処方薬を減らす際に参考となるツール6選

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

近年、潜在的に不適切な処方(Potentially inappropriate Medications;PIMs)を、適切にするための考え方や基準が知られつつある。ポリファーマシーという単語が市民権を得て、それに取り組むべく医師や薬剤師の考え方もシフトしてきた。

EBM(Evidence Based Medicine; 科学的根拠に基づいた医療)の概念が普及したことも、不適切な処方を考え直す契機だったのかもしれない。EBMは、エビデンスにのみ基づくものとか、エビデンス偏重主義的だとか誤解されている人もいるようだが、実際にはエビデンス、患者の価値観や背景、医療従事者の経験も踏まえ方針を考え行動していく様式のことを意味する。処方に対して、エビデンスは何か、その人に必要かと考えると酷く曖昧な根拠に依るものは限りなくある。それらを全て詳細に吟味してアクションしていくのは事実上困難であり、具体的なHowが求められている。そこで、不適切な処方を最適化するためのツールはいくつかある。以下にそれらの基準やガイドラインを紹介する。

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015は、高齢者において頻度の高い疾患である、精神疾患(BPSD、不眠、うつ)、神経疾患(抗認知症薬、パーキンソン病)、呼吸器疾患(肺炎、COPD)、循環器疾患(抗血栓薬、抗不整脈薬、心不全)、高血圧、腎疾患、消化器疾患(GERD、便秘)、糖尿病、脂質異常症、泌尿器疾患、筋・ 骨格疾患(骨粗鬆症、関節リウマチ)および、漢方薬、在宅医療、介護施設の医療、薬剤師の役割といった領域についてまとめてあるガイドラインだ。中止を検討すべき薬物リスト「ストップ」、使用開始を強く推奨する薬物のリスト「スタート」がまとめて紹介されている。各疾患の専門の方が見れば、内容に突っ込むべきところがないわけではないだろうが、パブリックコメントを募集しているので意見を寄せても良いかもしれない。

以下に紹介する、米国のBeers criteria、欧州のSTOPP(Screening Tool of Older person’s Potentially inappropriate Prescriptions)/START(Screening Tool to Alert doctors to the Right Treatment)も既に発表されているが、単に中止にばかりフォーカスするのではなく必要な薬剤は何かということも入っているのが大切な視点かと思う。

余談までだが、ガイドラインの作り方として近年勧められているのはMinds2014(※Mindsは厚生労働省の委託事業として種々の診療ガイドラインを作っている。医療情報を調べるならまず参照すべきサイトの1つ)から取り入れらているGRADEシステムで、現状これがもっとも科学的根拠に即した作り方になる。本ガイドラインはその手法に準拠して策定されたとある。因みにこれと対照的なのが専門家の意見、コンセンサスをもって作られる、コンセンサスガイドライン。もちろん専門家の意見よりも質の高いエビデンスの方が一般に信頼度の高い情報である。しかしながら、エビデンスが不十分な分野も当然あるし、あまりにも常識的なことは研究課題にすらならずエビデンスにならないこともある。すると死角が生じる。しかし、そこに治療方針が全くないでは困るので、そういう部分は専門家の意見の部分も踏まえた結果も含めて推奨度が決められているようだ。

Beers Criteria(ビアーズ基準、ビアーズリスト)

米国発祥の基準で、高齢患者一般が使用を避けるべき薬剤、特定の疾患を持つ高齢者で使用を避けるべき薬剤のリストをまとめたもの。各薬剤で問題となる副作用とその重篤度が一覧となっている。かつては専門家のコンセンサスによって不適切な薬剤のリストを考案するという手法をもって選定されたものであったが、今日ではシステマティックレビューの手法とエビデンスのグレーディングシステムを取り入れて検討されているようである。3年ごとに改訂がなされており、2015年度版が最新。2015年度版では
1)(中止後の)代替案の提示
2)重要な薬物間相互作用が箇条書きされた
3)腎機能低下時に容量調節が必要な薬剤がリストアップされた

といったところが主な更新点。詳細はこちらの原文を参照(J Am Geriatr Soc. 2015 Nov;63(11):2227-46.)。

STOPP/START Criteria

こちらは欧州発祥の基準。ある疾患に対して、どのような薬剤は中止を検討するべきか、逆に処方されるべき薬はなにかをリストアップしたもの。原則65歳以上に適応する。実際のリストは原文を参照(Age Ageing. 2015 Mar;44(2):213-8.)。検索すれば、日本語訳して下さっているありがたいページもあるのでそちらを見ると良いと思う。

Deprescribing guideline

「離れる」「下げる」といった意味合いの接頭辞「De」と処方を意味する「prescribe」の語感から、減処方のガイドラインとでも訳せば良いのだろうか。エビデンスに基づいて策定された減薬手順が、薬剤の分野別にフローチャート化された一枚のPDFファイルで公開されている。減薬あるいは継続の判断に迷った時にとても参考になる。現時点でPPI(プロトンポンプインヒビター)、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗精神病薬、抗糖尿病薬についてフローチャートが公開されている(関連記事:Deprescribing guidelinesー薬を減らす為のガイドラインー)。有用なので翻訳していこうか迷っているが、まだ手はつけていない。

Choosing Wisely

http://www.choosingwisely.org
米国発祥のキャンペーンで、この活動に賛同した専門学会がやらなくても良い医療や考え直した方が良い治療などを選んで公表しているものがリスト化されている。様々な診療行為を「やらない」ということは抵抗があるのかもしれないが、本来の医療者としての役割を考えればこの判断ができることは大切だ。Choosing Wisely Japan(https://choosingwisely.jp)も発足しており、同サイトに一般向けにその内容が日本語で公開されている(https://choosingwisely.jp/resources/)。Wikipediaでも紹介されており、その内容が箇条書きにされているのでわかりやすい(https://ja.wikipedia.org/wiki/無駄な医療)。

JAMAによる減薬の手順

米国医学会雑誌に、多くの疾患や問題を抱える患者に対して減薬を実践する上で参考となる具体的なステップが掲載されていたので紹介する。それが以下の5ステップだ。

1、服薬理由を明らかにする
2、有害作用がどれくらい起こりうるかを考える
3、各薬剤の潜在的な利益と害を評価する
4、中止の優先順位を決める
  benefit-harmの比率が最も低いもの、離脱やリバウンド症状が起こりにくいものを優先
5、減薬の実施とモニタリングを行う アウトカムの改善ないし有害事象の発現をモニタリング

そして、中止する薬の優先順位が次にあげる1〜4である。
1、適応外、禁忌、処方カスケードの源流になる薬
2、害が利益を上回る薬
3、症状がないのに服用している薬
4、余命が短く効果が期待できない予防薬

従来のように、単純にこの薬はやめた方が良いというだけではなく具体的手順が示されているところが特徴的だ。この原著論文はこちら↓
Reducing inappropriate polypharmacy: the process of deprescribing.
JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):827-34.
Scott IA, Hilmer SN, Reeve E, et al

色々紹介したが、もちろんこれらのツールは絶対的なものではなく、知ったからといって現場で介入するのは簡単ではない。「○○クライテリア」とか「スコアが○点」だからと言いたくもなるがあくまでもツール。リストにあるから「先生この薬って必要ですか?」などと安易に医師に言うのは失礼な言い方なので止めた方が良いと思う。医師とて必要だと思うから出しているのだろうから。こうした基準をきっかけにして、個々人の周辺情報を調べ、具体的にどうするのかということが大切かと思う。薬の副作用を新たな疾患と勘違いしてさらなる薬を処方してしまう「処方のカスケード」がしばしば問題になるが、そのカスケードにある薬剤を理由づけて説明できれば提案もしやすいのではないだろうか。

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