たばこ・喫煙によりリスクが上がることが示されている疾患一覧

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喫煙は世界中では、年間約600万人の死亡に関わっていると見積もられている。そして、このままいくと2030年までには世界中で年間800万人を越える人の死亡に寄与すると考えられている(WHO report on the global tobacco epidemic 2015)。その、たばこ関連死亡で最も大きな割合を占める3疾患が、動脈硬化性心血管疾患、肺癌、慢性閉塞性肺疾患(COPD)だ。

禁煙すれば、そうした疾患の発症あるいは死亡リスクを低減することはよく知られている。そういう意味では、禁煙補助のためのカウンセリングや禁煙補助薬にも一定の意義がある(BMJ. 2004 Jun 26;328(7455):1519.Ann Intern Med. 2005 Feb 15;142(4):233-9.)。本稿では喫煙による死亡率への影響及び増加する傾向がある疾患をまとめて紹介する。

総死亡率

最大で全喫煙者の半分程度が喫煙関連の疾患で死亡するした見積もりがある。ノルウェーの40~70歳の50,000人近くの人口を組み入れたコホート研究では、1日20本以上の喫煙者は、喫煙していない人に比べて、女性で1.4歳、男性で2.7歳生存期間が短かった(Ann Intern Med. 2006 Mar 21;144(6):381−9.)。

禁煙と死亡率の相関は、年齢、男女を問わず一貫しているが、特に40歳前に禁煙することで、早期死亡のリスクが大きく低下することが示されている。60歳以上からの禁煙でも、喫煙継続者と比べれば死亡リスクが低下する。そして、なんと80歳以上の喫煙者でさえ、禁煙により死亡率が低下する傾向が見られている(Arch Intern Med.2012 Jun 11;172(11):837-44.)。

心血管疾患

喫煙は全世界において、心臓血管関連死亡のうち10%以上に寄与していると見積もられている(WHO report on the global tobacco epidemic 2015)。たばこに含まれるニコチンには心血管系への毒性があり、冠動脈の収縮、凝固能の増加(血栓が出来やすくなる)、脂質異常症、および内皮機能の悪化といった作用が知られている。従って、禁煙により心筋梗塞や脳卒中を含む心血管イベントのリスクを大幅に軽減できる。また、禁煙により末梢動脈疾患の進行をも遅らせることができるため、再発性脳卒中のリスクも低下する。

悪性腫瘍•癌

喫煙は実に多くのタイプの癌における主要危険因子となる。少なくとも、以下に示す部位の癌については関連があるだろうと考えられている(J Natl Cancer Inst. 2004 Jan 21;96(2):99-106.)。

結腸直腸、食道を含む頭頸部癌、腎臓、肝臓
腎盂、尿管、および膀胱を含む下部尿路
肺、中皮腫、骨髄性白血病、鼻腔および副鼻腔、膵臓、陰茎、胃、子宮頚部

そして、禁煙は発がんリスクを低下させる。また、これらの喫煙関連癌を既に発症している喫煙者が禁煙することで、第二の喫煙関連悪性腫瘍の発症リスクも低下する傾向にある(J Natl Cancer Inst. 2004 Jan 21;96(2):99-106.)。

肺疾患

疫学研究で、喫煙はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の発症に最も寄与する危険因子であることが示されている。この疾患になったらとにもかくにも禁煙が勧められる。禁煙により、肺機能の急速な低下およびCOPDの発症リスクが低下する(Eur Respir J. 2004 Mar;23(3):464-76.)し、咳と痰の排出を伴う早期COPD患者の大半は、禁煙後最初の12ヶ月で症状が改善する(Am J Med. 1999 Apr;106(4):410-6.)。また、 COPDの悪化リスクは、禁煙後も時間とともに低下する(J Gen Intern Med. 2009 Apr;24(4):457-63.)。喫煙により、喘息や気管支炎を含む他の慢性肺疾患のリスクも高まる。禁煙で、これらの患者の呼吸器症状が改善することもある。

感染症

喫煙により、結核、肺炎球菌肺炎、レジオネラ、髄膜炎、インフルエンザ、および風邪を含むい様々なタイプの感染症リスクが増加するとされている(N Engl J Med. 2000 Mar 9;342(10):681-9,Arch Intern Med. 2004 Nov 8;164(20):2206-16.)。

糖尿病

習慣的に喫煙をしていると、長期的には2型糖尿病発症リスクも高くなる傾向がある。その一要因として、ニコチンがインスリン感受性を損なうことがあげられる。禁煙により、体重増加しやすくなるため部分的には2型糖尿病リスクに関わるかもしれないが、長期的には禁煙のベネフィットが上回る(JAMA. 2007 Dec 12;298(22):2654-64.)。

骨粗鬆症および股関節骨折

喫煙は骨の損失を加速するので、女性においては股関節骨折のリスク因子の1つとされている(Osteoporos Int. 2005 Feb;16(2):155-62.)。禁煙により骨ミネラルの密度は約10年後には元に戻り(自然減の要素を除いては)、股関節骨折の過剰リスクを減少させる傾向が示されている(相対リスク0.7,95%信頼区間0.5-0.9)(Am J Med. 1999 Mar;106(3):311-4.)。

生殖器系障害

喫煙は、妊娠中の合併症、早期閉経、勃起障害、および男性および女性の両方の不妊症リスク増加に関わることが知られている。特に、妊娠中の喫煙は、自然流産、異所性妊娠、低出生体重、など胎児の多くの病気に関連しており、そのうちのいくつかは末期に発症する可能性がある。従って、母親の禁煙は、胎児および母親の健康を守るために大切なことである(Cigarette smoking: Impact on pregnancy and the neonate)。

消化性潰瘍

喫煙により胃および十二指腸潰瘍の発症リスクが高まり、非喫煙者よりもその治癒により時間がかかる傾向があることが知られている。また、喫煙は消化性潰瘍の原因菌としてよく知られるヘリコバクター・ピロリ感染にも関連している。また、喫煙はピロリ除菌の失敗率を高める。禁煙により、消化性潰瘍の発症リスクが低下し、既存疾患の治癒率が高まる(Eur J Gastroenterol Hepatol. 2000 Aug;12(8):843-53.)。

歯周病

歯肉炎、歯周炎など歯周病発症リスクが高まることも良く知られるところだ。大規模な疫学調査では、喫煙経験者の歯周炎リスクは、禁煙後の年数とともに減少する傾向が示されている(J Periodontol. 2000 May;71(5):743-51.)。

術後合併症

手術前の禁煙により、創傷治癒の遅延や肺合併症などの術後合併症を予防できる可能性が高まる。また、その術前の禁煙期間が長いほど、術後合併症の発生率の低下する傾向にあることが知られている(周術期禁煙ガイドラインー日本麻酔科学会)。手術を受ける人は原則、事前に禁煙が勧められる。

腎不全、腸管虚血、高血圧など

55歳以上、420,000名の女性と530,000の男性を含む5つのコホートにおける大規模疫学調査から、非喫煙者と比較して、喫煙者は次の疾患による死亡率がそれぞれ高かった(N Engl J Med. 2015 Feb 12;372(7):631-40.)。

腎不全(相対リスク2.4,95%信頼区間1.9-3.0)
腸管虚血 (相対リスク6.0, 95%信頼区間4.5-8.1)
高血圧性心疾患(相対リスク2.4,95%信頼区間1.2-1.5)
感染症(相対リスク2.3,95%信頼区間1.6-2.4)
乳癌(相対リスク1.3 95%信頼区間1.2-1.5)
前立腺癌(相対リスク1.4,95%信頼区間1.2-1.7)

この研究では、肺炎、インフルエンザ、COPD、肺線維症以外の呼吸器疾患による死亡リスクも増加することが明らかになった(相対リスク2.0,95%信頼区間1.6-2.4)。また、禁煙によりそのリスクが減少し、禁煙期間が長くなるにつれてリスクが低下する傾向にあった。

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