【坐骨神経痛、神経性疼痛】プレガバリン(商品名:リリカ)は坐骨神経痛に対して効果なし

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プレガバリン(商品名;リリカ)は坐骨神経痛に対してベネフィットなしとする論文がNew England Journal of Medicineに掲載された。プラセボと比較して、中等度〜重度の坐骨神経痛からくる足の痛みの強さを軽減させないとするランダム化比較試験だ。

オーストラリア、シドニー大学のGeorge Institute for Global Healthの研究者らによって行われた臨床試験である。現時点で、坐骨神経痛に対する有効な治療法のエビデンスは限られていので、良い結果が出れば大きな福音となり得たのだが果たしてそうはならなかった。

坐骨神経痛は、下肢の痛みを伴うことが特徴的で時に背中の痛み、感覚麻痺、衰弱、反射異常などを起こすこともある。そうした症状は、通常の神経性疼痛と異なる部分も多く何が有効なのか特定されるに至っていないように思う。

プレガバリンに関しては、帯状疱疹後の神経痛や糖尿病性末梢神経障害を含むいくつかのタイプの神経性疼痛の軽減にある程度有効であるとする試験は過去にあった中で、今回の試験Pregabalin in Addition to Usual Care dor Sciatica(PRECISE)がデザインされた。名前の通り、通常の坐骨神経痛のケアに加えてプレガバリンを用いて、その効果、安全性そして費用対効果を検討したものである。

209名の患者がランダムにプレガバリン(1日150mgから開始し、最大用量1日600mgまでとした)もしくはプラセボに割り付けられそれぞれ8週間服用している。ほぼ全例が割り付け時のまま解析に組み入れられている。Intention-to-treat解析。

プライマリアウトカムとして、8週時点と52週時点での脚の痛みの強さが設定され、10ポイントのスコアリングで評価された(0が痛みなし、10が考えられうる最悪の痛み)。

結果として、いずれに時点においてもプレガバリンはプライマリアウトカムである脚の痛みの及びセカンダリアウトカムとして設定された障害の程度、背部痛の強さ、生活の質などの尺度においてプラセボに対する差が示されなかった。

第8週時点で、未補正の脚の痛み強度スコアはプレガバリン群で3.7、プラセボ群では3.1
第52週時点で、未補正の脚の痛み強度スコアは、プレガバリン群で3.4、プラセボ群で3.0

そして、もちろんプレガバリン群で副作用が多かった。

有害事象はプレガバリン群で227件、プラセボ群では124件が報告されている。表を参照して頂くとわかるが、特にめまい(Dizziness)がプレガバリン群で多くの患者に見られた。

因みに、プレガバリンが自殺念慮に関わるのではないかということ報告が過去にあるのだが、この研究ではプラセボと比較して自殺のリスクが高いことは示されなかった。ただ、この研究はアウトカムとして自殺のリスクを検討できるだけの検出力がないので、本試験の結果を持ってそれをどうこう語ることもできない。それを主解析としているわけではないのだから。もちろん、自傷行為などをする傾向がある患者に対する処方に注意を払うに越したことはないだろう。

これとは別に以前行われているプレガバリンとガバペンチンに関する研究においても、両者は慢性腰痛に対してプラセボ以上のベネフィットは示されていないので、この研究結果は発症3ヶ月以内の急性の坐骨神経痛も含めて、その過去の研究結果の延長線上にあるということを示したような印象を受ける。

しかし、なぜプレガバリンの効果が示されなかったのだろうか。単純に坐骨神経痛に無効であると解釈しても良いだろうが少し考えてみる。まず、被験者のおよそ80%が過去3ヶ月未満発症の急性坐骨神経痛でその内、発症後2週間以内に患者の1/3が、3ヶ月未満で3/4が無治療で自然に痛みが解消しているというのがポイントのように思う。そもそも坐骨神経痛自体が自然に治るものであるという部分が大きいのだろう。

この試験では脚の痛みのスコアが8週までに両群で約50%減少しているので、自然に治ったものと捉えれば納得のいくことだ。とはいえ、この試験デザイン自体はプレガバリンによって得られる恩恵の可能性を排除するようなデザインにはなっていないので、やはり坐骨神経痛に無効である可能性が高いと捉えるのが妥当であろう。

また、ベースラインで見ると22〜34%に神経性疼痛があるようである。基本的に侵害受容性の痛みと神経性疼痛はメカニズムが異なっており、通常プレガバリンは侵害受容性の痛みには無効である。この結果は、それを裏付けているようにもとれる。逆に侵害受容性の痛みに有効な非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は神経性疼痛に作用上無効と考えられており、実際に神経性疼痛にNSAIDsが効果なしとするコクランシステマティックレビューも存在する。

このあたりは以前“全てのタイプの痛みを抑えられる薬は存在しないー痛みの分類ー”で簡単に紹介した。

また、坐骨神経痛は、患者によっては重度の痛みや圧痛など独特の感覚異常がでる場合もあり、神経性疼痛とは別のなんらかのファクターが関わっているのではという考え方もある。坐骨神経痛に対して、しっかりと効く薬が見出せるようなバイオマーカーを特定できればまた状況も変わってくるのかもしれない。

【参考文献】
1,Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica
Stephanie Mathieson, M.Chiro., Christopher G.et al
N Engl J Med 2017; 376:1111-1120

2, Oral nonsteroidal anti-inflammatory drugs for neuropathic pain.
Moore RA1, Chi CC, Wiffen PJ, Derry S, Rice AS.
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Oct 5;(10):CD010902.

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