Q,骨粗鬆症の薬は本当に効果があるのですか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

骨粗鬆症の薬に限らず、予防の為の薬というのは飲んでいる本人としては
効果の実感がないことから「本当に効果があるのか」という質問を良く受ける。

回答としては
「骨折の既往があるリスクが高めの人には効果がある可能性が少しある。
 骨折の既往がなくリスクが低めの人にはあまり効果がない可能性が高い。」
となる。

今回は、骨粗鬆症の薬で最も使われていて骨折予防効果も最もあるとされている薬
「ビスホスホネート製剤」にフォーカスして詳細に解説しよう。

このタイプの薬は骨に付着して、骨のカルシウム分が血液に溶け出す(=骨吸収という)を
強力におさえる。結果、骨密度が増加する。
それで骨折を予防しようという主旨の薬である。

商品名でいうとボナロン、フォサマック(アレンドロン酸ナトリウム)、
ベネット、アクトネル(リセドロン酸ナトリウム)、
リカルボン、ボノテオといったものが主に流通している。

フォサマックやボノテオでは、「骨折介入試験」もおこなわれており、
骨粗鬆症における骨折がおおよそ半減することが示されている。
ということで、本当に良く使われる。

ここまでが、恐らく一般の方が一般的な医薬品の情報源を調べて得られる情報である。
「骨折が半減する」という上記の説明は嘘ではない。
しかし、詳細を把握すると印象がかなり変わるのではないかと思う。

それでは、ビスホスホネート製剤の効果を検討した非常に重要な臨床試験である
FIT (Fracture Intervention Trial:骨折介入試験)の詳細をみていこう。

この試験は、次のような形式で行われた。

大腿骨頸部の骨密度が低い55~81歳女性に対して、
アレンドロン酸5mg/日を24ヶ月間,その後10mg/日に増量する群と
比較対象としてplaceboを飲ませる群に分けて
脊椎骨折,非脊椎骨折,大腿骨頸部骨折が減るかどうかを検討する。

FIT1(Lancet 1996;348:1535)は脊椎骨折既往のある患者が対象で2.9年間の試験期間を設けた。

骨折の発症率を論文からそのまま抜粋すると
脊椎骨折 リスク比 0.45(0.27-0.72)
非脊椎骨折 リスク比 0.80(0.63-1.01)
大腿骨頸部(足の付け根)骨折 リスク比0.49(0.23-0.99)

細かい解釈は端折るが、
確かに、脊椎骨折と大腿骨頸部骨折は半減しているといって良い。

論文内の生存曲線を見ると、6~12ヶ月までは両群に差があまりなく,
12ヶ月以降でアレンドロン酸群とプラセボ群のそれぞれの曲線が離れている
つまり、投与開始1年以内は骨折予防効果がないことが示されている。

VERT MN (Vertebral Efficacy with Risedronate Therapy) Study

HORIZON Study

といったリセドロン酸やゾレドロン酸で行われた他の研究でも同じ傾向が示されている。

FIT1における大腿骨頸部(足の付け根)骨折予防効果をみると
上記リスク比からアレンドロン酸の服用で骨折が半減していると言える。

もう少し厳密にいうと、
3年間服用したら2.2%であった骨折率が1.1%まで下がった(=半分になった)と書いてある。

論文内の被験者数は両群とも約1000人で、
約1000人の患者を3年間治療したら22人から11人まで骨折する人を減らすことができた。

逆にいうと、1人骨折を減らす為には1000÷11=91人を3年間治療する必要がある。
91人の人がいたら90人は3年間無駄に薬を飲んでいるともとれる。

全て同じ事を言葉を変えて表現しているだけだ。

骨粗鬆症の患者数はおよそ1100万人いると言われている。
全員がこの薬を飲んだと仮定すれば(現実にはそんなことはないが)
およそ12000人を骨折から救うだけのインパクトはある。
1099万人くらいは飲んでも飲まなくても結果は一緒だ。

とはいえ、骨折は寝たきりの入り口となりうるインパクトのある出来事であるし、
ガイドラインとしては、骨粗鬆症の第一選択薬として推奨されている。

世の中に普通に出回る情報は大抵 情報の出元に都合の良い表現の仕方になるから
「骨折が半減する」という言い方になる。
これは、骨折予防の薬に限った事ではないのだが、
多くの方がもつ薬に対する印象というのは、そういったところから作られている。

薬を服用するか検討するにあたって、考慮すべき問題は治療効果だけではない。
経済面、副作用面も考慮に入れるべきである。

副作用面はまた別項に譲るが、次は薬剤費について検討する。

アレンドロン酸を3年間飲み続けて1人の大腿骨頸部骨折を減らすために必要な薬剤費は,

1週間に1回飲むタイプのアレンドロン酸35mgだと680円/錠なので、
680円/週×52週×3年×91人=965万3280円である。

同薬には、毎日飲むタイプがあり、毎日飲むタイプ アレンドロン酸5mgだと105.10円/錠
従って、105.10円/日×365日×3年×91人=1040万2700円となる。

プラスして骨密度や骨代謝マーカーを測定するための検査代,再診料 など周辺費用がかかる。
つまり1人の骨折を減らす為に、年間にかかる医療費は
最低でも1000万円を遥かに上回る。

実際には骨折予防のために、ビスホスホネート製剤に加えて
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKやホルモン系の薬などを追加される人もいるので、
それどころでは済まないだろう。

そしてその7割以上は当然保険で支払われている。

因みに、骨粗鬆症のガイドラインによれば、
大腿骨頸部骨折での入院費用は大体140万円(大体80~200万円の幅)くらいとされている。
予防費用の方が遥かに医療費を圧迫している。

他の骨折介入研究を紹介しよう。
FIT2(JAMA 1998;280:2077) 
椎骨折既往のない患者を対象とした追跡期間4.2年の研究である。
非脊椎骨折,大腿骨頸部骨折ともに有意差がなく、大腿骨頸部骨折を予防できないという結果が
示されている。

要は骨折リスクが低い人に飲ませてもあまり意味がないよということだ。

様々な論文でビスホスホネート製剤の効果を検討したものを統合解析した論文もあるが
言われていることは同じ事で、

骨折の既往がある人には効果があり、
既往がない人には効果があるとは言えない

ということだ。
つまり上記の骨折介入研究と同じ結果。
因みに死亡率には有意な差がない。

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