薬の効果は一部に過ぎない〜ホーソン効果、ピグマリオン効果、プラセボ効果〜

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使った、治った、効いたの「三た論法」を安易に信じてはいけないことは、医薬品情報学という薬学部の講座で習った。薬を使った後に病気が治っても、それで薬が効いたという証明にはならない。これは「薬」を別の治療に置き換えてみても同じことが言える。

理由は、自然治癒、本人の思い込み、ホーソン効果、プラセボ効果、ピグマリオン効果などといった要素が働いて治った可能性が否定できないからだ。故に、薬の効果を証明するためにはそうした要素を排除して比較するように試験をデザインする。


この中から実際の治療効果のみを抽出するには?

では、どのようにデザインし証明していくのだろう。当たり前だが、よくある電車内広告のように「その治療を試して病気が治ったという感謝の手紙が殺到!」して「私はこれで癌から生還した!奇跡の療法!」みたいな報告があっても証明にはならない。しかし、こういうものをただ怪しいと思うだけで終わらず、何が怪しいのかを具体的に言語化していくと、どうすれば客観的に証明できるのかのヒントになる。

先の例で言えば怪しいと思う理由は様々で、比較対象がない、十分な人数で試されたのかが分からない、他の要素で治ったのかもしれない、三た論法そのもの等々、突込みはじめればきりがない。薬では、効果を証明するために有効成分が含まれる薬(実薬)を飲んだ人と有効成分が含まれない偽薬(プラセボ)もしくは既存の薬を飲んだ人を比べること必須となる。比較対象のない試験はそれだけで科学的意義が疑われる。

バイアスを最小化する

ある治療の効果を他の治療あるいはプラセボと比べようとするときに、2つの治療を過大評価あるいは過小評価する可能性がある。1つの理由は偶然というかランダムなエラー(これについての説明はここでは割愛する)。もう1つの理由がバイアス。真の結果からのずれを生じさせる原因だ。従って、臨床研究をデザインする際にはバイアスを最小化することが1つの命題となる。

交絡因子

結果に影響を与える交絡因子の例としては、年齢、性別、民族性、病気の重篤度、併存疾患などの変数がある。既知の交絡因子調整は統計的な手法を用いて可能であるが、未知の交絡因子は調整できない。試験の開始時点で試験群と対照群の特徴が異なってはフェアな比較にはならない。例えば、重病人と健常人を同じ土俵で比較して意味があるのかという話だ。しかし、こうした因子を自動で調整し群間の差を似通ったものにする方法がある。それがランダム割付けだ。ランダムに被験者を振分けると、介入群と対照群の傾向は自然と似通ってくるため、こうした要因を自動的に調整することができる。

ランダム化を行っても、介入群と対照群の間に相違が残りうるが、研究を分析するために使用される統計的手法は、ある程度の機会変動を想定しているため相違がある程度最少化されれば、それでさし支えないだろうということになる。

ホーソン効果

Hawthorne効果は、1924年にイリノイ州のホーソーン·ウェスタン·エレクトリック工場で労働者の生産性の研究で最初にみられた現象で、被験者が試験に組み入れられていることを知ることによって、普段よりも良いパフォーマンスで働く傾向が出たというものだ。

患者が研修医ではなく教授に「特別に」診てもらったと思うと同じ薬でもより治療効果を発揮するということがある。自分が特別に診てもらっている、一生懸命やってくれていると思えば良い影響がでることは実臨床では良いことだと思うが、臨床試験では結果を偏らせる原因となる。

既存薬での治療群を含む研究では、ホーソン効果が結果を偏らせる原因となりうる。介入群は自らが研究の一部であることを知っているために、ホーソン効果を示す一方で、既存薬での治療群にはホーソン効果が出ない。ランダム化比較試験においては、ホーソン効果は介入群と対照群両方に影響を及ぼすため、この影響を排除できる。

ピグマリオン効果

ピグマリオン効果は実験者の期待効果とも呼ばれる。最初に観察されたのは教育に関する研究で、教師の期待が生徒のパフォーマンスに影響するというものだった。その後の研究で、治療効果に関する実験者の期待によって、被験者の行動が実験者仮説の方向に変容する傾向にあることが分かっている。

臨床試験では、臨床医をブラインド化することで、この効果を最小限に抑えることができる。ブラインド化は薬の試験では可能だが、心理療法などの試行では困難である。しかし、そうした場合でも治療プロトコールを予め文書として作成しそれを遵守してもらうことで影響を最小化することはできる。

プラセボ(偽薬)効果

プラセボでも薬だと信じ込むと何らかの改善が見られることがある。被験者の治癒に対する期待が治療効果とあいまって、より大きな改善をもたらす。プラセボ効果の大きさは、疾患によってかなり差がある。例えば、うつ病や不安症状に対する効果は統合失調症に対するそれよりも大きい。急性の躁病でも、かなりのプラセボ効果が見られる。不眠症や下痢、めまいにもプラセボが良く効くことが知られており、こうした疾患に対する薬の試験ではプラセボと大きな差が見出されない試験も散見される(関連過去記事:”メニエール病に対するメリスロンは効果なし”、”過敏性腸症候群”)。

プラセボ効果と実際の治療効果を切り離して考えるには、対照群を設けることが必須で、その治療を受ける患者をブラインド化することでさらにその影響を減らすことができる。

臨床試験へ参加している患者が、今回の試験薬は画期的で今までの薬よりも物凄く良いと信じ込まされたとする。どちらが実薬でどちらがプラセボか分からなければ良いが、二重盲検でも副作用の違いや効果の出方の違いで気づく人は気づく。気づいた場合は、試験薬服用がわかった患者においてホーソン効果までもが強く発揮される。逆にプラセボを飲んでいると気づいてしまえば効くはずのプラセボ効果すら消えてしまう。これがオープンラベル試験だと尚更顕著に出ることは言うまでもない。

観測者は評価者によるバイアス

観測者又は評価者が、患者がどの治療を受けているか知っている場合、特定の症状について偏って質問したり、存在しない治療効果を見出そうとする可能性が生じる。こうしたバイアスを最小化するには、インタビュアーや評価者をブラインド化するのが有効とされている。しかし、時には治療の副作用や患者の発言から受けた治療が分かることもあるため、完全に行うことは事実上難しい。

【参考書籍】
・「医師もMRも幸せにする患者のための情報吟味―ディオバン事件以降の臨床研究リテラシー」山崎力 (著)
・How to practice Evidence-Based Psychiatry Basic Principles and Case Studies(Edited by C.Barr Taylor,M.D)

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