点眼剤と防腐剤

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

点眼薬を日常的に使用している人は多い。眼は身体の中でもとりわけ鋭敏な臓器で、
直接投与する点眼薬には、経口薬などとは異なる性質が要求される。

その1つが「無菌であること」である。
とはいえ、製造時に無菌状態であっても開封後に使い続けるうちに
微生物汚染の危険にさらされることになる。このため一般的な点眼剤には防腐剤配合が求められる。また、点眼剤の中には開封後1ヶ月以内に使用すると定められているものが多いのも同様の理由だ。

点眼剤と防腐剤
日本薬局方では、保存効力試験といって、製剤に菌を混入させて防腐剤の実際の効力を調べている。その試験をパスしたものだけが、保存剤(防腐剤)として使われている。

防腐剤が入っていれば汚染の心配はないかということをたまに聞かれるのでついでに言及するが、基本的には心配ない。ただし、もし誤った使い方をすれば汚染のリスクはある。従って点眼容器のノズルに触れないようにする、ノズルがまつげやまぶたに触れないようにする。そういった最低限のことを守って使うことが大切である。そうしていればまず心配ないだろう。

下表に主に用いられている防腐剤を記す。
点眼剤_防腐剤

点眼剤の防腐剤で、日本の点眼剤の薬6割にも使われているものが塩化ベンザルコニウムである。水溶性で低濃度で幅広い効力を持つことから汎用されている。

薬局で防腐剤フリーの点眼剤を好む人を見かけることは多い。好むというよりは、防腐剤アレルギーであったり、それによって眼や眼の周りが赤く腫れたりといった経験からそういう選択をしているのかもしれない。防腐剤は微生物へ効力を発揮するが、細胞毒性をもつので人体に対しても全く無害というわけにはいかないのである。ただし、前提として防腐剤は人体に障害を認めない濃度で含有されている上に、通常は点眼刺激による涙の分泌でさらに濃度が下がるので、通常悪影響はでない。

でないはずではあるのだが、緑内障、白内障、黄斑変性症、ドライアイなどで複数の点眼薬を併用したり、1日に何回も点眼したりという例は多く、またその使用が長期にわたることも多い。糖尿病、アレルギー体質など、問題になりやすい因子を持つ人も多くいる。こうした場合は配慮が必要である。

こうした問題がある人にも使えるのが、防腐剤を含まない次の2タイプである。

1、1回使い切りのUD(ユニットドーズ)タイプ
使い捨てタイプ。片眼または両眼に1回の点眼で終了する。
従って汚染の心配がないので、防腐剤を必要としない。
安全性は高いが、コストが高い、かさばるなどの欠点がある。

ムコスタUD、ヒアレインミニ、コソプトミニ などがある。

2、容器を工夫したPFタイプ
PFはpreservative free(即ち防腐剤フリー)を意味する。
容器先端にメンブランフィルターを組み込み、二重容器とを
組み合わせた複雑な構造で微生物の侵入を防ぐ。

外観は従来の容器とさほど変わらないのだが、1滴が出るのに
少し時間がかかる。実際、けっこう出しづらいという人は多い。
(薬局でデッドストックになって、中身を捨てなければいけない
なんて時に捨てるのが大変なのがこのPFタイプだったりする。)

リンベタPFなど 名前にPFが入っている点眼剤は防腐剤フリーである。

防腐剤フリーというカテゴリーにはならないが、角膜上皮障害作用が問題となる
ベンザルコニウムを使わずに副作用を軽減している製剤
を紹介していこう。

例えば、アイケアという製品は
角膜障害の低減を目的に防腐剤をクロルヘキシジングルコン酸塩に変えている。

緑内障の薬として有名なトラバタンズ点眼液は
ホウ酸/ソルビトール(緩衝剤)存在下で塩化亜鉛が示す保存効果により
長期保存を可能としている。

因みに、緑内障の治療薬であるプロスタグランジン関連点眼薬を白内障の手術後早期に
使うと、黄斑浮腫が多発するのだがこれは防腐剤のベンザルコニウムが原因の1つと考えられている。

トラバタンズはプロスタグランジン関連製剤でありながら、ベンザルコニウムを含有しないが故に
防腐剤黄斑浮腫の発生頻度が少ないとされている。
少ないというのはゼロではないからで、もしかしたら主剤の副作用という可能性もある。

※黄斑浮腫は網膜の中心である黄斑部がむくみ、
 視力低下や視界がぼやける/ゆがむなどの症状を示す疾患。
 防腐剤が原因で起こす場合、特に 防腐剤黄斑浮腫 などと呼ぶこともある。

因みに、クラビット(レボフロキサシン)などニューキノロン系抗菌薬の点眼剤では
抗菌薬そのものが防腐剤の働きもするため防腐剤が含まれていない

コンタクトレンズとの関係について
点眼薬成分にはコンタクトレンズに吸着されてレンズや眼に影響を与えるものがある。
防腐剤もその1つである。

コンタクトレンズに薬物が吸着され、蓄積、濃縮し、それが徐々に放出されることで
薬物との接触時間が多くなる。結果として、角結膜上皮障害が起こる。

基本的な対策として、コンタクトレンズは外して点眼し、
その後は5分かできれば15分以上経ってからコンタクトを装着するようにする。

防腐剤が含まれていないか、防腐剤+吸着防止剤が入っているものでは
コンタクトレンズをつけたまま点眼できるものもある。

点眼剤は防腐剤のみならず、緩衝剤、等張化剤、pH調整剤など多種の
添加物のバランスで製剤としての安全性や安定性を保っている。

ベンザルコニウム塩化物も界面活性作用や薬物の角膜透過性を
高める作用を有しており、実際の製剤の中での役割がある。

添加物=悪というわけではないのは申し添えておこう。

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