プロはこの基準をもって医学論文を読んでいる!医学論文執筆に関する国際指針

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医学論文や研究の質や結果をどう評価・解釈すれば良いのですかと聞かれることがある。裏を返せば、どういう基準を持って論文を書けば質が良くなるのかということでもある。なんの判断基準ももたずに論文を読んでも正しい解釈はできない。

その判断基準は、簡単に言ってしまえば医学論文執筆に関する国際指針に集約されている。思い返せば、僕自身こうした指針あるいはそれを二次的に分かりやすく加工した資料をもとに論文を読み、評価しては色々な人と意見を交わして自身の判断基準をブラッシュアップしてきたように思う。もちろん、このような分かりやすいチェック項目があったとしても、医学論文を読むときにつまづくこともあるし、沢山読んでもわからないところや解釈に悩むところなどはざらにある。

結局のところ体系的に学ぶことは事実上不可能で、自分が疑問に思ったことの論文を調べては読み、また疑問があれば調べる、という風に泥縄式に積み上げるしかないと感じている。論文の内容に対するバックグラウンドの知識とて人によって差があるのだから。とはいえ、論文を書くにせよ読むにせよ指針がある方が良いのは確かなので、各研究デザインにおける書くor読むポイントをまとめた国際指針を以下にまとめて紹介する。

CONSORT声明(Consolidated Standards of Reporting Trials)

http://www.consort-statement.org
日本語での説明はこちら
ランダム化比較試験を書く際の(あるいは読む際の)25のチェック項目を示した国際指針。タイトルにランダム化比較試験であることを書く、イントロダクションには何を書きなさいと言うことが丁寧にリストアップしてある。このチェック項目に沿って書けば論文の質が上がる、もしくは読めばより正確に解釈できるということになる。実際にこの声明を導入してから論文報告の質が上がったとする報告もある。声明を出すだけではなく、導入した後の結果をフィードバックすることは大切だと思う。ランダム化比較試験の文献を読む前に目を通しておいた方が良い。

因みに、New England Journal of Medicine、 Lancet、JAMA、British Medical Journal等々のクラスの論文雑誌であれば原則としてはこのような国際指針に則って書くことが採択の最低条件と考えられている。日本初の論文も含め色々読んでいても、こうした指針に則っていないものは沢山ある。

PRISMA声明(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analysis)

http://www.prisma-statement.org
日本語でのチェックリスト
システマティックレビューとメタアナリシスに関するチェック項目。27項目のチェックリストからなる声明で、タイトル、要旨、イントロダクション、メソッド、結果、出資者などをどのように記載しなさいということが書いてある。そのフローチャートもある。主旨は、システマティックレビュー及びメタアナリシス論文の透明性を担保することにあり、実際にこの項目に沿って論文を読むことでより正確な解釈ができる。何かの治療効果をちゃんと知りたいとかいう場合は、CONSORTとPRISMAはおさえた方が良いかもしれない。さて、以下は更に他の研究デザインにも突っ込みたいツワモノへ。

STROBE声明(STrengthening the Reporting of OBservational studies in Epidemiology)

https://www.strobe-statement.org
日本語でのチェックリスト
疫学研究における観察研究、中でもコホート研究、症例対照研究、横断研究に対して指針を提供している。交絡因子の変数調整、対照群と症例群の選択方法などを含む22個のチェック項目からなる。観察研究が正確に報告されるようにすべく提供されたガイダンスである。CONSORT声明に影響を受けて、疫学者、統計学者、臨床家などが開発した声明とされている。

因みにSTREGA(STrengthening the REporting of Genetic Association studies)というSTROBEの延長線上にある声明もあるが、STROBEは観察研究に用いられるのに対して、STREGAは遺伝子関連研究に応用される。他にも、特定の分野をカバーすべくSTROBEを拡張した概念を導入する試みもあるようだ。

MOOSE声明(Meta-analysis of Observational Studies in Epidemiology)

チェックリスト;https://www.editorialmanager.com/jognn/account/MOOSE.pdf
日本語版;
http://cont.o.oo7.jp/MOOSE/MOOSE_chk_Jap.pdf
観察研究のメタアナリシスに関する指針。観察研究のメタアナリシスの有用性を高めるべく定められた。観察研究のメタアナリシスとなると、実に多様であるが、研究の背景、指針、方法、結果、考察、結論などの記載項目に関して35のチェック項目がある。誰がどのような研究をどのような目的で行ったかを明確にし、より使いやすい情報にしようという意図をもって策定された。

STARD声明(STAndards for the Reporting of Diagnostic accuracy studies)

http://www.stard-statement.org/
その名の通り、診断または予後の研究に用いられる。 診断研究報告の標準化を目的として策定された。例えば、診断精度がどの程度かという研究調査において、実施方法や解析方法の記載がなかったりすると評価に困るため、必要な情報は正確に報告しましょうということが書かれている。タイトル、アブストラクト、方法、結果、考察などの項目に対して25のチェック項目が設けられている。診断に関する研究論文を読むのはほぼ医師で、薬剤師が使うことは多くはないのだけど。

SPIRIT声明(Standard Protocol Items: Recommendations for Interventional Trials)

http://www.spirit-statement.org/
論文を読むという主旨から少しずれるが、関連があるので一応紹介する。介入試験全般における臨床試験のプロトコール作成の指針を示したもの。ランダム化比較試験などのプロトコールでプライマリアウトカムの設定、治療の割付け、遮蔽化の有無などの重要な情報に不備があると報告の信頼度を大きく揺るがす可能性が生じるため、こうした指針に沿うことが重要となる。同指針の策定には、医療従事者、方法論者、統計家、治験コーディネーター、編集者、倫理委員会などなど各分野のプロフェッショナルが関わっている。治験の要件、例えば登録情報、イントロダクション、方法、倫理的側面など33の項目に及ぶリスト。

SPIRITに基づいたプロトコールをCONSORTベースの論文へと移行しやすいように、いくつかの項目が共通している。プロトコールの透明性が保たれれば、不明確な情報についての問い合わせも減るだろうし、後々の効率も上がるだろう。臨床試験の透明性や説明責任を果たすなら、試験開始前にしっかり質の高いプロトコールを作っておきましょうということ。どちらかというと論文を読む側というより、臨床試験を組む方向けになろうかと思う。

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