Deprescribing guidelinesー薬を減らす為のガイドラインー

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

薬は症状を抑えるために次々と足されていくことがある。ひどいケースでは、副作用を抑えるという名目のもと雪だるま式に薬が増え、どれが効いていてどれが効いていないか良く分からなくなってしまうこともある。どの症状がどれの副作用かもよく分からないという状態になった医療の被害者とも言える人は沢山見てきた。この病気の治療にはこういう薬を使いましょうというガイドラインは沢山あるのだが、薬をこれだけ飲んだら使い過ぎなのでこう減らしましょうというガイドラインは僕の知る限りはそうない。

そこで、今日紹介するのは ”Deprescribing guidelines for elderly
http://www.open-pharmacy-research.ca/research-projects/emerging-services/deprescribing-guidelines

というもの。減らしていくことを意味する接頭辞のDeと処方を意味するprescribe
つまり処方薬を減らしていくためのガイドラインである。

今までエビデンスベースドで減薬の手順を示したものは多くなかったので、めをひく存在である。そもそも、前提として必要以上に増やさないことが大切なのであるが結果としてそうなってしまった人がいる以上、こうした試みは大切だと思う。

現在、PPI、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗精神病薬という過剰に使われがちな3つのカテゴリーについて減薬のガイドライン作成について取り組んでいるようでありPPIに関する減薬ガイドラインは既に公開されている。

下記のEvidence based PPI deprescribing algorithm という図は
本当に良くできているなぁと思う。 

deprescribing_algorithm_PPI_1

http://www.open-pharmacy-research.ca/evidence-based-ppi-deprescribing-algorithm

いきなり略語を使ってしまったが、PPIとはプロトン・ポンプ・阻害薬(proton pump inhibitor)の略で
胃壁細胞にあるプロポンポンプ(H+/K+ATPase)を阻害して胃酸の分泌を抑える薬である。PPIのお陰で胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療が劇的に改善したし、とくにピロリ菌除菌への利用価値は非常に大きい。胃潰瘍、消化管潰瘍穿孔、出血などが減少したのもこの薬のおかげというのが多分にあるだろう。だが、特に長期の服用はリスクが大きくなるし、過剰使用されがちな薬剤としても有名である。実際に医薬品の売上高ランキングで常に上位にランクインしているのがこのグループの薬で、例として、パリエット、タケプロン、タケキャブ、オメプラゾール、ネキシウムといった薬剤があげられる。

PPIによる副作用の報告は近年積み重なっており、その例をあげていくと
•胃酸で殺されるはずだったバイ菌の逆流による肺炎
 肺炎リスク上昇の報告:Expert Rev Clin Pharmacol. 2012 May;5(3):337-44
•偽膜性腸炎の増加
 The American Journal of Gastroenterology 107, 1011-1019 (July 2012)
•肝硬変があって腹水が溜まっている人では、腹水感染を起こしやすくなる
 Ann Pharmacother October 2012 46:1413-1418)。
骨折の増加
•総死亡率が上がるなんてものまである
JAMA Intern Med. 2013;173(7):518-523. doi:10.1001/jamainternmed.2013.2851.

などの例がある。いちいちあげないがこうした副作用報告の研究自体は他にも沢山ある。ざっくりいったので、だから危ないなんて言って必要な時に飲まないなんてことになると困るしキッチリ治療者の意見は取り入れて害のリスクをベネフィットが上回るならちゃんと使って欲しいが。たかが胃薬とあなどれないので注意が必要ではあるということだ。上記は臨床試験の結果として、そうした副作用が増えるという例であるが
薬理的な側面から考えても副作用が起こりそうなことが想像できる。

PPIは先に述べた胃壁細胞のプロトンポンプのみならず、あらゆる真核細胞に存在するV型プロトンポンプ(V-ATPase)を抑制する。V型プロトンポンプはATP依存性のプロトンポンプの1つであり、身体の全ての細胞に存在する細胞内膜を適切なpH(多くは酸性)に保っている。

またこのV-ATPaseは、腎細胞や破骨細胞、好中球、マクロファージ、精巣細胞、腫瘍細胞の形質膜などに存在しており、それぞれ尿の酸性化、骨吸収、免疫系細胞の適正pH保持、精子成熟、腫瘍細胞の浸潤に重要な役割を果たしているとされている。下記の文献にそうした記載がある。

Arch Biochem Biophys. 2008 Aug 1;476(1):33-42. doi: 10.1016/j.abb.2008.03.025. Epub 2008 Mar 29.Function, structure and regulation of the vacuolar (H+)-ATPases.Jefferies KC1, Cipriano DJ, Forgac M.

このV型プロトンポンプも阻害するとどうなるか。結果として、免疫抑制や抗炎症作用を有するとともに
骨折増加、神経機能、腎機能、生殖機能の低下という影響を及ぼしうることが予想できる。ただし、それは統計的には大きな影響といえるほどではないかもしれないが。過剰には使用しない方が良いということは少なくとも言えるだろう。

さて、ここで先のアルゴリズムに話を戻そう。ここにはどういうケースでは減薬できそうかが示されている。逆にどういうケースで必要そうかというのも分かりやすく書いてある。なかなか参考になりそうなフローチャートではないだろうか。ただ、この図を見て減薬できそうなシチュエーションでしていない人は相当数いるだろうなぁと思ってしまうが。

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