世界初のデング熱に対するワクチンとその効果

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世界初のデング熱に対するワクチンとその効果

世界初となるデング熱に対するワクチンが、メキシコで承認されたことが海外でニュースとなっている。デング熱は蚊によって媒介されるが、なんと世界人口の約半数をリスクにさらしうるとまで言われている感染症である。そんな感染症予防への歴史的なStepである。

サノフィが開発したDengvaxiaという同製品は今後ラテンアメリカ、アジア、欧州などでの承認を見込み、世界保健機関(WHO)は、4タイプあるデング熱の全ての爆発的大流行を阻止することができるのではないかとコメントしている。その4タイプに対する効果は最後に詳述する。

デング熱は増加傾向にある。同じように蚊によって媒介されるマラリアとは異なり、デング熱は、貧しいアフリカ諸国に加え、ラテンアメリカとアジアなどの都市人口に影響を与えうるポテンシャルがある。サンパウロでの水不足により、住民は鍋やタンク内に飲料水を保存することとなり、蚊の繁殖地ができ数千人にも及ぶデング熱の流行を引き起こした。ハワイでも現在進行形で100例以上の感染者が出ており、そのほとんどは地元住民である。

日本においては、海外の流行地で感染し帰国した症例が近年では毎年200名前後報告されているが、日本国内で感染した症例は、過去60年以上報告がなかった。しかし2013年には、ドイツ人渡航者が日本で感染したと疑われる症例が報告され、2014年8月以降、東京都立代々木公園に関連する患者の発生が報告され大ニュースとなったのは記憶に新しいところである。

Dengvaxiaは20年間の歳月と15億ユーロ($16.5億ドル)の製造投資をもって開発され、現在は少なくとも更に19ヶ国で承認待ちの状態となっている。メキシコの規制当局は、病気が流行している地域における9〜45歳までの人々に接種の推奨をしている。

Dengvaxiaの売上高はブルームバーグがまとめたアナリストの推計によると、2020年までに$ 14億に達する可能性があるとされている。サノフィはDengvaxiaが、公正で手頃な価格で販売する予定であるとコメントしている。サノフィでデング熱ワクチンのチームのバイスプレジデントであるGuillaume Leroy氏はこのワクチンをいくつかの国では無料で配布するという。

臨床試験によれば9歳以下では有効性が低いため接種は推奨されていない。

デング熱感染は致命的な合併症に発展しうるインフルエンザ様疾患の原因となる。感染の兆候として、歯茎の出血、嘔吐、過呼吸や激しい腹痛がある。最近の感染者数の推定値は、WHOによると、年間約3.9億人であり、死に至るのは1%未満である。タイ人の友人が言うには、近年日本で感染者が現れて大騒ぎになったのに対して、アジア圏では比較的一般的な感染症であるという。

因みにウイルスを無効化する代替的なアプローチを開発している会社もある。 Oxitec社は雄の蚊の子孫が幼虫や蛹の段階で死ぬように、雄の蚊の遺伝子をモディファイする術を開発しているところだという。

詳細に興味がある方向けでデング熱ワクチンの効果について検討された文献を2つ紹介する。

1つ目がLancetに掲載された論文
Clinical efficacy and safety of a novel tetravalent dengue vaccine in healthy children in Asia: a phase 3, randomised, observer-masked, placebo-controlled trial

概要を以下に記す。
•四価のデング熱ワクチンについて
デング血清型1、3、4に対して25%の効力を持つが、アジア太平洋地域の健常な子供における血清型2には奏功しない。このワクチンについて、サノフィ主導でランダム化比較試験が行われた。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムで2〜14歳(平均年齢8.8歳)の健康な子供10275名を無作為に、生ワクチン、弱毒化ワクチン、四価デング熱ワクチン(CYD-TDV)に割付け、プラセボ対照の比較試験を行った。

•全体としてのワクチンの有効性は次の通り。
プロトコルごとの分析で56.5%(95%CI 43.8%-66.4%)
ITT解析では54.8パーセント(95%CI 46.8%-61.7%)
ITT解析におけるデング血清型によるワクチンの有効性
血清型1:54.5パーセント(95%CI 41%-65%)
血清型2:34.7パーセント(95%CI、10%-52%)
血清型3:65.2パーセント(95%CI 43%-79%)
血清型4:72.4パーセント(95%CI 59%-82%)

•プラセボvs四価ワクチンの比較
入院 0.6%vs2%(ワクチンの有効性67.2%、95%CI 50.3%-78.6%)
重篤な有害事象:ワクチン5%vsプラセボ6%

2つ目はNew England Journal of Medicineに掲載された以下の論文。
Efficacy of a Tetravalent Dengue Vaccine in Children in Latin AmericaN Engl J Med 2015; 372:113-123

同様に概要を少し抜粋しておく。

四価のデング熱ワクチンはデング血清型1,3および4に対して25%以上の有効性があり、ラテンアメリカの健康な小児および青年における血清型2に対しても効果を示した。

•コロンビア、ブラジル、メキシコ、プエルトリコ、およびホンジュラスにおける9-16歳の健常人20869名(平均12.4歳)組換えに無作為化した、生ワクチン、弱毒化四価デング熱ワクチン、プラセボにランダムに振り分けた解析。0,6,12ヶ月にワクチン投与をして25ヶ月までフォローアップ。

•主要評価項目は、疾患の重症度または血清型毎の症状発現、デング熱に対するワクチンの有効性。プロトコルごとの解析では3回目の注射後28日目以降を評価した。

•全体としてのワクチンの有効性
60.8%(95%CI 52%-68%)
ITT解析で64.7%(95%CI 58.7%-69.8%)
ITTの分析におけるデング血清型によって•ワクチンの有効性
▪血清型1:54.8%(95%CI 40.2%-65.9%)
▪血清型2:50.2%(95%CI 31.8%-63.6%)
▪血清型3:74.2%(95%CI 63.9%-81.7%)
▪血清型4:80.9%(95%CI 70.9%-87.7%)
血清型1,3、および4のプロトコルごとの解析で一貫性のある結果

dengue_vaccine_nejm2

•プラセボvs四価ワクチンの比較
入院 プラセボ6%vsワクチン11.1%
  (ワクチンの有効性80.3%、95%CI 64.7%-89.5%)
重篤な有害事象 0.6%vs0.6%

dengue_vaccine_nejm

研究によって多少結果が異なるが、有効性はある程度担保されていると捉えて良いと思う。試験された人数の母数からすると、その差がやや少ないような印象を受けるが、入院などのリスクを約半数まで減らすことができるようである。グラフでもそれが把握できる。

ワクチンに関する情報はまだあまりないようだが、デング熱に関する一般的な情報については、以下の厚生労働省のページが客観的に良くまとまっている。しかし、「デング熱に有効なワクチンはありません」と書かれている。今後国内で承認されるようなことがあれば情報が更新されるのだろうか。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever.html

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