【C型肝炎薬ハーボニー】偽造医薬品(Counterfeit drugs)のインパクト

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ハーボニー配合錠の偽造品(Counterfeit)が流通して大変な問題になっている。今まで正規ルートでの偽造医薬品流通が日本で見られなかったことから、一般に関心をもたれることが少なかった印象はある。10年程前、薬学部の友人が卒論で偽造医薬品をテーマにして調べていたが当時そこに関心を持つ学生はかなり少数派だったように思う。

しかしながら、海外では勃起不全(ED)の治療薬、抗がん剤、生活習慣病の薬、抗生物質など多くの偽造医薬品がすでに流通している。製薬協のホームページによれば、その流通量は750億ドルにも達し、途上国では医薬品流通量の10〜30%は偽造品であるといわれている。

偽造医薬品では治療効果が得られず致命的な結果を招いたり、予期せぬ副作用を起こすリスクもある。含有量を落とした抗生物質の偽造品なら薬剤耐性の問題が出うるなど、あらゆる健康被害のリスクが想像できる。

ハーボニー偽造品流通問題の衝撃

今回のハーボニー偽造品で衝撃だったのは「処方箋医薬品で起こった」ことだ。偽造医薬品を摑まされることは、正規卸から医薬品を購入すれば通常起こり得ないことであり、日本国内で起きたのは初である。医薬品業界に携わりこのかた、これ以外に聞いたことがない。

一方で、インターネット上の取引であれば、海外からの輸入品を扱う店も多く偽造品をつかまされる可能性はある。特に勃起不全の薬は有名で、バイアグラを22個のインターネットサイトから購入して成分分析したところそのうち77%は偽造品だったなどという話もある。製造販売元のファイザーの調査結果の要旨だけなので、どこまで正確かはわからないが。

海外に所在地のある日本向け販売サイトからの買い上げ調査によれば、ネット入手の勃起不全治療薬の約6割が偽造品だったとする調査結果もありそのリスクは高い。

更には抗がん剤のアバスチン(ベバシズマブ)の偽造品が米国で流通していたことが2010年大きな話題となったこともある。IMSジャパンの調査によれば、2016年の売上高(薬価ベース)上位の医薬品は1位ハーボニー配合錠(2960億4900万円)、2位アバスチン(1136億6400万円)、3位オプジーボ(1079億2500万円)、4位ネキシウム(1031億5200万円)、5位ソバルディ(976億9900万円)であり4位のネキシウムを除いては超高額薬が並んでいる。スイス、イスラエルでもハーボニー偽造品流通の報告があり、ソバルディも最初パキスタンで偽造品が発見されている

偽造医薬品の製造コストは低く、利益率は高い。上記の4位を除く4つの医薬品は単価が桁外れに高い薬剤で偽造品を流通させれば高い利益率が出る。錠剤タイプは特に保管や輸送が簡単で、医薬品の種類が多いこともありすぐに偽物とわかりづらいというのもある。そこにきて今回のハーボニー事件である。

偽造医薬品の様々な手法

偽造薬には様々な手法があり、単純にパッケージングやラベルを変える、異なる錠剤を入れる、有効期限を過ぎた正規品に偽の日付をつける、表示と異なる有効成分を入れたり、有効成分量を減らして入れたりするなど多種多様である。また、全ての偽造品を調査して、出元を突き止めストップするのは困難とされている。海外では組織的に大きなバルクで作っているところが差し押さえられたり、日本では現金問屋や組織暴力団による偽造医薬品ビジネスの摘発事例があるという(YAKUGAKU ZASSHI 134(2) 203―211 (2014) )。

最初は正規品を供給して取引先の信用を得た上で、徐々に偽造医薬品に切り替えるという巧みな手段をとる偽造医薬品業者もあるそうである。賭け事でも小さな勝ちを相手に与えて、最終的に大きく剥ぎ取るとか、詐欺でも小さな真実を織り交ぜて信用させ嘘に転化させていくというのは常套手段である。その過程は巧みで、こうして言葉の上では常套手段と分かっていても当事者は気づかず騙されることだってありうる。詐欺とはそういうものだ。誰も騙されるなどと思って偽造品を手にしたり、インターネットで購入するわけはない。

偽造医薬品から想定されるリスクとその対策

偽造医薬品の流通は製薬メーカーにとってブランドイメージの低下やいわれのない訴訟を起こされるリスクが生じるばかりか、有効かつ安全に必要な患者に薬を届けられるなくとく使命をも果たせなくなるリスクを孕んでおり、大きな脅威である。また犯罪組織の資金源となるのも問題である。製薬メーカーや流通業者は偽造薬の被害を抑えるために、トレーサビリティや認証技術などの対策に多くの資金を投じている。

その防止策として、ホログラム、特殊インク、UV発行、マイクロ文字、2次元バーコード、マイクロチップなどがある。筆者は10年程前に米国最大の医薬品卸であるMckessonの本社を訪れる機会があり、そこでこうしたマイクロチップ技術の存在をはじめて知りこんな高度な技術があるのかと驚いた記憶がある。

また、製品に関する情報を書き込んだRFID(Radio frequency identification)チップを医薬品包装に組み込み、それを追跡する仕組みもある。RFID自体は交通系ICカードに組み入れられている技術で、その中に情報を書き込むことができるのでどこで何をしたか追跡できる、即ちトレーサビリティーを確保するためによく応用される。近年では、薬に二次元バーコードを書き込める技術も出てきている。

航空機や原子力発電所の部品、食品などでも何らかのトレーサビリティーシステムが導入されている例が多くあり、安全性を重視する業界では特に重要視されている技術だ。技術以外で人ができる対策としては、調剤薬局、ドラッグストア、病院などでも正規卸から納入し、納品時に検品をすることはもはや必須だろう。

以前、中国人の友人が「本国では偽造医薬品が流通しているから、基本的に薬をあまり買わないけど日本はそういうのがないから安心して買える」という趣旨のことを言っていた。しかし、99%完璧でも1%偽物が入れば信頼が失墜する。100-1=0という等式が成り立ちうる業界なのだ。日本では今まで正規ルートの偽造医薬品流通が発覚していなかったので、社会的関心が低かったのかもしれない。偽造医薬品という概念が世間に知れ渡り、新たな火種になるのか防止の意識が上がるのか、その後者であると良いと思う。

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