ツムラの漢方薬で「桂枝」と名のつくものに実は「桂皮」が配合されている理由

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漢方薬で有名なメーカーはいくつかあるが、中でもツムラは医療用の漢方薬で圧倒的なシェアをほこっている。
先日、桂枝加芍薬湯(東洋)の処方を受けた際に、顧客より桂枝加芍薬湯(ツムラ)への変更を依頼されたのだが、はたと思った。両者の成分は違うのかと。それで効能や適応が違ってしまえば(稀にメーカーを変えるとそういう問題がある)いけないと思い調べることにした。下表に示すが、ツムラと東洋で桂枝加芍薬湯の含有生薬表記が異なるのである。

桂枝加芍薬湯比較

※両者の添付文書より成分量を抜粋した

しかも桂皮が入っているにも関わらずツムラの漢方に「桂皮」の名称を含むものはなく、代わりにすべて「桂枝」が名前に入っている。桂枝茯苓丸、桂枝加朮附湯、桂枝湯など全てにおいてそうなのだ。ネットで調べると桂皮と桂枝は違うのだとか、同じ植物だが使用部位が異なることにより効能も微妙に変わるのだと書かれているブログも沢山あった。でも、どれも当を得た記事という感じがしない。

そこでメーカーの学術部へ問合せを行った。そこで頂いた回答は次の通りであった。上記の多くのブログはいい加減なことを
書いていたのだとこれで分かったのだが。

ーーーーー以下ツムラの回答を引用改変ーーーーー
「傷寒論」「金匱要略」における張仲景方で「桂枝」とあるのは、厳密な考証に基づくと、今日の日本における桂皮に該当します。唐代までの張仲景の医書には、ケイヒ類生薬の薬物名は「桂」や「桂心」の名で示されており、その記載からこれらは、
今の「肉桂」(乾燥樹皮)やその表面のコルク層を除外したもののことであり、いずれも「桂皮」でありました。「桂枝湯」のように「桂枝」の名があったことを、江戸時代、香川修庵は『一本堂薬選』のなかで、「桂の採取は枝を切り落として皮を用いたのだろう。それで桂枝と呼んだ。後世になると桂皮だけでは需要をまかなえず、幹皮まで採取するようになる。その厚い皮を切ると乾肉のようなので、肉桂と呼んだ。」と考察しています。日本の古方派はこれにならい、桂枝湯などの張仲景方の「桂枝」は「桂皮」のことであるとして用い、これが一般化され、今日の日本薬局方にも繋がっています。
(出典:真柳誠.東洋医学.1997, 25(2), p.33.)

また、日本における臨床の積み重ねも桂皮で行われ、「漢方診療医典」や「漢方診療の実際」の記載になったと考えられます。
漢方製剤の承認条件は「日本で発達した処方」と定められているため、桂皮、すなわち「日局ケイヒ」になったと言えます。ちなみに、日局ケイヒは「Cinnamomum cassia Blume の樹皮または周皮の一部を除いたもの。(16局)」とされています。
(出典:鈴木堯.漢方の臨床.1989,36(7),p.1418.)

弊社製品は日局の記載に従って製造をしています。

今日伝わる張仲景方の生薬名がほとんど「桂枝」になっていることについては、北宋の林億等が校訂・初刊行するとき、記載を統一するために「桂枝」としたものであり、これが「桂心」であることは「桂枝去皮」の記載に示されています。(枝の皮の表面にあるコルク層を除くことであり、枝の皮を取ってしまったら木質部のみが残り、有効成分は全くないことになる。)
(出典:真柳誠.薬史学雑誌.1995, 30(2), p.96.)

以上、ご参考になれば幸いです。

ーーーーー回答引用終わりーーーーー

ええ、大変参考になりました。本当に勉強になった。この回答を見た時に、僕は漢方についていかに不勉強であるかを反省した。桂皮は漢方を構成する生薬の中でとてもメジャーなものである。桂枝湯に代表されるように桂皮含有漢方は本当に沢山ある。そんな中心的な生薬について、曖昧な理解でいたのだから。これを機会に体系的に桂皮含有漢方をおさえていこうかな。

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コメント

    • cotton time
    • 2017年 6月 26日

    とても勉強なさっていて感銘します。理系の方なのでしょうか?ただ1点だけだ話しが脱線しますが、的は弓矢の的から由来してます故的は得るものではなく射るものです。的を射るが正しい日本語です。ちなみに的の中心の黒点を図星と言い、みなさんが良く使う言葉だと思います。林修みたいで済みません。悪い癖です。あしからずm(_ _)m

      • zakiyama
      • 2017年 6月 26日

      コメントありがとうございます。当方の記事では「当を得る」と書いており(的を得るとは書いておりません)これは誤用ではないものと思われます。「的を射る」とは意味合いが異なる言い方ではありますが。とはいえ、ご教示頂きありがとうございます。沢山文章を書いているのでどこかに誤用があってもおかしくありませんので、こうしたご意見ありがたく思います。

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