”Behind the headlines”の紹介

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

”Behind the headlines”というNHSのサービスがある。
とても便利なサイトなので紹介しよう。

NHSとはNational Health Serviceの略で、イギリスの国営医療サービス事業のことで
患者の医療ニーズに対して公平なサービスを提供することを目的として設立された機関である。

NHSにはコクラン共同計画や
英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence; NICE)
といった有名機関が含まれている。
コクランやNICEのガイドラインはとても質の高い医療情報源であるが、
今回はより一般向けのコンテンツとして“Behind the headlines”にフォーカスして書いていきたい。

タイトル通りなのだが、このコラムは世の中に流布する健康関連ニュースのヘッドラインの
裏にある根拠の部分を客観的に分析して記事にしているコンテンツである。
凡百の健康ニュースを見るよりもこちらを読むほうがためになる。

このコラムを読んでいると、普段目にするメディア情報が
いかに歪められているかを実感する。

例えば、先日SNSで友人がシェアしていた記事
長生きしたければ、コーヒーを飲みましょう(研究結果)」(ハフィントンポスト)

こういう情報メディアは一次情報の抽出の仕方次第で、
歪められた情報を流布する可能性も孕んでいる。
いわば「伝言ゲーム」で記事を書くわけで、このゲームを想像すれば、
末端にいった時にどう解釈が変わるかは想像に難くないだろう。
原著論文一本に対して、同じ元ネタを使って記事を書いたまとめメディアが
他にも沢山ある。どこがどこかパクっているかもはや良く分からない。

さて、では同じ元ネタの情報が、一次情報を客観的に解説してくれる
Behind the Headlinesではどう書かれているか。
原文はリンク先にあるのだが、英語や長文を読むのが面倒な方のために
少々長いがなるべく原文に忠実にポイントを抜粋していく。
ハフィントンポストと比較した印象はどうだろうか。

ーー以下、”Behind the Headlines”の記事より抜粋(訳は筆者)ーー
★要点
•今回の研究は、カフェインの有無に依らず日常的なコーヒー摂取で心疾患などによる死亡リスクが減る可能性を示唆した
•3つのコホート研究の統合解析で208501人の医療従事者(Health professional)を20年間追跡調査した試験である
•結果;1~5杯/日のコーヒーを飲む人の方が全く飲まない人に比べて試験終了時には僅かに死亡率が低かった
•5杯を越えて飲んでも死亡率に統計的有意差はなかったが、2%だけ死亡率が上がる
•研究対象に喫煙者を組み入れるかいなかによって結果が変わる
•大量にコーヒーを飲む人と喫煙者はしばしば重複する。従って、コーヒーの効果を帳消しにした可能性がある
•コーヒーを日常的に飲むことにはベネフィットがあるとしつつも
 コーヒーを飲む人と飲まない人での死亡率の差は、統計的に有意であるものの
 減少率は5%~9%と大きくはない
•この研究デザインでは因果関係を調べることはできず、仮に出来たとしても言えることは、
 「もしあなたのライフスタイルがあまり健康的でなければ
 日々のコーヒー摂取が長期的な健康に僅かに寄与するかもしれない」という程度のことである。

要点をまとめた上で、Behind the Headlinesがどうゆう観点を持って分析しているかが以下に続く。

★情報ソースについて
研究を実施した研究者の所属機関は次の通り
Harvard School of Public Health,
Brigham and Women’s Hospital
Harvard Medical School
Indiana University
Universidad Autonoma de Madrid
National University of Singapore.

US National Institutes of Health. からの資金援助をもって調査が行われた。
特に報告すべき利益相反はない。
(例えば、コーヒーのメーカーなどから資金援助を受ければ結果を歪める可能性が高まる)。

Circulationという査読付きの医学雑誌に掲載された論文が一次情報である
オープンアクセスなので元の論文は誰でもオンラインで読むことができる

★どんな研究か(研究デザイン)
•前向きコホート研究。つまり3つの大きな被験者グループ(コホートという)を追跡調査したもの
•観察研究なので、被験者に特に介入することなく何が起きるかを観察して調査するものである
•この研究デザインは要素間の関連性を調べるのに有効(この場合はコーヒー摂取と寿命延長の関係)であるが、
 その1つの要因がもう一方の要因であると示すことが出来るわけではない
 (別の要素が入る余地がいくらでもある研究であるため)

★研究の組み入れ対象(研究機関と対象となった被験者)
研究者は3つの大きなコホート研究(1970年代と1980年代にスタートし、2012年12月まで行われた)の情報を使った。
誰がコーヒーをどの程度のみ、研究中にどのグループの人がどれだけ死亡したかを調査した。
年齢やライフスタイルなど結果に影響を与える他の要素は調整した。

特に、喫煙の有無に着目しそれがコーヒー摂取と結果にどう影響を与えたかをみた。
なぜならば、コーヒーを飲む人は喫煙することも多いからである。
カフェインの有無で結果が異なるか、特定の疾患の死亡率と関連があるか
こうした疑問に解を見いだすべく、それぞれ別個に計算を行った。

★主な結果
21~28年に及ぶ調査期間の中で208501人中31956人が死亡した。
コーヒー摂取群と非摂取群で死亡リスクが異なることが見いだされた。

0~1杯/日 死亡率が5%下がる (hazard ratio (HR) 0.95, confidence interval (CI) 0.91 to 0.99).
1~3杯/日     9%     (HR 0.91, 95% CI 0.88 to 0.95).
3~5杯/日     7%     (HR 0.93, 95% CI 0.89 to 0.97).
5杯以上/日 死亡率が2%上がる(HR 1.02, 95% CI 0.96 to 1.07) が統計的には有意差がない。

カフェインの有無による死亡リスクの差はほとんどなかった。それは3杯/日を越えても同様であった

非喫煙者はよりコーヒーを飲まない傾向にあることが判明した
5杯/日以上飲む人の1/3は非喫煙者であった

喫煙歴のない人に絞って解析したところ、5杯以上/日でも死亡率が下がった
つまり、どのような量でも喫煙をしない限りはコーヒー摂取は死亡率を低減させるという結果
ただし、5杯以上飲むグループを更に非喫煙者に絞ることによってサンプル人数が減ったので
この統計結果の精度の信頼性はやや下がる

★病気別の解析
コーヒー摂取している人は心血管疾患や糖尿病で死亡する率は下がったが、
肺がんや呼吸器疾患で死亡率は上昇していた(喫煙者を含む解析)。

喫煙者が結果を歪めている懸念があるので、非喫煙者で解析すると
コーヒーによる癌の死亡率変化はなかった。

研究者たちは、コーヒーの消費は死亡率低減と関連があるとし、
5杯/日以上の摂取で死亡率が減らなかったのは
喫煙者のヘビーコーヒードリンカーがいるからではないかとコメントしている。

★結論
コーヒーの摂取は5杯/日までなら、僅かに死亡率を低減させる可能性がある。
5杯以上の場合は上述した通り。

中程度のコーヒー摂取に関しては良い傾向が出ている。
しかし、コーヒーそのものが死亡率を下げたと証明出来るものではない。
他の要素がいくらでも入りうる余地がありそれを統計的に
調整しきれない研究デザインだからである。

研究の強みは大きく次の3つ
サンプルサイズの大きさ(被験者数が多いこと)
フォローアップ期間の長さ(調査期間を長くとったこと)
結果に影響を及ぼしうるファクター(特に喫煙)を考慮して統計解析したこと

しかしながら、それ以外の健康パラメータやライフスタイルなど結果に
影響を及ぼしうる要素については考慮されていない。

また、コーヒー摂取量の見積もりが不正確である可能性も否定しきれない。
カフェインの有無で分けて研究を行ったといっても
インスタント、フレッシュ、エスプレッソ、ラテ、カプチーノ
どんなコーヒーを飲んだかという部分まで調査できるわけではない。

また、サンプルサイズが大きいといっても被験者がアメリカの
医療従事者に限られており
一般人口と特徴が違わないとも言い切れない。

重要なこととして、死亡の相対リスクが10%以下というのは、
かなり小さな数値である。

カフェインを避ける人がある程度いることが分かった
理由としては、それ自体が刺激物であり特に夕方以降の摂取で
睡眠に影響を与えうる事、短期的に血圧を上げること
(心血管疾患を持っている人には問題になる可能性がある)。

また、流産に繋がる可能性も示唆されており妊婦は避けたがる人もいること
があげられる。

もし寿命を延伸したいという観点でみるなら、
コーヒーで大きな差がでることはない。
もし喫煙しているのなら禁煙し、健康的な食事、運動そして体重維持をした方が遥かに有効である。

ーーーーーーー一部抜粋終わりーーーーーーー

原著にもこのような情報が上記以上に詳細に渡って書かれている。
それを、いちいち読む時間がある人などそういないだろうから
まとめも大切なことではある。

都合の良い方向に解釈して情報を流布するのが世の常だから、
「コーヒーで死亡率が10%近く下がる」とコーヒーに関わる人(?)は
喜色満面で言いたくなりそうな結果であるが、「」の中の一言に
隠されたニュアンスは上述の通りである。

因みにコーヒーには抗酸化作用や抗がん作用があるとか、
色々メリットがありそうなことを示唆する研究も世には沢山あるし、
上記とは別の研究で寿命延伸を示唆する研究もある。
1つの研究で支持されているだけより、複数の研究で支持された
結果ならより確からしいと言える。
今回調査デザインの限界は上述の通りでやり方をかえれば
違う結果が出る可能性だってある。

僕自身は美味しいコーヒーが好きなので
少なくとも日常的にコーヒーを飲んでいて悪くはないのだなと
思える研究結果で良かったなという感じかな。

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