新薬の有効性は既承認薬より優れるか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

新薬の有効性は既承認薬より優れるか

よくこんな風に誤解している人がいる。
「新薬は既承認薬との比較試験を経て、有効性・安全性がより優れていると認められ、承認される」と。

何故、誤解かというと
1つに、新薬承認試験はプラセボ(偽薬)と比較することが多いこと
2つに、最近は同じ効能の既に承認されている薬に対しての非劣性(少なくとも劣ってはいない)を
    証明するための試験が多いこと

が理由にあげられる。
近年、非劣勢試験が行われた例としては
ネシーナ(血糖降下剤)、プラザキサ(血栓予防薬)、タケキャブ(胃酸分泌抑制薬)などがある。

つまり、古い薬に対して新しい薬の優越性が証明される事例は例外的なことなのである。
さらに検証の対象となるのはあくまで有効性で、安全性の優劣については、
症例数の限界もあるため、臨床試験では検証できない。

こうした臨床試験では、様々な有害事象(原因が当該薬かどうかにかかわらず、好ましくないイベント)がデータとして収集され、統計解析の対象になる。
とはいえ、後付け解析なので、交絡因子の影響は決して排除できない。

従って、多くの場合、新薬のリスクと利益のバランスが、
古い薬よりも優れているかどうか、承認前には分からない。
つまり、新しい薬には「未知の部分」が多いのである。

古い薬の例をあげよう。1920年代に発見されたペニシリン。
未だに使われていて、どのくらいの人に使われたのだろうか。
数えきれない程の使用実績がある。
我々はペニシリンについて未知の効能とか副作用をほとんど期待できない。
もちろんペニシリンに副作用はある。
しかし、全ての医薬品には副作用があるわけで、副作用があることそれ自体は大きな問題ではない。

副作用の有無よりも「どの副作用が誰にどのくらい起きるのか」、
そして、「目の前の患者がそのリスクを上回るくらい、その薬を必要としているか」が大切なのだ。

悪癖は予め分かっていれば悪癖ではないのだ。
クスリはリスクなどというが、利益がリスクを上回ることが使用の原則なのは言うまでもないこと。

しかし、新薬だとこの点が難しい。
上記のように、リスクと利益のどちらが大きいかがはっきりしないことが多いのだから。

それもあって、国は新薬には発売後1年間処方日数の制限をつけて、
短い使用期間で頻回医師の元を訪れて、副作用や効果をモニターするようにしむけている。

不可知のリスクを覆す程、新薬が必要で、既存の治療薬では満たせないニーズがあるなら
新薬を使えば良いと思う。
ただ、最近承認されてくる新薬の多くは、本当に必要とされて活躍していることが
とても少ないように思う。

単純に特許が切れていない新薬の方が製薬企業が儲かるし、
彼らのマーケティング通りの処方行動をする(無自覚的に不勉強な)医師が多いので、
沢山処方はされるのだけど。

世の中には値段が高くて新しい薬と同等かそれ以上の効果を示す古くて安い薬が山ほどある。
血圧降下剤しかり、血糖降下剤しかり、血栓予防薬しかり。

ジェネリック医薬品の話ではないが
「あなたの飲んでいる薬には、同等の効果で遥かに安い薬がありますよ」という例は山ほどある。

「他人の処方にケチをつけて患者さんを混乱に陥れるのは良くない」とも思うので
それを言うこともないのだけど。

薬は新しければ良い ではない。

薬の専門家とみなされる医療者の見解が最終的に広くメディアや一般市民の感覚に影響する。

「新しい薬の方がなんとなく良さそうだから」という「感覚」で処方するレベルでは、
患者をリスクにさらすだけだし、その感覚でよしとする風潮が患者にも広がってしまう。

もちろん優れた新薬もあれば、それでなければ治療できないものもある。
しかし、「新薬では使用経験の少なさから、未知の欠陥が露呈する可能性が高い」という問題点は
十分に理解されるべきである。

そんな当然のことを、患者や一般市民に伝えるのも、消費者を守る立場にたった
プロフェッショナルの大切な使命の1つだと考えている。

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