Q,骨粗鬆症の薬を長く続けると骨折が増えると聞いたのですが、本当ですか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

最近になってこの質問を受ける機会が出てきた。
答えは、「本当」である。

骨粗鬆症予防薬のビスホスホネート製剤を
3年以上飲んだら骨折の予防効果がさらに上がるのか研究した論文がある。

それが、JAMA2006;296:2927に掲載された
FLEX (Fracture Intervention Trial Long-term Externsion)研究というものである。

これは、以前書いた骨折介入研究のアレンドロン酸を飲んでいた群の患者を
更にそのまま継続するグループと中止するグループに分けて比べた
ランダム化”治療中止”試験である。

結果はどうであったか。
続けなかったら骨折が増えてしまうのではと普通は考えてしまいそうであるが、
果たしてそうではなかった。

なんと、アレンドロン酸を3年以上継続した方が
骨折が増加してしまったのである。

不思議だろうか。この結果は、
骨の強度を決める要素は骨密度だけではないということの証左でもある。

骨の強度は骨密度、骨量、骨質によってきまる。
骨粗鬆症の診断に良く用いられるDXA検査で調べられるのは
骨密度と骨量であり質までは分からない。

骨はミネラルやコラーゲンから出来ていておよそ1:1の構成比率である。

骨を支えるコラーゲン線維は鉄筋のようなもので、
このコラーゲン線維同士を繋いで橋渡ししているのが、架橋と呼ばれるものだ。
この架橋にも骨にしなやかさを与えるものと
しなやかさを失わせ骨を弱くするものがある。

実は、ビスホスホネート製剤で後者が増えることが動物実験では示されている。
骨密度は上がるのにもろい骨になる。硬いけど脆いチョークのように。

これが長期投与の弊害である。

米FDAに報告された有害作用情報
「Adverse Event Reporting System(AERS)」のデータによれば、
アレンドロン酸が上市された1997年以降の,alendronateによる骨折のリスクの経年変化を
みていくと上市5年以降,大腿骨骨折は特にリスクが上がっている。

そのためFDAは5年以上のビスホスホネート継続に対して、
使用を再検討するように警告をだしている。

5年以上で骨折がふえる事を示した、研究(JAMA 2010;305:783)もある。
5年以上のビスホスホネートの使用で,骨幹部骨折が2.74倍に増加している。

3~5年の使用では有意な増加はみられなかったが,
これは,使用開始後2~3年目で蓄積された効果を消費していって
利益がなくなるのが5年目位であることを示唆している。

3年以上のビス剤長期投与は余り意味がないというのが
現状の結論として有力になりつつある。

さて、そうなるとまた次の疑問が出てくる。
3年間使用後中止したら,いつか使用を再開すべきなのだろうか、と。

実は多くの骨折のきっかけは「転倒」にある。
骨密度を上げて骨折を防ぐ以上に、転倒しないようにして骨折を防ぐことが
有効である。

骨粗鬆症予防ガイドラインでは骨密度を上げる以外の対策が紹介されている。
例えば、起立性低血圧,視力,バランスと歩行,薬剤,認知機能環境危険因子などを
改善させていくといったものである。

例えば、向精神薬を中止すると転倒が66%も減る。
先のビス剤による骨折予防効果である51%を上回るのである。

他にも,太極拳や家庭環境の改善など,大きな効果が証明されているものもある。

具体的には次のような対策が例としてあげられている
・不要な眠剤,安定剤,抗不安剤を止める
・起立性低血圧の原因となるような,過剰な降圧剤,抗コリン作用を持つ薬剤の使用を止める
・リハビリで筋力トレーニングをする
・生活の場にある段差や障害物をなくしたり,手すりを付けたりして,バリアフリーにする
・夜間にトイレに行くときには,電気をつける
・排尿障害(前立腺肥大症,神経因性膀胱,尿失禁)の治療をする
・白内障,緑内障の治療をする

副作用の面も考慮に含めなければならないと先に書いた。
ビス剤を使用していると食道炎,食道潰瘍になりやすくなるので,
予防として添付文書には,「朝起床時に水約180mLとともに経口投与
服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避ける」
と書かれている。

副作用を列記していくと次の通り
・胃腸障害(食道炎,食道潰瘍)
・感冒様症状
・ビスホスホネート関連顎骨壊死
・心房細動
・筋骨格痛
・低カルシウム血症
・腎障害
・眼合併症

経口ビス剤が食道癌のリスクになるとする研究もある(BMJ 2010;341:c4444))
3年以上(平均5年)服用で、処方されなかった人のおよそ2倍食道がんが増えたとする研究だ。
因みに、この研究では継続期間に依存してその率が増えるということが示された。

この論文では長く飲む程、食道がんの発症が増えることが示唆されている。
2~18週では0.93倍
20週(約5ヶ月)以上では1.93倍と有意に発症率が上がる。
更には3年以上(平均5年)服用で,
処方されなかった人の2.24倍食道癌の発症率が上がる。

〈顎骨壊死の合併症〉(BRONJ)
頻度:特に静注製剤で強いが,経口剤について検討する。
顎骨壊死は,1万~10万人年に1人が発症すると言われているが、
ビス剤投与によりリスクが2.52~3.14倍になるとされていた。
1〜10万に1人が2〜3人になったところでという向きもあろう。

しかし、ある研究(JADA 2009;140:61)で,
経口ビス剤での顎骨壊死の発症率は4%(208名中9名)とされ衝撃が走った。

これは、ビス剤と顎骨壊死との関係が注目されるようになったために,
これまで以上に報告されやすくなったためであると考えられている。

因みに歯医者の友人は、実臨床での顎骨壊死の遭遇率は
この研究に近い印象で、案外珍しくないということを述べていた。

総投与量が増えてリスクが上がるのであれば、
今後継続期間が長くなると、
これまでいわれていたよりも頻度が多くなることが予想される。

ひと昔前だと、3年や5年を越えようがビス剤がそのまま
長期間処方し続けられることは当たり前のようにあった。
ようやく最近になって、そのトレンドがおかしいと一般に認知され始めた。

一応誤解のないように書いておくと、
個々の患者の骨折リスクを評価せずして、
一律に3年や5年で止めるようになったというわけではない。
骨密度が大きく改善しない例や新しく骨折をしてしまっているような
骨が脆いと思われる例では、5年を超えても続けるべきという説もある。

骨の材料となる、カルシウム、マグネシウム、リン、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質など
栄養をしっかり摂れば骨の質はある程度維持できる部分もある。

でも、この手の薬を飲むような方の中には弱っていて食欲もなく
薬の方が楽だ なんて言う人もいたりする。

しかし、効果•副作用•経済 様々な観点からトータルで見ると
優秀な薬とは言いがたいのではないだろうか。

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