【胃酸分泌抑制薬】プロトンポンプインヒビター(PPI)のベストな服用タイミングはいつか

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いつだったか。ある外国人の患者さんにネキシウム(PPIというグループに属する胃酸分泌抑制薬の1つ)を渡した際に「食後で処方されているが、食前ではないのか」と聞かれ「(インタビューフォームの結果から)どちらでも大きな差はないので、いずれも可です」と回答したことがある。後日その方が再びいらっしゃって「やはり食前ではないのか?医師に確認してくれ」と言われたことがある。当たり前のように食後処方ばかり来るので、深く気にしたことはなかったが念の為調べてみた。

先に結論。いずれも大きな差はないが、朝食前服用で効果を発揮できる時間が最も長くなる夜間の症状を抑えるなら夕食前が望ましい。以下に論拠を書いていく。

添付文書&インタビューフォームでは

まず添付文書。基本的にPPIに食前食後あるいは服用時点の指定はなく、1日1回服用。続いてインタビューフォーム。各薬剤に関して食事の影響に関するところを抜粋する。

タケプロン(成分名:ランソプラゾール)

食後投与においては絶食下投与に比べ、Tmax は延長し、Cmax は低値を示したが、AUC においては大きな差はみられなかった。中略。OD 錠とカプセルは生物学的に同等であることが確認された。

タケキャブ(成分名:ボノプラザン)

ボノプラザンのTmaxは、絶食下投与と比較して食後投与で延長した。ボノプラザンのAUC0-48 及びCmaxは、絶食下投与と食後投与で同程度であった。

ネキシウム(成分名:エソメプラゾール)

健康成人 24 例を対象に、エソメプラゾール 40mgを空腹時又は食事(標準的朝食)摂取後 に1日1回5日間反復経口投与し、エソメプラゾールの血漿中濃度に及ぼす食事の影響を検討した結果、エソメプラゾールの AUC及びCmaxは食事摂取により低下したが、胃内 pH に対する影響が認められなかったことから、エソメプラゾールの臨床効果に対して食事の影響はないと考えられる。

オメプラール(成分名:オメプラゾール)

オメプラゾール20mgを空腹時,朝食前15分又は朝食後30分に経口投与し、食事の影響を検討した。朝食後投与においてtmax が有意に延長したが,Cmax,AUC0-10h は 3 群に有意差は認められず,食事の影響は認められなかった。

パリエット(成分名:ラベプラゾール)

食後投与では、絶食下投与に比しtmaxは1.7時間遅延したが、Cmax及びAUCにおいて差は認められなかった。

平たく言えば、どちらにしても吸収量に大きな差はなさそうで効果の側面でも大同小異のように思われる。しかし、より効果を得るために食前が良いという意見は存在する。そこで検索してヒットしたのが以下に紹介する論文。

食前服用と食後服用の比較

21名の健康成人にオメプラゾールとランソプラゾールを食前と食後それぞれで服用してもらい比較検討した試験がある(Aliment Pharmacol Ther. 2000 Oct;14(10):1267-72.)。同試験に掲載されていた図を以下に示す。

1日の内で、pH>4.0(つまり胃内酸性度がある程度抑えられている)を保っている時間の割合は
朝食後17.2% (四分位範囲 4.6–45.5)
朝食前42.0% (四分位範囲31.4–48.8)
で、特にランソプラゾールで有意に効果が維持された。

起床時、食事の準備中、レストランのオーダー待ちの間などに飲むと望んだ効果が得られる時間帯が増えるということか。

朝食前、夕食前、就寝前、1日2回の比較

空腹時の方が望ましそうなことは分かったが、朝夕食前や寝る前で違いがあるのか。あるいは1日2回に分割したらどうか。症状がおもわしくないと1日2回処方される方もいる。元々効き目が長い薬剤なのに、2回飲んでどうなのだろうか。あるいは、例えば40mgx1回で飲むのと20mgx2回で服用するのではどちらが良いのだろうか。

そんな疑問への回答となりうる研究がある。スイスにおいて20〜55歳の男女健康成人に対するランダム化クロスオーバー研究だ(Aliment Pharmacol Ther. 2010 Nov;32(10):1249-56.)。ここでは、エソメプラゾールの飲み方を変えて各5日間服用してもらい比較検討している。効果の指標として、消化管内のpH>4を1日の内で維持できた割合(実際の臨床的なアウトカム設定ではないが目安とはなる)が用いられている。その結果が以下の表だ。

・1日2回の方が、効果を維持できる時間が長い
・朝食前で、期待した効果を維持できる時間の割合が増える
・胃食道逆流症状が起きやすい夜間に効果を発揮する割合を増やすには夕食前が良い

ほとんどの場合、どのPPIであっても1日1回で十分に効く。用法を変えて実際にどの程度臨床上差が出るかはなんとも言い難い。しかし、もし治療がうまくいかない場合、服用タイミングを起床時や夕食前など空腹時にずらして試しても良いだろう。

【参考文献】
1、各薬剤の添付文書及びインタビューフォーム
2、Proton pump inhibitors: better acid suppression when taken before a meal than without a meal.
Aliment Pharmacol Ther. 2000 Oct;14(10):1267-72.
Hatlebakk JG, Katz PO, Camacho-Lobato L, Castell DO.
3、Comparison of the effects of immediate-release omeprazole oral suspension, delayed-release lansoprazole capsules and delayed-release esomeprazole capsules on nocturnal gastric acidity after bedtime dosing in patients with night-time GERD symptoms.
Aliment Pharmacol Ther. 2007 Jan 15;25(2):197-205.
Katz PO, Koch FK, Ballard ED, Bagin RG, et al
4、The effects of dose and timing of esomeprazole administration on 24-h, daytime and night-time acid inhibition in healthy volunteers.
Aliment Pharmacol Ther. 2010 Nov;32(10):1249-56.
Wilder-Smith C, Röhss K, Bokelund Singh S, Sagar M, Nagy P.

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