、単純に使用頻度が減っただけかなとも思ったが実際に調べてみることにした。

正常洞調律の心不全患者の死亡率を減らさない

一例として、ジゴキシンとプラセボのランダム化比較試験がある。ここでは、正常洞調律の心不全患者の死亡率を減らさないと結論された。ジゴキシンの用量は年齢、性別、体重、血清クレアチニンなどの要素から0.125 mg, 0.25 mg, 0.375 mg, 0.5 mgのいずれかが選択され、組み入れられた患者のほとんどはアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を服用中であった。平均追跡期間37ヶ月の中で総死亡率、心血管死、心不全死いずれにおいても有意差がないうえに、ジゴキシンの毒性が疑われるケースもあり(ジゴキシン10% vs. プラセボ4% p < 0.001, NNH 16)、使用のメリットは少なそうに思われた(DIG trial (ancillary group) (Circulation 2006 Aug 1;114(5):397))。

心不全患者の入院率や臨床的な悪化は減らせる

一方で、心不全患者の入院率や臨床的な悪化を減らすのではないかという、13個のランダム化比較試験を含めて解析したコクランのレビューは存在する。7262名の大人を含む4試験の解析で、オッズ比0.68 (95% 信頼区間0.61-0.75)、プラセボ群の入院率33%に対するNNTは10-17、臨床的悪化に関しては1234名を含む12試験の解析でオッズ比0.31 (95% 信頼区間0.21-0.43)、プラセボ群の臨床的悪化18%に対するNNT8-11とまあ良さそうな結果に見える。しかしながら、レビューの中には古い試験もあり、現代使われているβブロッカーなど他に心不全に対して有効な選択肢がない条件下での情報もあるため実際のところ最良の治療法であると言い切ることはできない。ただ、そうした標準治療薬が使えない場合の選択肢としてはありうるというところだろう(Cochrane Database Syst Rev 2014 Apr 28;(4):CD002901)。

観察研究とランダム化比較試験で相反する結果

観察研究では、ジゴキシンの服用で逆に心不全患者の死亡率が上がるのではないかという研究がある一方で、よりバイアスの少ないランダム化比較試験の結果からは死亡率を上昇させる訳ではないことが示唆されている。ランダム化比較試験のみに限っていえば総死亡のリスク比は0.99(95% 信頼区間 0.93-1.05)と有意な差はない。死亡率上昇か差がないか何れにしても、あえて薬剤を使う必要性は乏しいということになる。なお、心不全患者や心房細動患者の入院率においてやや減少傾向が見られた。しかしながら、長期アウトカムの改善効果の根拠は薄弱である(BMJ 2015 Aug 30;351:h4451)。

心不全/心房細動の患者の死亡率を微増させるとする研究すらある

また、心不全/心房細動の患者の死亡率を微増させるのではないかというシステマティックレビューもあり、総死亡をエンドポイントとした1993年〜2014年に発表された試験を踏まえた解析によるとジゴキシンを使っていない群に比べて使用している群の死亡率が高く、例えば19試験患者数総計326426名の解析では、調整ハザード比は1.21(95%信頼区間 1.07-1.38)と微増している(Eur Heart J 2015 Jul 21;36(28):1831)。

結論

入院や一時的臨床的増悪は減らしうるが、長期予後を改善するとする根拠に乏しい。β遮断薬に優先して使う必然性はなさそうである。相互作用の多さ、治療域の狭さ、副作用などのデメリットに対してメリットが小さい。ただし、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全の悪化時などβ遮断薬が使えない時の次の手としては使いうるかもしれない。

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