全てのタイプの痛みを抑えられる薬は存在しないー痛みの分類ー

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

 歯の痛み、頭痛、腰痛 本当に痛みというのは辛いものである。我慢出来る程度ならば良いのだが、痛みがひどくなって薬などを使うまでなかなか消えないというケースがとても多い。それで鎮痛薬を使って対処しようということになるのだが、一概に鎮痛薬といっても効き方は多岐にわたる。全てのタイプの痛みを抑えられる薬というのは存在しないのである。弱めの痛みに効く薬は、他の鎮痛剤と組み合わせない限りは大抵強い痛みを抑えきることはできない。効果的に痛みをコントロールしたいのであれば、痛みの程度やタイプと薬のそれとマッチさせなければならない。

そこで、今日は5つの痛みタイプを紹介し、それらがどのような薬あるいは栄養で対処されうるかを紹介する。

侵害受容性疼痛

身体の組織に対するダメージがもとで起こる痛みのこと。
痛みが頭痛や軽いねん挫など軽度のものであれば、一般的に使われている市販薬の痛み止めで対応できる。
成分としては、アセトアミノフェン、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性消炎鎮痛(NSAIDs)を含むものがあげられる。

アセトアミノフェンは痛みのシグナルが脳に到達するのを抑制する。NSAIDsは痛み、炎症や熱を起こす物質を作る酵素を阻害する。低用量のコデインとアセトアミノフェン、アスピリンまたはイブプロフェンなど
を含む配合剤は中等度の痛みくらいまでは対応できるだろう。日本では、そういった薬は基本的に処方箋医薬品が多いが、市販薬でも上記成分が入ったものは購入可能である。

因みにアセトアミノフェンはアセトアミノフェンの1日上限用量は4g(=4000mg)であることには注意が必要だ。それ以上飲むと肝臓のダメージが大きく致死的になることが稀にある。といってもそこまで必要な人はまずいないのだが。

骨折や手術などに伴う強い痛みに対しては、処方薬の中でも強い痛み止めが適する。例えば、モルヒネの錠剤もしくは注射などである。オピオイド受容体という脳、脊髄や身体の他の部位にもあるたんぱく質に作用して痛みをおさえるモルヒネ様の薬もある。例えばトラマドールなどがそうである。これらのオピオイド受容体は体内に元々ある天然の痛み止めであるエンドルフィンと同様の働きをする。

神経性の痛み

神経系へのダメージによって引き起こされる痛み。
上記の侵害受容体疼痛に対して有効なNSAIDs、アセトアミノフェン、モルヒネなどはこのタイプの痛みにはあまり効かない。背景にある痛みのメカニズムが異なるからである。

意外に思われるかもしれないが、抗うつ剤や抗てんかん薬が神経性疼痛の第一選択薬となる。

抗うつ薬は元々体内にある疼痛を抑える経路を活性化することで神経性疼痛を抑える。これには、脊髄レベルでの痛みシグナルを抑える脳の命令を強める経路も含まれている。

抗てんかん薬が神経性疼痛を抑える詳細なメカニズムはそれぞれあるが結果的には痛みのシグナルを弱めるという点は共通している。近年よく使われる神経性の痛みに対するリリカ(プレガバリン)は抗てんかん薬系の薬剤である。ただし、値段が高い割には抗うつ剤タイプと比して有効性がさほど優れているわけでもなく依存や眠気もあるので使いやすい薬ではないのだが。

片頭痛

片頭痛というのは特に人を衰弱、消耗させるタイプの痛みである。気持ち悪さ、吐き気、嘔吐を伴ったり視界がチカチカ光ったり耳鳴りがしたりと様々な症状と伴うこともしばしばだ。数時間で終わることもあれば、数日も痛みが続くこともある。視界がチカチカしたり匂いの知覚が変わったりというのは片頭痛が来る前兆であったりする。

その前兆の段階で、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン又はエルゴタミン(脳血管を収縮させることで片頭痛を緩和する薬)を用いれば片頭痛を抑えたり、その症状の程度を和らげることが可能である。症状が重い片頭痛を持っている人は、トリプタン系と言われる脳血管拡張を抑える薬剤が有効である。

また、片頭痛の人はマグネシウムやビタミン類の栄養素が不足していることが多く栄養療法が奏功することがある。具体的には、 セロトニン(神経系)、交感神経系、 ミトコンドリア、マグネシウム、ラジカルスカベンジャー(ビタミン類など)にフォーカスして3~6ヶ月以上継続して栄養摂取して治療したりする。

それらは大豆製品、果物緑黄色野菜(ビタミンA,B,C,Eなど)、牛乳(セロトニンの前駆物質であるトリプトファン含有製品)などに含まれる。薬でいちいち対処するのは結局症状を根本から抑えられていないので栄養療法を併用して、最終的に頭痛の頻度が少なくなったら薬を減らすような手順をとるのが妥当ではないかと思う(もし栄養で良くなるなら)。

慢性炎症性疼痛

大人で、特にある程度歳のいった方で非常に多いタイプの痛みである。変形性関節症や骨関節炎などにおいてもっとも一般的な痛みでもある。変形性関節症における慢性の痛みは、一般的に膝や臀部に出やすい。関節軟骨とその下の骨が破壊されていくと、関節が赤く腫れ痛みを引き起こす。このタイプの痛みには一般的にアセトアミノフェンが第一選択となる。より痛みが強い場合にはナプロキセンのようなNSAIDsの方が効果があるかもしれない。しかしこのタイプの薬を長期連用すると消化管出血、潰瘍などの副作用リスクがあがる。あまり多くはないが、モルヒネやフェンタニルのような麻薬性鎮痛薬が処方される場合もある。

癌性疼痛

癌性疼痛の多くは、腫瘍が骨、神経やその他の臓器などを圧迫することによって生じるものである。癌の放射線治療や化学療法によって痛みが引き起こされることもある。中程度〜強度の痛みに対してオキシコドンやモルヒネなどの鎮痛薬を定期的に服用し、時にアセトアミノフェンを併用する。

ふらつき、めまい、眠気感などがそうした麻薬性鎮痛薬を増量していくにつれて強くでることがあるが、一般的には数週間でそれらの症状には慣れていく。吐き気、嘔吐や便秘などの副作用を防止するために吐き気止めや下剤が治療初期に開始される。吐き気は通常2,3週間で慣れ症状が出なくなる。しかしながら、便秘に慣れはなく続くので下剤をうまく続けていくことが大切になる。神経の障害を伴う癌性疼痛の場合は神経性疼痛に対する薬が追加される場合もある。

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コメント

    • myu
    • 2016年 10月 13日

    こんにちは

    副作用による認知障害の件ではありがとうごさいました。
    私は、線維筋痛症で痛みをリリカ、サインバルタ、モルヒネで痛みを抑えています。(乳がんは初期治療が終わり問題なく過ごしています。)
    ご意見を伺いたいのですが、モルヒネを何年(痛みが改善しない場合、何十年)も飲み続けることが可能なのでしょうか?
    私の場合、CYP2D6が*4/*5のためトラマールやオキシコドンによる疼痛緩和ができないと言われています。
    モルヒネの長期服用に不安があるのですがいかがでしょう?

      • zakiyama
      • 2016年 10月 14日

      モルヒネは、痛みがある場合は依存性や耐性(効きが悪くなる)などは生じないというのがセオリーで長期使用に耐えうる薬です。当方でざっと論文検索した限りでは、モルヒネの長期投与で寿命が短くなるとか予後が悪いとするエビデンスはなく、むしろ痛みの管理を良好にすることで生活の質があがる例が多いようです。使用に対して不安になり痛みを我慢することで生活の質が落ちることの方がデメリットとして大きいということですね。そういう意味ではご安心して頂いて良いかと思います。もちろん、副作用との兼合いは常にあるかとは思いますが。

      CYP2D6非活性型の場合はオピオイド系鎮痛剤の選択肢がかなり限られ、その代謝経路を回避するとなるとCYP3A4を介するフェンタニルやグルクロン酸抱合(要はCYP2D6を介さない)を受けるタペンタドールなどがあります(参照記事 http://drug.tokyo.jp/archives/1352)。しかしローテーションに関しても一定の方針があるので、仮にするとしても担当医の支持を仰がれるのが良いかと思います。この件に関して調べた文献に関しては、近い将来ブログで紹介させて頂こうかと思います。

        • myu
        • 2016年 10月 16日

        ご回答ありがとうございます。
        モルヒネに関しては、服用することの気持ちの負担が軽くなりました。
        CYP2D6に関しては、『日本人には珍しい』ということだけでなかなか理解されている医師が少ないので薬の選択が難しい状況です。ぜひ、何か情報があれば発信していただけると幸いです。

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