【制吐剤】制吐剤としてのオランザピン(商品名:ジプレキサ)の効果と安全性

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統合失調症などの精神疾患によく使われるオランザピンの適応症として、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐) 」が追加されることになった(厚生労働省 保医発0609第1号 平成29年6月9日)

その制吐剤としての有用性はかねてから言われていたが、制吐剤としての使用は保険適応ではなく堂々と使いづらい部分もあったと思う。従来のデキサメタゾンと、5-HT3受容体拮抗薬およびNK-1受容体拮抗薬の3剤併用治療の有効性は高いが、一部の患者で部分的にしか奏功しないことがあったため、新たな選択肢が増えたのは喜ばしいことだろう。

本稿では、そのオランザピンの制吐剤としての有効性と安全性を検討した試験を紹介する。

オランザピンの制吐剤としての効果を示した試験

その制吐剤としての効果を示した比較的大規模な試験として、National Cancer Instituteの資金提供を受けて行われた第3相試験がある。この詳細は、New England Journal of Medicineの2016年7月14日号に掲載されていて、Web上でも無料アクセス可能だ(N Engl J Med. 2016 Jul 14;375(2):134-42.)。
試験方法は、化学療法を施行中で悪心や嘔吐がある患者を、制吐剤3剤併用レジメンのみ、または同3剤併用レジメン+オランザピンの群にランダムに割付け、その効果を比較検討するというもの。

患者の特徴は下表の通りで両群ベースラインはほぼ同等と捉えて良さそうである。

上記表の通りであるが、400名ほどの患者が試験に組み入れられ、参加者の72、3%程は女性。人種は白人が最多。がん種別では、乳がんが最多、次いで(大きく離れて)肺がん。シスプラチンまたはシクロホスファミドおよびドキソルビシンで治療を受けている人が対象。併用の5−HT3拮抗剤は75%ほどの患者でパロノセトロン、次いでオンダンセトロン24%となっている。

ベースの制吐剤3剤は、NK-1拮抗剤(ホサプレピタントまたはアプレピタント)、5-HT3拮抗剤(パロノセトロン、グラニセトロンまたはオンダンセトロン)および1日目に12mgデキサメタゾン、続いて2~4日目に毎日8mg経口投与。ガイドライン通りである。

エンドポイントである吐き気なしの状態は0~10のビジュアルアナログスケールで0のスコアとして定義され、化学療法後の3つの時点:0~24時間、25〜120時間、全体0〜120時間で分けて解析された。結果は次の通り。

オランザピン服用群で、いずれの時点においても吐き気の発生率が低い。
化学療法後24時間以内で吐き気がなかった割合はオランザピン群75%に対してプラセボ群は45%、服用後1〜5日で42%対25%、5日間全体を通して37%対22%。そして、嘔吐やレスキューの制吐剤を追加する頻度もオランザピン群で少なかった。

臨床的に有意な悪心(0−10のビジュアルアナログスケールで3未満)からのComplete Response(吐き気なし、レスキュー投与必要なしの状態を指す)の割合も、すべての時点でオランザピンの追加により有意に改善した。

オランザピンは、複数の神経伝達物質をブロックするが、中でもドパミンD2およびセロトニン5-HT3受容体での活性が、有意な鎮吐作用を示すと考えられている。

安全性

オランザピンは、複数の神経伝達物質をブロックするが、よく知られている副作用として、鎮静、口の渇き、食欲増進、体重増加、起立性低血圧、めまいといったものが挙げられる。

本研究においては、安全性は良好であった。

同論文内にある上記のグラフからもわかるように、2日目に過度の疲労感や鎮静傾向が出ているが、引続き薬物を服用したにも関わらず後日回復している。うち5%は重度の鎮静作用が発現している。しかし、鎮静を理由として中止に至った患者はいなかった。食欲増加傾向がややあるように見えるが、重大な影響というほどでもなさそうだ。服用最終日及びその前日には眠気の問題もなくなった。

最後に

単純に従来の3剤併用の制吐レジメンを4剤に変えて4日間服用するだけなので、負担はさほど増えるわけではない。吐き気や嘔吐の辛さを思えば、ほとんどの患者がこの介入を喜ばしく思うのではないだろうか。治験はオランザピンの化学療法の最初のサイクルでの使用のみで行われたもので、さらなるクールで試されているわけではないが、同様に効くと捉えるのが妥当であろう。新たな選択肢としてとても見込みがあり、高度催吐リスクの抗がん剤使用時の新たな制吐治療のスタンダードとなりうるのではないだろうか。

【参考文献】
1、厚生労働省 保医発0609第1号 平成29年6月9日
2、Olanzapine for the Prevention of Chemotherapy-Induced Nausea and Vomiting.
N Engl J Med. 2016 Jul 14;375(2):134-42.
Navari RM, Qin R, Ruddy KJ, et al
3、National Cancer Institute(NCI) Treatment-Related Nausea and Vomiting
(※がんに関する情報を調べる際はNCIのサイトがとても有用)

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関連記事
パロノセトロン(アロキシ)とグラニセトロン(カイトリル)、オンダンセトロン(ゾフラン)の比較
http://drug.tokyo.jp/archives/1081

抗がん剤治療の制吐ガイドライン
http://drug.tokyo.jp/archives/955
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