【相互作用】忘れ去られがちなアセトアミノフェンとワーファリンの相互作用

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ワーファリンは、ビタミンKの拮抗剤にあたるが、不整脈から誘発される血栓塞栓症予防を主な目的として極めて多くの人に使われている。使用に際しては多くの制限があり、納豆、クロレラなど高カリウム含有食品のみならず薬物間での相互作用も多く知られている。抗生物質、抗凝固薬、抗血小板剤、そして非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などに影響される。

NSAIDsは市販薬でも入手可能なポピュラーな成分で、ロキソニンやイブプロフェンに代表されるグループだが、血小板凝集阻害作用を有することが知られている。これが、消化器系の有害事象の起きやすさに寄与している。

一方でアセトアミノフェンも解熱鎮痛薬として世界的にポピュラーな成分で、その安全性の高さからNSAIDsよりも好んで使われるシーンが多い。というわけで、ワーファリン服用患者がアセトアミノフェンを併用している方は珍しくなく、実際それでほとんどの場合問題ない。感覚的にはワーファリンとNSAIDsの併用には気をつけても、アセトアミノフェンとの併用には注意を払わない方が多いように思う。

ワーファリンとアセトアミノフェンの併用で重篤出血をきたした報告

ところが、ワーファリン服用患者が中〜高用量のアセトアミノフェンを数日併用してINRが治療域を大幅に超え、出血イベントを起こした症例報告は意外にある。具体的には歯肉からの出血、血尿、後腹膜血腫、消化管出血などである。

極端な例だとINRの数値が4.0~16.39にも及び、プロトロンビン時間は96秒にも及んだ症例すらあった。血液が凝固するまでの時間は通常10〜13秒程度であるから、これは明らかな異常をきたした例である。INRについては“ワーファリン”の記事で解説した。
ただし、薬剤を中止後は約1週間強でINRが回復している。もちろん、危険な出血傾向が出た場合は、ワーファリンの作用に拮抗するビタミンK and/or 新鮮冷凍血漿を投与されている(Pharmacotherapy. 2011;31(6):591–7)。

併用で出血傾向を助長するのではないかとする様々な研究

症例報告だけではどうかという向きもあろう。2005年には二重盲検クロスオーバー試験が行われている。ワーファリンを継続的に服用している11名の患者が、アセトアミノフェンまたはプラセボ1gを1日4回に分けて15日間服用して、ウォッシュアウト期間を設けたのちにそれを逆にして結果を見たものである。結果、アセトアミノフェン服用時のINRの平均最大上昇幅は1.04で、プラセボでは0.20であった(Br J Clin Pharmacol. 2005;59(3):371-4)。

更に追加で9名の患者を組み入れたところINRの平均最大上昇幅はアセトアミノフェンで1.20、プラセボで0.37であり、血液凝固因子II, VII, IX, Xの活性低下が見られた。ただし、この試験では出血イベントの問題の報告はなかった(Haematologica. 2006 Dec;91(12):1621-7)。

また、プラセボ対照ランダム化比較試験もある。ワーファリン継続中の患者45名をアセトアミノフェン2g/日、アセトアミノフェン3g /日、またはプラセボの群に2:2:1の比率で割りつけ、2gおよび3g /日を服用した患者では、INRの平均最大増加はそれぞれ0.70および0.67であった。なおINRが3.5を超えた場合には治療を中止している(Eur J Clin Pharmacol. 2011;67(3):309-14)。

2015年には7つのランダム化比較試験を含むメタアナリシスが発表され、ワーファリンを含むビタミンK拮抗薬を服用中の患者が1.3〜4gのアセトアミノフェンを服用した場合の影響が報告されている。併用した患者の平均INR上昇率は0.6であった。この試験では、INRが不安定な有する患者は除外され、INRは試験を通して慎重にモニタリングされた。少数ながら出血傾向に寄与する可能性が示唆された(Thromb Res. 2015;135(1):58-61)。

なぜワーファリンとアセトアミノフェンの併用で相互作用が起きるのか

なぜ、こうした相互作用が起きるのだろうか。添付文書には機序不明と書かれているのだが、いくつかの説が唱えられている。通常、アセトアミノフェンがCYP2E1による代謝を受けると毒性代謝産物であるN-acetyl-p-benzoquinone-imine (NAPQI)ができるが、それは肝臓中のグルタチオンの抱合をうけ速やかに除去される。ここで、アセトアミノフェンの服用量が多かったり、糖尿を患っていたりするとNAPQIが蓄積しやすくなる。有名なアセトアミノフェンによる肝障害の原因だ。

NAPQIは、ビタミンK依存性カルボキシラーゼおよびビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を破壊することから、複数のポイントでビタミンKサイクルを阻害する可能性がある。他のメカニズムとしては、 peroxynitriteの生成、それに続くVKORの不活性化、ならびにCYP酵素によるアセトアミノフェンによるワルファリン代謝の競合的阻害といった説が唱えられている。

相互作用を踏まえて結局どうするか

昔から報告のある相互作用であるが、実際のところ臨床的にどの程度影響を及ぼすかのエビデンスには乏しい。重大な出血などのアウトカムを検討した研究が見当たらないので、両薬剤を服用している患者に対して敢えて強く注意するほどのものではないかと思う。アセトアミノフェンを継続的に高用量で服用している場合は注意を促した方が良さそうだ。そして、こうした影響の可能性を踏まえINRをモニタリングする方が賢明ではあろう。

【参考文献】
1、Effect of acetaminophen on international normalized ratio in patients receiving warfarin therapy. Hughes GJ, Patel PN, Saxena N.
Pharmacotherapy. 2011;31(6):591–7
2、Paracetamol: a haemorrhagic risk factor in patients on warfarin.
Mahé I, Bertrand N, Drouet L, et al.
Br J Clin Pharmacol. 2005;59(3):371-4.
3、Interaction between paracetamol and warfarin in patients: a double-blind, placebo-controlled, randomized study. Mahé I, Bertrand N, Drouet L, et al.
Haematologica. 2006;91(12):1621–7.
4.Interaction between acetaminophen and warfarin in adults receiving long-term oral anticoagulants: a randomized controlled trial.
Zhang Q, Bal-dit-Sollier C, Drouet L, et al.
Eur J Clin Pharmacol. 2011;67(3):309-14.
5. How safe is acetaminophen use in patients treated with vitamin K antagonists? A systematic review and meta-analysis. Caldeira D, Costa J, Barra M, Pinto FJ, Ferreira JJ.
Thromb Res. 2015;135(1):58-61.

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