抗うつ薬は本当に効果があるのか

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始めてきた方は「このブログを通じて医療従事者と患者さんに伝えたい想い」をお読みください。

抗うつ薬には本当に効果があるのか、疑問に思われたことはないだろうか。今回は、代表的な抗うつ剤について客観的に評価を行ったらどうであったかについて触れていきたい。

以前書いたこともあるが、代表的な抗うつ薬としてSSRIというタイプのものがある。気分に関わる神経伝達物質である、セロトニンの脳内での濃度を高めて神経伝達をより良くしてうつ状態を改善しようという薬のことだ。代表的なものとして、パキシル(成分名:パロキセチン)がある。

一方少し古いタイプだと三環系抗うつ薬というものがある。これらは脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンの量を増やし、神経の働きをよくする。ノルアドレナリンの増加は「意欲」を高め、セロトニンの増加は不安感をやわらげ「気分」を楽にするとされる。

因みに、このタイプの薬は膀胱の収縮を抑える作用(抗コリン作用)や尿道を閉じやすくする作用(α刺激作用)を持つので夜尿症(おねしょ)に使われることもある。また、神経性の疼痛に対しても応用されることがある。このタイプで有名な薬としてトフラニール(成分名イミプラミン)がある。

2001年の話だが、これらの薬剤によるうつ病治療に関する臨床試験があった。
SmithKline Beecham’s Study 329 (published by Keller and colleagues in 2001

この研究でパキシルには効果があるとされていた。しかし、以前からデータに不明点が多く信憑性に欠けるという指摘があった。発売元であり当該研究を行ったGSKはそれを問題として取り上げず、「これは正確な評価だ」としてデータを公表してこなかった。

しかし、2015年になってこの試験を再評価したものが出版された。この再評価に関しては“restoring invisible and abandoned trials” (RIAT)という国際的な研究者グループが主導して行った。

RIATの活動として、未出版•未発表のデータの公表を要求して研究によって報告された効果を正しく評価できるようにする試みがある。近年、臨床試験データの公表に対する要請が高まっており情報の透明化をしていこうという力強い流れがある。それは、以前All trialsという運動の紹介でも触れた通りである。今回はGSKから77000ページにも及ぶ生データを取り寄せてRIAT主導で解析を行うことに成功している。その労力たるやいかばかりか。そして、今回のこの抗うつ薬に関して、未出版・未発表を含みミスリーディング出版の修正を行った上での再解析が出版された。

それが以下の論文である。
Restoring Study 329: efficacy and harms of paroxetine and imipramine in treatment of major depression in adolescenceBMJ 2015;351:h4320

論文の詳細な吟味は省くが、パロキセチンとイミプラミンの有効性は統計学的にも臨床的にもプラセボと比べて有意差がみられないという結果になった。加えて、パロキセチン群では有意な有害事象の増加があり、自殺思考・行動、他の重度副事象イベント増加があり、イミプラミン群では心血管障害の増加があった。

パキシルとイミプラミンは偽薬と有効性において差がない上に、安全性には問題がある。効果がなくて副作用だけがあるのでは使用する意義が見いだせない。何故再評価するとこういう結論になるのか。

単純に効かないからと断じても良い気もするが、普段患者と接している印象として薬が効く人は確かにいる。そもそも身も蓋もないことだが、プラセボでも効く人は効く。抗うつ薬も効く人には効くが、対象集団をひろげて統計解析すると平均として効かないという結果が出るという側面もある。そもそも、この年齢(思春期)できちんとしたプラセボ対照二重盲検ランダム化試験で、有効性や有用性を示したものはなかったかもしれない。

ここで臨床試験の背景について敷衍して考えてみたい。臨床試験では、通常よりも医療機関で臨床試験や薬剤に関する説明が丁寧になる傾向があると聞いたことがある。この試験に関しては、どちらがプラセボでどちらが実薬(パキシル又はイミプラミン)か薬を投与する側もされる側も分からないデザインなのでどちらが有利になるとかいうことはない。しかし、そうした丁寧なフォローが患者ケアの一助となりうる。従って、臨床試験自体が治療を助けると、純粋な薬の効果が薄められている可能性が出てくる。

とはいえ、有意な差として検出できない ということは結局その程度ということなのだろうか。

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