イチョウ葉エキスと薬の相互作用

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

イチョウ葉は健康食品やサプリメントとして非常に有名である。
日本の保険医療で扱うことはないものの、
薬との飲み合わせが問題になりやすい上に使いたい方も多いので
どうしても注目してしまう成分である。

基本的には、サプリメントなどで使われている
イチョウ葉エキスは、イチョウ葉を乾燥させアルコールまたはアセトンを用いて
フラボノイドやテルペノイドの有効成分を抽出したものである
(抽出過程はメーカー次第で厳密には違うところもあるだろう)。

因みに、イチョウ自体はとても丈夫で硬い樹で、高さ3~40m、直径1.2m以上にもなる。
長寿の木としても良く知られており,1000年も生きるものもある。
昔の医者はイチョウのこの丈夫さと活力に注目し、
人間にも有益であると考えたのだろう。
 
紀元前2800年も前から、イチョウの葉や実は中国で
脳機能改善や循環器障害などの治療薬として用いられてきた。

伝統的医学が注目されはじめ、イチョウの研究も進歩した。
なお、イチョウ葉研究の大家として中西香爾博士という有名な研究者がいる。
有機化合物の構造決定理論などで有名な博士で、ノーベル賞候補に
何度か上がっている。

もともと、イチョウは記憶力を増強するハーブとして注目され、
ドイツやフランスでは処方薬として、アメリカではハーブとして売られていた。

イチョウの効能は、NO(一酸化窒素)産生調節能によると考えられていたが、
解析の結果、イチョウ葉エキスは、NOの作用を阻害するだけでなく、
スーパーオキシドとヒドロキシラジカルも消去する
強い抗酸化物であることが判明している。

イチョウ葉エキスにはイチョウ特有の成分である
フラボノイド配糖体、ギンコライドA、ギンコライドB、ギンコライドC、
ギンコール酸、テルペノイド、プロアントシアニジンなどが含まれている。
複合成分であるため医薬品として扱うには中々難しい部分もある。

ギンコール酸はイチョウ種子に含まれ、接触皮膚炎やアレルギーを起こす成分であるため
イチョウ葉エキスからギンコール酸をできるだけ除去する必要がある。

イチョウ葉エキスを健康食品として用いるためには、
フラボノイド配糖体を24%以上、テルペノイドを6%以上含有し、
かつギンコール酸の含有量が5ppm以下」という基準を満たす必要がある。
これらのパーセンテージはメーカーの抽出技術によってバラツキがあるが、
上記が最低限のラインということである。

認知症患者を対象に欧米諸国で実施された臨床試験では、
イチョウ葉エキスはアルツハイマー型認知症患者および
脳血管性認知症患者の認知機能や記憶力を改善させる
という報告がいくつかある。

イチョウ葉エキスを使用する際の主なポイントは
1、前述の規格基準を満たしており、「ギンコール酸除去」と明記されているものを選ぶ
2、過剰に摂取しない
3、持病があり、医薬品治療を行っている人は、原則として医薬品治療を優先する
ことである。

ギンコライドの作用

イチョウ葉エキスに含まれるギンコライドは、血小板が凝集するのを抑えることで
血栓ができるのを防ぐ。ギンコライドBは脳や抹消の循環不全を改善させることで、
それに伴うめまい、耳鳴り、歩行時の痛みなどを軽減するとされているほか、
血小板活性化因子(Platelet activating factor:PAF)を特異的に阻害
することが知られており脳梗塞や動脈硬化の予防効果が期待されている。

PAFは、血小板凝集、アレルギー物質の放出、活性酸素の放出などを誘発し、
血栓形成、アレルギー反応、炎症などを引き起こす物資である。

さて、イチョウ葉と各薬剤との悪い飲み合わせについて症例と合わせて紹介する

1、ワーファリンとイチョウ葉エキスの飲み合わせ
症例:78歳 女性
経過:冠状動脈バイパス手術を受けて以来ワーファリンを継続服用していた。
   認知能力低下のため2ヶ月間イチョウは抽出物(Ginkgo biloba)を摂取したところ
   失認、歩行障害、食事摂取困難などが出現し、頭部CTにより左側頭葉に出血巣が発見された。

ワーファリンは血液凝固因子の生合成を抑制して血液の凝固を妨げるので、
心房細動が原因の心原性脳塞栓症や深部静脈血栓症の予防や治療に使用される。

ギンコライドBはPAFを阻害するので、ワーファリンを併用すると
血液を塊りにくくする作用が強くなるので
出血傾向が高まる。

歯茎の出血や鼻血、青あざなど軽度の出血傾向なら許容できるが
内臓出血や脳出血をおこすと障害が大きい。

ワーファリンなど出血傾向を助長する薬を服用中なら
イチョウ葉エキスの摂取は控えた方が無難であろう。
認知能力を含めた患者の体調変化にも留意することが大切である。

2、イブプロフェンとイチョウ葉エキスの飲み合わせ
症例:71歳、男性
経過 :時々めまいを認めて、2年半前よリイチョウ葉エキスを摂取していた。
さらに、変形性関節症の痛みを治療するためにイブプロフェン(1日 600 mg)が 投与されたが、
4週間後 に昏睡に陥った。CT検査の結果、多量の脳内出血を認め、翌日に死亡した。

PAFを介する血小板凝集阻害作用からに追加して、
血小板凝集能抑制作用を有するイブプロフェンと併用したために、
血小板凝集能が著しく抑制され、出血したものと考えられる

3、抗てんかん薬とイチョウ葉エキスの飲み合わせ
症例 :55歳、男性
経過 :抗てんかん薬であるパルプロ酸およびフェニトインが投与されていたが、
あるとき、強度のでんかん発作が出現し、死亡した。
死後の検査によって、 抗てんかん薬の血中濃度はいずれも
治療域以下であることが明らかになった 。

本症例では、バルプロ酸およびフェニトインは
肝臓の代謝酵素CYP2C9で代謝されるために、
イチョウ葉エキス摂取によつて血中薬物濃度が低下し、
てんかんのコントロールが不良になったものと考えられる。

CYP2C9あるいはCYP3A4で代謝される薬物と
イチョウ葉エキスを併用は注意が必要だ。

上で紹介した3パターンはどれもありふれた薬剤との飲み合わせだ。稀な例である。
しかし、イチョウ葉を扱うなら頭の片隅においておきたいものである。

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