【パーキンソン病】パーキンソン病患者が摂るべき栄養と避けるべき栄養

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パーキンソン病(Parkinson’s Disease;PD、以下PD)は神経変性疾患の中では、認知症について2番目に多い疾患であり、遺伝的要因と環境要因が大きく関わることが明らかになってきている。環境要因の中でも、摂取している栄養は重視すべきことの1つで、摂取栄養素次第で神経変性や病態の進行度合いが変わる可能性を示した研究がかなりある。様々な疫学研究のレビューから、どの栄養素がPDのリスクをあげる、あるいは下げるとされているのか、まとめて紹介しよう(細かい解説を飛ばして結論だけ見る場合は、「まとめ」のみお読み下さい)

パーキンソン病のリスクを高める栄養素

乳製品

乳製品及び牛乳の消費量がカルシウムの摂取量とは無関係にパーキンソン病のリスクを上昇させるとする疫学研究がある。特に男性において、その傾向が顕著だ。女性においても牛乳の消費量とPD発症リスクに正の相関が見られたとする研究もある。なお、牛乳消費量はパーキンソン病発症と強い相関が見られたものの、チーズやヨーグルトでは相関が見出されていないため、その違いは何かについては検討の余地がある。

パーキンソン病のリスクを下げる栄養素

ファイトケミカル(Phytochemical)

ファイトニュートリエント(Phytonutrient)ともいう。Phytoは植物。つまり、植物系の栄養素で色の濃い果物や野菜に比較的多く含有されている。果物や野菜に含まれるファイトケミカルが、加齢による機能低下とパーキンソン病の進行を遅らせる可能性を示唆した研究はいくつかある。例えば、果物、野菜、魚の摂取量を増やすことでパーキンソン病のリスクが減る傾向にあるとしたもの。多くの果物や野菜はパーキンソン病患者で不足しがちな抗酸化物質、ビタミンA、B、C、Eなどが豊富だ。

βカロテンやカロテノイドを含む食事で、パーキンソン病リスクが低減することを示唆した疫学研究もある。カロテノイドには抗酸化作用があり、脂質の酸化やフリーラジカルの生成を抑制して結果的に神経を保護したものではと考えられている。

マウスの実験では、βカロテンによる神経毒性軽減作用が確かめられている。主にトマトに含まれるリコペンにも類似した作用があることが動物実験でわかっている。ただし、カロテノイドの吸収様式は人間のそれと違うため単純にこの結果を転用して同じ結果が得られる保証はない。

リボフラビンは、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝に重要な栄養素であるものの、パーキンソン病リスクと関連しないとされている。しかし、プラセボ対照群を設けておらず遮蔽化されていないこともあり、この結果には疑問の余地がある。

タンパク質摂取量が低いとレボドパの吸収に影響を与えると考えられている。また、葉酸、ビタミンB6およびB12を含む他の関連するビタミンB群の摂取は、パーキンソン病のリスクと相関しないことが示されている。しかし、ビタミンB6の摂取量が少ないと、PDのリスクが上昇するという研究もある。近年になり、ニコチンを含有している野菜、例えばトマト、ポテト、ペッパーなどの摂取で喫煙経験のない男女のパーキンソン病発症リスクを低減する可能性が示唆されている。ただし、観察された神経保護作用が、ニコチンによるものかこの野菜群の他の成分によるものかは不明である。

カリフラワー、キャベツ、ブロッコリーなども、神経保護作用を持つ抗酸化物質が豊富な野菜である。こうしたアブラナ科野菜に含まれているスルフォラファンやエルシンは強力な抗酸化物質で、マウスの実験では神経保護作用が示されている。人における有用性は定かではないが、両成分は慢性神経変性疾患において神経保護剤としての可能性が期待されている。

オメガ3系脂肪酸

神経保護作用が既に報告されている成分であるが、パーキンソン病における神経障害を防御する作用があるかは不明である。パーキンソン病患者のうつ病に対して効果があるかもしれないという研究は存在する。オメガ3系脂肪酸のうち、DHAが脳の成長に重要な役割を果たしていることはよく知られており、COX-2阻害作用による抗炎症作用もあると考えられている。またDHAがドパミン作動性神経のアポトーシスを減らす可能性が示されている。短期間のDHA服用により、レボドパにより引き起こされるジスキネジア(不随意運動の一種)の発症を最大4割減らすという研究もある。EPAも動物モデルで神経保護作用が確認されている。ただし、人におけるエビデンスは不十分である。

大豆(ゲニステイン)

大豆イソフラボンの一種であるゲニステインは、ラットにおいて神経保護作用を示されており、閉経後の女性におけるパーキンソン病予防に有用である可能性が示唆されている。今後、臨床試験においてゲニステインの神経保護効果が試験される可能性はある。

カフェイン

動物実験ではカフェインの神経保護作用、ドパミン作動性ニューロンの減少作用が示されており、コーヒー及びコーヒー以外のカフェイン源の摂取量が増えるほどパーキンソン病の発症リスクが低減するとする人における疫学研究もある。因果関係が完全に解明されているわけではないが、カフェインによる神経保護作用や神経細胞のアポトーシス防止作用によるものではと推察されている。女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、カフェインの神経保護作用を補助する作用があることが疫学研究において示されている。カフェイン摂取時、女性の方が改善傾向が大きく、閉経後女性においてはカフェインの神経保護作用は男性と同程度しか観察されなかった。しかしながら、高用量のカフェイン摂取はホルモン療法を受けている女性においてパーキンソン病リスクをあげるとの報告もあるため、取りすぎも考えものである。

いくつかの疫学研究で、茶を飲用量とパーキンソン病のリスク低減の相関が報告されている。中国における研究では、2杯/日の茶を飲むことでそのリスクが低減することが示唆された。また、大規模の前向き研究においても習慣的に3杯/日以上の茶を飲む人はパーキンソン病の発症リスクが低い傾向にあった。なお、これらの研究で紅茶と緑茶の区別はされていない。動物実験においては紅茶、緑茶共に神経保護作用が示唆されており、含有されているポリフェノールによる抗酸化作用から脳の神経細胞保護作用が得られた可能性があるとされている。紅茶では、ポリフェノールテアフラビンが、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、および抗炎症作用を含む多種多様な薬理学的性質を有するとする報告がある。また、緑茶中のポリフェノールであるエピガロカテキンガレート(EGCG)は神経保護作用や抗がん作用が期待される一方で、緑茶摂取がパーキンソン病発症リスクと無関係であるとする研究もあった。 とはいえ、ネガティブな結果の疫学研究はなさそうで、茶の摂取は神経変性疾患を遅らせる可能性が確定的ではないが示唆されているので、勧めて良いと考えられる。茶には上記のカフェインも含まれているのだし。

アルコール

これは少し意外なのだが、アルコールはパーキンソン病において神経保護作用を発揮する可能性がある。症例対照研究で、アルコールを消費する方がパーキンソン病発症リスクが低い傾向が見出されている。最近の研究では、低〜中程度のビール消費はパーキンソン病リスク低減と相関しているが、消費量が多すぎると逆にリスクが上がることも示唆されている。とはいえ、ほとんどの疫学研究はアルコール摂取とパーキンソン病のリスクとの関連には否定的な結果である。

ただし、赤ワインに含まれるレスベラトロールやクエルセチンはパーキンソン病に対して神経保護作用を発揮しうるとされている。考えられている説明は、レスベラトロールがフリーラジカルを捉えて抗炎症作用を発揮することでドパミン産生ニューロンのアポトーシスを予防するというものである。しかし、疫学研究では赤ワイン消費とパーキンソン病の関連に有意な差がない。

パーキンソン病リスクへの影響が不明な栄養素

脂肪

食物脂肪に関しては、各研究間で結果に一貫性がない。動物実験では、高脂肪食により黒質線条体におけるドパミンの枯渇が促され、パーキンソニズムの進行を悪化させることが示されている。ヒトにおける疫学研究では、動物性脂肪の摂取量が多い群でPDのリスクが高いことが示唆されている。一方で有意な相関を示さない研究もあり、相半ばである。これは飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸かを分けて考える必要がありそうで、後者が多い方がリスク低減に繋がるとする説がある。パーキンソン病患者の細胞を調べると、コレステロール濃度が低く、コレステロール生合成の低下が観察されることがあるため、脂質およびコレステロール代謝が発症に関連するという説もある。一方で、総コレステロール値が高いほど、PDの進行が遅れるとする対照的な結果の研究もある。

コレステロール値の上昇とPDとの相関は女性において顕著であるが、この説明としてコエンザイムQ10の血漿濃度レベルの性差があげられている。コエンザイムQ10には、神経保護作用があると考えられている。さらに、HDLコレステロールの比が多いほど症状の持続時間が短くなる可能性が見出されている。PDの関連に不明点は多いが、不飽和脂肪酸、HDL、CoQ10の割合を増やす方が良さそうである。

肉の消費はPDの発生率と関連している可能性があるが、前向き研究におけるエビデンスは限定的だ。赤身肉の消費とPDとの関連は、消化の過程で生じるヘムによるものと考えられている。意外なことに、加工肉およびソーセージの摂取量が増えるほど女性におけるPDリスクが低減するとする研究がある。とはいえ、加工肉消費で糖尿病、心血管疾患、死亡率の発生率が高まることを考えると、積極的に推奨できる選択ではない。

炭水化物

炭水化物はドパミン前駆体であるチロシンの血液脳関門通過を補助して、脳におけるドパミン産生を増加させることが示唆されている。炭水化物とタンパク質混合物のバランスの取れた食事は、パーキンソン病患者の運動能力を改善したとする研究はあるものの、炭水化物消費とPDに関する決定的な疫学研究はない。高炭水化物食は、2型糖尿病のリスクを増加させる。そして、興味深いことに多くの疫学研究で2型糖尿病がPDのリスク増加と関連していることを示している。各研究間の結論に一貫性がなく、一定のメリットがある可能性はあるが、多く摂取することは勧められない。

ビタミンD

因果関係は不明だが、一般にPD患者においてビタミンDは欠乏傾向にある。動物実験では、ビタミンDサプリメントが疾患の進行を遅らせるのに有益であるとされており、ヒトでの研究においてもPDの症状を安定化させる傾向が示唆されている。一方で結果に有意差のない研究もある。栄養欠乏に起因するビタミンDの減少がPDの増加を引き起こすのか、あるいは日光への曝露のような環境因子が影響しているのかは不明である。

ビタミンC

ビタミンCは脂質の酸化を抑制し、酵素の活性を増加させる。症例対照研究でビタミンCが豊富な食事を摂取している人は、PDリスクが減少する傾向が見出されている。高用量のビタミンCおよびEが初期PD患者に与えられた研究では、疾患の進行の減少が観察された。このような研究はあるものの、他の研究では、ビタミンC摂取とPDのリスクの間に有意な関連は見出されていない。

ビタミンE

ドパミンニューロンに対する保護効果を持つとされている。ビタミンEによって酸化ダメージを防止するメリットは期待できる。メタアナリシスでは、中等度および高摂取のビタミンEでヒトのPDに対する保護効果が示され、女性よりも男性でより顕著な効果が見出されている。一方で有意差のない研究もある。

まとめ:栄養が神経系と遺伝子発現に及ぼす影響〜エピジェネティクス〜

サプリメントにより個々の栄養素による影響を検討した試験は多くあるが、基本的に抗酸化物質は単一成分よりも組み合わせて使うことで相乗効果を発揮する。従って複数の成分を豊富に含む食事を選択することで病気の状態が良くなる可能性はある。まとめると、下表で示した神経保護作用が期待できる野菜や果物(特にニコチンを含むもの)、オメガ3脂肪酸、茶、カフェイン、少量〜中程度の赤ワイン、などの飲食物を含むバランスのとれた食事を継続することが望ましいと考えられる。

栄養はニューロンや神経系の機能に様々な場面で影響を及ぼす。栄養状態や環境要因は遺伝子の発現状態に影響を及ぼすこと、そしてその発現状態が病気の発症や信仰に関わることも判明しつつある。個々の栄養素が遺伝子の発現状態にどのように影響を与えるかという、エピジェネティクスの研究は未だ初期段階にあるが今後より注目を浴びていく分野になるだろう。

栄養成分の病気に対する影響は、疫学研究でエビデンスとして確立しようにも、食事パターンが時間の経過と共に変化する可能性があったり、普段の行動や食生活の中に交絡因子がいくらでも存在しうるため事実上難しい。

【主要参考文献】
1、難病情報センター パーキンソン病
2、ウィキペディア パーキンソン病
3、The emerging role of nutrition in Parkinson’s disease
Front Aging Neurosci. 2014;6:36.
Stacey E.Seidl, Jose A Santiago, Hope Bilyk, Judith A.Potashkin
4、Clinical practice. Diagnosis and initial management of Parkinson’s disease.
N Engl J Med. 2005 Sep 8;353(10):1021-7.
Nutt JG(1), Wooten GF.

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