【風邪薬】いわゆる「風邪」に対する治療法のエビデンスをまとめて紹介しよう

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いわゆる「風邪」を予防し、治療するための最善の方法については兼ねてから様々な議論がある。

冷やして熱を下げる、温かい蜂蜜とレモン、エキナセア、ビタミンC、アセトアミノフェン、鼻づまり薬、喉の炎症どめ、蒸気吸入など。それらが正しい対処かはともかく、実に多くのことが試みられている。しかしながら、厳密な方法で検証された試験で優れた効果が示されたものは現時点ではないと思われる。

一般的な風邪はウイルス性であり、潜在的には200種超のウイルスが関与しているのではないかと考えられている。ライノウイルスは最も一般的にありがちな原因で、大事に至ることこそないものの1〜2週間続く場合もあるので仕事や学校通いをする上では厄介ではある。

その症状として、鼻づまり、喉の痛み、腫れ、咳、倦怠感、微熱などが出ることが特徴的だ。因みに風邪を引く回数は、通常の成人は平均年に2〜4回、子供は8〜12回とも言われている(UpToDate;Epidemiology clinical manifestations and pathogenesis of rhinovirus infection)。

米国での統計によれば、全人口の風邪発症回数の総計は毎年10億回にも達し、それにより学校を休む日数総計は6000万日、休職日数総計は5000万日、250億ドルにも及ぶ経済損失があるといわれている。まったく、とんでもなくコストのかかる病気だ。その上、米国では市販薬に流通など諸費用も含め50億ドルものお金が注ぎ込まれているという推計もある(参考;Center for Disease Contorol)。

そんな有病率の高さにも関わらず、一般的な風邪の治療法は医学では解明されておらず、治療は症状緩和に焦点が置かれ、確実に予防できる方法もわかっていない。

風邪に対する治療法の効果を検討したエビデンスは数多く存在するが、今回はしばしばエビデンスの最高峰に位置付けられるコクランシステマティックレビューで検討された各治療法の効果を紹介する。

ビタミンC

ライナス・ポーリング博士(ノーベル賞受賞)が1970年代にビタミンCが風邪を予防し、症状を緩和すると結論づけたプラセボ対照比較試験を発表した際には大きな反響があったという。それ以降、さらなる研究が行われ2013年には29個もの臨床試験、総計11306名もの患者を含めたコクランのレビューが発表されている。残念ながら、そのレビューではポーリング博士の発見を裏付ける結果は得られなかった。一般的な人々が、定期的にビタミンCを摂取することにより風邪発症時の症状持続時間と重症度はやや減少したものの、風邪の発症率自体は減らなかった。

しかしながら、マラソンランナーやスキーヤーのように短期間に激しい運動をすることがある人のグループでは、風邪のリスクを半減させるという結果が出ている。風邪の症状が出た時に、高用量のビタミンCを摂取する方法も検討されたが、症状の持続時間や重症度に対する効果について一貫性のある結果が得られておらず、その効果のほどはまだ結論づけることはできない。

参考までに、ライナスポーリング博士の名前自体はオーソモレキュラー(分子整合医学、分子矯正医学)の分野で有名であるが、Linus Pauling Instituteというホームページでは栄養療法に関する様々な情報が提供されているのでその分野に興味がある方は目を通されても良いかと思う。

経口抗ヒスタミン剤(アレルギー止め)/鼻炎薬/鎮痛薬の組み合わせ

この組み合わせを安易に風邪に対して処方する医師は未だ多く、市販薬でもこれらの全成分を含んだ製品が数多く販売されている。PL顆粒などもこれに類する。2012年に発表されたコクランのシステマティックレビュー (27の試験、5117名の被験者を含む)においては、症状緩和という観点からは大人子供ともに効果があり、症状回復の補助としてのメリットはあるとしている。最も効果的な組み合わせは抗ヒスタミン剤+鼻炎薬(充血除去剤)の組合せであるが、眠気、口渇、睡眠障害、めまいなどの副作用とメリットのバランスを考慮する必要がある。

アセトアミノフェン(商品名;タイレノール、カロナールなど)

総被験者数758名を含む4つのランダム化比較試験を統合した2015年のコクランレビューでは、アセトアミノフェンにより鼻づまりや鼻水を緩和する可能性があるとされたが、くしゃみ、咽頭痛、咳、倦怠感など他の症状改善に関しては有意な効果が見出されなかった。解析に含まれた試験の質は低い(low)〜中程度(moderate)で、アセトアミノフェンがどの程度症状改善に寄与するかは議論の余地があり、強く推奨できる選択ではない。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)

2015年のコクランレビュー(9件のランダム化比較試験、1069人の参加者)では、NSAIDsにより痛みが緩和されるものの、劇的に効くわけではないとされた。もちろん過敏症や胃壁の障害などの副作用との関連はあった。

抗ヒスタミン剤(アレルギー止め)

2015年に発表された総計4342名の患者、18の臨床試験を含めたコクランレビューにおいて、短期間で全体的な症状が改善された割合はプラセボ(ダミー錠剤)を摂取した参加者の38%に対して、抗ヒスタミン剤を服用している患者では45%だった。3日目以降は明らかな効果は見られなくなり、逆に眠気などの副作用のリスクが高まるという結果であった。


抗生物質

先に述べたが、一般的な風邪はウイルス性であるため抗生物質では効果が得られない。細菌性の感染症に対しては効果を示すので、細菌性かウイルス性かの鑑別診断が1つのポイントである。

2013年に発表されたコクランレビューにおいて、風邪や化膿性の鼻炎に対する効果が検討されたが、当然の如く抗生物質は有効ではないと結論された上に副作用リスクがあるという結果だった。因みにウイルス感染で免疫力が落ちた時に二次感染するかもしれないからと抗生物質を処方するのも大抵根拠がない。抗がん剤などで白血球が低下しているとかならわかるのだが。

鼻粘膜充血除去剤(鼻炎薬)

2016年に発表されたコクランレビューによれば複数回投与により、鼻詰まり症状を改善するのに役立ちそうである。とはいえ、こと風邪に対してどこまで有益かは微妙なところである。規定の投与スケジュールを超えずに使うことが大切だ。

ステロイド

上気道感染症に対して強力な抗炎症作用を持つ成分であるが、2015年に発表されたコクランレビューによれば鼻腔内の局所ステロイドでは一般的な風邪の症状を緩和することができないとされた。しかしながら、このレビューに含められたのは3件の臨床試験のみで、質の高い研究による検証がされているわけではない。

エキナセア

エキナセアは、ヨーロッパや北アメリカで広く使用されてきているが、最近では日本においても比較的ポピュラーになってきている。2014年のコクランレビューでは、いくつかのエキナセア製品は風邪の治療にプラセボよりも有効であると結論しているものの、臨床的な効果の根拠としては弱い。僅かながら予防効果があるとするエビデンスはあった。

蒸気吸入

蒸気を吸入すれば、粘液がより効果的に排出され、風邪のウイルスを効率的に除去できるような気がしてしまうのだが、2013年に出た6つの試験、総計394名の被験者を含めたコクランレビューでは、この介入で一貫したベネフィットなしと結論された。

ニンニク

2014年のコクランレビューでは146人の参加者を含む単一の試験を検討しており、3ヶ月間毎日ニンニクを摂取すると風邪の発症を防ぐことができうるという結果が出ているが、エビデンスの質は低い。因みに実際にニンニクを食べ続けたわけではなく、ニンニク成分を含む錠剤を飲んで試験したもの。

ワクチン

風邪の潜在的な要因であるかもしれないアデノウイルスに対するワクチンの効果を検討した2013年のコクランレビューがある。この研究1つだけなのだが、一般的な風邪の予防効果においてワクチンとプラセボで有意差はなかった。

さいごに

はじめに述べたように、症状緩和薬は当座の辛さは楽にするかもしれないが決定打ではなく、ワクチンも含め有効な予防法は確立していない(個人レベルでこれが良いというのは沢山あるだろうけど)。栄養療法など複数成分を検討するものは交絡因子がいくらでも入るので客観的試験は困難である。漢方薬もありうるが、基本的に症状が極度に辛くなければ特に何もせず休んで経過を見るのが妥当だろう。

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