【吐き気止め】メトクロプラミド(プリンペラン)とドンペリドン(ナウゼリン)の比較/錐体外路症状・致死性不整脈リスク

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オススメの吐き気どめはあるのかと聞かれると意外に答えに詰まることがある。WHOの必須医薬品リストには、吐き気止めとしてデキサメタゾン(デカドロン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、オンダンセトロン(ゾフラン)が掲載されている。同リストは、途上国などでの使用を前提とものであり、日本における意味合いはまた異なるが1つの指標とはなる。

このうち、日本において、吐き気に対する保険適応症は、オンダンセトロン:「がん化学療法に伴う嘔吐」、デキサメタゾン:「抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・ 嘔吐)」でありこの2剤は一般的な吐き気には用いられない。市販薬で吐き気を直接抑える成分は基本的に扱いがなく、実臨床ではメトクロプラミドやドンペリドンが吐き気止めとして使われる頻度が極めて多い。

メトクロプラミド(商品名:プリンペラン)とドンペリドン(商品名:ナウゼリン)の作用機序と比較

このメトクロプラミドとドンペリドンは、ドパミン受容体遮断作用をもち、
1、脳の嘔吐中枢の抑制 と 2、腸管の蠕動を促す
という2つの作用から吐き気を抑えるとされる。神経遮断剤特有のQT延長作用があるため、心室頻拍から致死性不整脈を生じるリスクがある。

両者の主な違いを下表に示す。

メトクロプラミドは血液脳関門を通過し脳中に移行しやすい一方で、ドンペリドンは通過しにくい。従って錐体外路症状は前者で出やすい。ドンペリドンは催奇形性があるので、つわりには使わないとか、メトクロプラミドは錐体外路症状を誘発するので小児や高齢者に望ましくないということはよく言われるし、添付文書にも書かれている。

因みに、ドンペリドンとメトクロプラミドなどのドパミン受容体拮抗薬は、プロラクチン分泌作用があり母乳分泌を促す作用があるが、母体への副作用リスクや児への移行性を考えればそれ目的で使うべきではなく、適応症にもなっていない。

錐体外路症状の具体的な症状と頻度

錐体外路症状は主に不随意運動を呈するが、具体的な自覚症状は次の3つ。

1、ジストニア dys(異常)tonia(緊張)
・眼球が上転、グルっと回る、口周辺や舌の異常な動き、顔の強いこわばり、首が反り返るなどの筋緊張異常反応
小児で起こりやすい
・抗コリン性の抗パーキンソン病薬、具体的にはアキネトン(ビペリデン)、アーテン(トリヘキシフェニジル)で回復する

2、アカシジア akathisia a(否定の接頭辞) kathis(ギリシャ語で座るの意味)
・静座不能症ともいう。ジッと座っていられない、ソワソワして落ち着かない
青年期〜成人に起こりやすい

3、パーキンソン症状
・手足の震え、こわばりなど
高齢者で起きやすい

頻度は決して多くないが、初期症状を放置して中止が遅れると、カタトニアや悪性症候群を呈し、命の危険が生じるので見逃してはならない症状である。

メトクロプラミドの錐体外路症状頻度

脳中に移行しやすいとされるメトクロプラミドでは、どの程度錐体外路症状が発現するのか。その正確な見積りは不明であるが、1985年にBMJに掲載された論文では1967-1982年に英国においてメトクロプラミドが処方された件数1590万件に対して、錐体外路症状の報告は479例としている。479例中455例がジストニア、20例がパーキンソン症状、4例がジスキネジアという内訳で、Dystoniaは女性例が70%であった(Br Med J (Clin Res Ed). 1985 Oct 5; 291(6500): 930–932.)。

致死性不整脈リスク

ドンペリドンはかなりの高頻度で使用されているが、 WHOリストには載っていない。注射剤は致死性不整脈誘発リスクがあるため1985年に禁止となっている経緯すらある。経口剤でも致死性不整脈の症例報告やそのリスク増加傾向を示唆した症例対照研究、症例クロスオーバー研究が複数存在し、欧州では経口剤に対しても警告がなされている(国立医薬品食品衛生研究所 医薬品安全性情報 2014)。

2000年〜2011年における台湾での健康保険データベースを元にした研究では、心室性不整脈のリスクを増大させ、CYP3A4阻害剤の併用で更にその影響が高まる可能性が示唆された。心室性不整脈で救急入院した25,356人の患者を解析した結果、オッズ比1.56(95%信頼区間1.41-1.72)と有意な増加で、高用量(>30mg)でよりオッズ比1.98(95%信頼区間1.50-2.63)とより強い相関があった。さらに、ドンペリドンとCYP3A4阻害薬を併用した場合にもリスクが上がる傾向が示された(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Aug;24(8):841-8.)。また、英国における症例対照研究においてもドンペリドンとメトクロプラミドで同様のリスク増加傾向が見出されている(Drug Saf. 2015 Dec;38(12):1187-99.)。

2012年フランスにおける、ドンペリドン使用に起因する年間の心臓突然死数を推定した研究では、フランス人集団における18歳以上の人口で年間231人の死亡原因となっているとされた。全体数から極少数と言えなくはないが、その僅かな効果に鑑みれば致死的リスクがあることは無視できない(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 May;24(5):543-7.)。実際に発生頻度が低く、上記で紹介してきた研究の質の面で問題がないわけではない。QT延長をはじめとする心血管イベントの増加リスクに否定的なレビューもあり、意見相半ばな部分もある(N Z Med J. 2015 Jun 12;128(1416):66-74)。

それに、主要な心臓血管有害事象(心臓不整脈および突然の心臓死)を伴うドンペリドン使用と関連したいくつかの症例報告および研究はあるものの、有効性を検討した複数のランダム化比較試験では、そうした有害事象は検出されていない。しかし、2016年には5件の症例対照研究と1件の症例クロスオーバー研究が含む、ドンペリドン服用と心臓血管有害事象との関連性を検討したメタ分析が発表されている。結果、ドンペリドンにより心室性不整脈および突然の心臓死のリスクが増加することが示唆された。調整オッズ比は1.70;95%信頼区間1.47-1.97; I2=0%。(※I2(アイ2乗)統計量が0%とは即ち研究間の異質性が低く基礎集団が似通っているということ)であった。(Clin Drug Investig. 2016 Feb;36(2):97-107.)
 
両者とも、吐き気そのものにはある程度の有効性が期待できるが、頻度は低いながら致死的リスクがあるため安易に使うことはためらわれる部分がある。CYP3A4阻害剤やQT延長リスクのある薬剤との併用にも注意を払いたい。

【参考文献】
1、Extrapyramidal reactions with metoclopramide.
Br Med J (Clin Res Ed). 1985 Oct 5; 291(6500): 930–932.
D N Bateman, M D Rawlins, and J M Simpson
2、国立医薬品食品衛生研究所 医薬品安全性情報 2014
3、Domperidone, cytochrome P450 3A4 isoenzyme inhibitors and ventricular arrhythmia: a nationwide case-crossover study.
Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Aug;24(8):841-8.
Chen HL, Hsiao FY.
4、Risk of Out-of-Hospital Sudden Cardiac Death in Users of Domperidone, Proton Pump Inhibitors, or Metoclopramide: A Population-Based Nested Case-Control Study.
Drug Saf. 2015 Dec;38(12):1187-99.
Arana A, Johannes CB, McQuay LJ, et al
5、Estimating the number of sudden cardiac deaths attributable to the use of domperidone in France.
Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 May;24(5):543-7.
Hill C, Nicot P, Piette C, et al
6、Domperidone safety: a mini-review of the science of QT prolongation and clinical implications of recent global regulatory recommendations.
N Z Med J. 2015 Jun 12;128(1416):66-74.
Buffery PJ, Strother RM.
7、Domperidone and Risk of Ventricular Arrhythmia and Cardiac Death: A Systematic Review and Meta-analysis.
Clin Drug Investig. 2016 Feb;36(2):97-107.
Leelakanok N, Holcombe A, Schweizer ML.

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