AIによる調剤薬局オペレーションの自動化システム

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始めてきた方は「薬と健康のホンマでっかな情報発信局とは」をお読みください。

病院にかかるのは時間のかかる行為だ。予約して自宅から病院へ行き、診察まで1、2時間待たされ、数分の診療を受け、診療が終われば会計で数十分〜1時間近く待たされ、薬局へ行き、ここでも調剤で待たされ、薬をもらって帰る。

検査が入れば検査待ち、検査時間。外来の抗がん剤をやる場合は抗がん剤の点滴時間。複数科かかる人もいる。しめて1日がかりで、朝一で病院に来たのに処方箋を薬局に持参するのが17時、18過ぎになってしまったなどという方をお見かけすることもある。

医療の質以前に、これだけサービスインフラが悪いので、それらを改善するための様々なプレイヤーなりサービスが存在し、開発もされている。実際の受療時間は全体の数%で「移動時間」「病院での待ち時間」「薬局での待ち時間」が多くを占めることを思えば、実際のサービスにかける時間割合を増やす仕組みを作りたいというものだ。

今回は、中でも「薬局での待ち時間」を激減させることに成功した仕組みを1つ紹介しよう。

調剤の80%を完全に自動化

薬局業務全体の中で、薬のピッキングや調製にかかる時間の割合は極めて大きい。全体の7、8割を占めるのではないかと思う。その大きな割合を占める調剤部分のおよそ80%を完全に自動化した(恐らく)世界初の病院薬局がシンガポールにあるTan Tock Seng病院だ。

そこでは、ピーク時に1日で1,400人分の調剤を行うという。空間も薬剤師の数も限られている中で、患者の待ち時間は年々増加の一途を辿り30分〜2時間待ちもざら。もはや、限界に近づいていた中でOutpatient Pharmacy Automation System (OPAS) というシステムが導入された。直訳すれば外来薬局自動化システムとでも言おうか。シンガポール政府の医療技術機関であるIHiS(Integrated Health Information Systems)によって設計されたシステムで、各患者の処方薬に対して複数のロボットが並行して調剤を行い、わずか7分で薬の準備が完了するというものである。更に、容易に拡張可能なシステム設計によりOPASはシンガポールの急速な高齢化の需要にも追いつくことができるとしている。同病院以外にシンガポールの他の2つの医療機関にも導入されている。

調剤の自動化によるメリット

調剤ワークフローの80%を自動化というのは大幅な合理化で、機械が行えばミスも減るので鑑査でミスが発覚し再調剤する率は3分の2まで削減され、調剤に配分する人員を交付カウンターへと再分配することで、50%も多くの患者に対応することが可能になったという。19人の常勤作業員分の人件費が削減できたが、雇用は失われていないようだ。従業員はより付加価値の高い仕事に再配備され、もっと言えばそのキャリアアップにもなる。

調剤の自動化は、患者の安全性向上にも繋がる。調剤された薬剤のトレーサビリティが保たれるのも大きなメリットである。誤った薬剤や用量をとるといったニアミスも27.4%以上減少したとされている。

こうした単純労働作業の自動化により、患者の待ち時間は50%も短縮される。一般的には約95%の患者が30分以内に薬を受け取っているとされるが、同病院では95%が15分以内である。

全自動調剤のワークフロー

こちら↓の動画を参照するのが分かりやすいかと思う(YouTubeでも”Automated Pharmacy”などのワードを入れて検索すれば種々の自動調剤マシーンが出てくる)。
Singapore hospitals use world’s first robot system to pick pills for busy pharmacy staff 
流れとしては、医師からのオーダーを受信すると、AIが、箱かブリスターパックかを問わずバーコードに基づいて薬剤を選択する。12秒ごとに1つの箱をピッキングすることができ、一度に30,000箱までの薬剤を保持することができる。実に3日間の総調剤量をまかなうのに十分な量である。

バラ錠の場合は、Parata Maxと呼ばれる米国製の別のロボットが、別の機械に必要な錠剤を自動的に数え、整理してキャップする。

オーダー通り調剤が行われた後は、薬剤ボックスとパックはバーコード対応のコンベアベルトに乗って薬剤師に送られる。薬剤師はRFIDを用いてパックのバーコードをスキャンしオーダーにミスがないことを確認したら、患者名と用法用量の情報が入ったラベルをプリントアウトする。

その後、薬剤師はその薬を白いかごに入れ、ABBロボットアームへと送る別のコンベアベルトに載せる。ABBロボットアームは、薬が入ったかごを持ち上げて交付待ち棚に置く。これを薬剤師が受け取り交付に至る。もともとは自動車を組み立てるために設計されたABBロボットアームであるが、医療に応用されたのは世界初である。

もちろん、20%ほどの薬剤ピッキングは薬剤師により行われなければならない。全部が全部、棚から取れば良いというものではなく特殊な調製を要する薬剤があるためだ。しかし、残りの8割を自動化すれば自ずと流れも変わる。薬剤師が薬にラベリング、パッケージング及びピッキングをする時間が減り患者との対話に時間をかけることができる。

【参考】
・International Business Times
Singapore hospitals use world’s first robot system to pick pills for busy pharmacy staff 
Outpatient Pharmacy Automated System

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