医者も知ることができない薬の秘密

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

医者も知ることができない薬の秘密

出版バイアスというものをご存知だろうか。
否定的結果が出た研究は肯定的結果が出た研究よりも公表されにくいという
偏り(バイアス)のことである。

臨床研究とりわけ臨床試験においては、この出版バイアスが
大きな問題となっている。

否定的な結果の論文が公表されないことにより
医学的事実が過大評価されてしまうのである。

公表されないので、医師をはじめとする専門家でも情報にアクセスできない。
受療者側からすれば不利益を被る可能性が高まるということに他ならない。

以下は知人の医師から頂いた文面だが、事の重大さを感じる。
問題意識のある方はご一読されたい。

ーーーーー以下転載ーーーーーーーーー
本年1月から,イギリスで+AllTrialsという請願運動が始められました.
http://www.alltrials.net/home/japanese-translation/

「すべての臨床試験の結果は公表されるべきです。患者も、研究者も、薬剤師も、医師も、規制当局もみな、臨床試験の結果が公表されることによって得ることがあります。世界中のみなさんがこの誓願にサインをしていただけるよう、お願いします。
何千という臨床試験の結果が公表されていません。中には、登録すらされていないものもあります。
これらの臨床試験で何がなされ何が発見されたかは、医師にも研究者にも永久に知られることのないままになってしまうでしょう。そうなると、治療の判断は過ち、良い薬剤を開発する機会は失われ、そして同じ試験が繰り返されることにつながります。
過去から現在に至るすべての臨床試験は登録され、そしてその方法論と結果は完全に報告されるべきです。
私たちは、政府、規制当局、そして研究機関に、臨床試験が完全に公表されるよう必要な措置を実施するよう求めます。」

つまり,臨床研究,特に臨床試験には重大な出版バイアスが多く含まれており,
これが意図的に治療法(特に薬物治療)の効果を誤って(過大に)認識させることに
繋がっていることが,大きな問題になっています.

例としては、プラセボ対照の抗うつ剤の臨床試験のうちほぼ1/3が出版されていなかったため、
新規抗うつ剤の効果は32%ほど過大評価されていたというNEJMの論文があります。

Turner EH, Matthews AM, Linardatos E, Tell RA & Rosenthal R (2008)
Selective publication of antidepressant trials and its influence on
apparent efficacy. New England Journal of Medicine, 358, 252-260.

もっとも、抗精神病剤について同じ方法で研究をしたところ、
未出版率は17%で、結果もあまり変わらなかったですが、こちらはあまり取り上げられません.

Turner EH, Knoepflmacher D & Shapley L (2012) Publication bias in
antipsychotic trials: an analysis of efficacy comparing the published
literature to the US Food and Drug Administration database. PLoS
Medicine, 9, e1001189.

がんの領域では、もっと事情がひどく
Ioannidis JP & Karassa FB (2010) The need to consider the wider agenda
in systematic reviews and meta-analyses: breadth, timing, and depth of
the evidence. BMJ (Clinical Research Ed.), 341, c4875.

の試算によりますと、bevazisumabについて行われたPhase III
trialsのうち17~43%(癌腫によって異なる)が出版されておらず、
anti-TNFagentsでくくると54%が出版されていません。

どのような試験の結果が報告されていないのかは容易に想像されます。

調べ方の方法が違うので、上記のTurnerの数字と直接には比較できませんが、
臨床試験が幅広く出版されていないこと、
それによってさまざまな医学的治療がすべて過大評価されてきていることは間違いありません。

また,The Cochrane Collaborationが抗インフルエンザ薬の
Tamiflu(R)のシステマティックレビューを作成しようとしてRoche社に
臨床試験のデータ提供を依頼した際に拒否され,BMJにおいてTamiflu Campaignが展開されています.
http://www.bmj.com/tamiflu

これは,その後のBMJの「Open Data Campaign」に繋がっています.
http://www.bmj.com/open-data

この誓願にサインされることが、どれほどの影響を持つかは、まったく分かりませんが、
今やhttp://www.alltrials.net/supporters/
にありますように、
The Cochrane Collaboration
MRC
wellcome trust
NHS
British Library
SAGE
Royal College of General Practitioners
Royal Statistical Society
などなど何十という団体と、世界中から現在86,000人ほどのサインが集まっています。

ーーーーー転載終わりーーーーー

署名をしている団体も医学会では名の知れたそうそうたる顔ぶれである。
余談だが、これらの団体のいくつかが提供している医療情報源は優れたものが多く
私も時々利用させてもらっている。

臨床研究には様々なバイアスが介在しうるので、
情報を読み解く側、扱う側は特に注意が必要だ。

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